九十二話 深夜の紅い月
タイトル考えるのに時間とられました。実はかぶったのに気がついて大慌てで修正していたりw
「で、いそいそと逃げてきた訳か……意気地なし」
「うぐ……」
辛辣な一言に、胸を押さえる参真。言い返したいのは山々だが、彼女の言うことも最もである。
現在、参真は紅魔館の大広間にいる。そこにレミリア・スカーレットがちょうどうろついていたので、呼びとめたのだ。気を悪くした様子ではなかったのだが、こんな夜遅くにどういうことだと聞かれたのだ。
初めは誤魔化そうとしたのだが、結局は彼女の圧力に屈する形で、ほぼすべての内容を口にするハメになってしまった。
で、その結果が先ほどの言葉というわけだ。
「向こうはお前のことを好きなんでしょう?」
「……たぶん」
確信を持てないことをはっきり告げると、レミリアはため息交じりに言う。
「なんでそこで自信を無くすのよ」
「恋とかよくわからないんですよ……何せはっきり好意を告げられたのは初めてで」
「まさかだとは思うけどお前、好意を抱いたことがないとか、恋に興味がないとか言いだすんじゃないでしょうね……?」
「何でわかったんですか!?」
真剣な表情の参真とは対照的に、呆れた表情を作るレミリア
「私でさえ、恋やら愛やらについて考えたことがあるのに……もうなんなのお前」
「……絵を描くことのみに特化しすぎた人間です」
こうしている今も、レミリアの絵を描こうと指がうずうずしている。ちゃんと道具も持ってきている。表情が決まり次第、描き始めるつもりだ。
そんな様子の参真を見て、「本当に仕方のない奴だ」と呟く。
「いい? 人間。私はお前たちの仲などどうでもいいわ。が、それで役目に支障がでるようなら、きっちり解決してからにしてもらえるかしら?」
「……いえ、絵に問題はないと思いますよ」
昔からこれだけをして生きてきたのだ、絵で手を抜くなど考えられないことである。だが頭の中で構図を考えるも、「これじゃない」感じがしてしまっていた。
「でも……いずれ、答えを出さないといけませんね」
「できれば急いだ方がいいわ。五百年と生きた私が言うのだから間違いないわよ」
「……本当にこちらの住人は、見た目と年齢が一致しないや」
愚痴りながらも描き始める。なんだかんだで、初めて遭遇した時の彼女を描くことにした。あれが一番、威厳や傲慢さが出ていたような気がする。
「……馬鹿にしてるの?」
「気に障りましたか?」
「背が伸びないのが悩みでね。もう四百年以上この伸長のままよ」
なるほど。肉体的にも時間が止まってしまっているのだろう。ちょうど頭を撫でやすい位置にあるが、撫でたら本当に怒られそうなのでやめておいた。
「さとりさんたちもそうなのかな……」
地底にいた姉妹で想像してみる。こいしは無意識だから気にしてなさそうだが、さとりは案外そうかもしれない。と思った。
「……妖怪が恐ろしくないのか。お前は」
「はは、恐かったら小傘ちゃんをそばに置いてませんよ」
「妖怪をつれて歩くなんて、幻想郷でも変わり者か……命知らずかぐらいよ」
「僕は前者ですね」
「よくわかってるじゃない」
即答であった。自覚のあることなので、特に思うことはない。
そうこうしている内に、一枚目を描き終えた。一番初めに出会った時の絵である。早速見せると……
「……よ、よく描けてるじゃない?」
動揺しながらも、お褒めの言葉を頂いた。調子に乗った参真はふざけて
「恐悦至極でございます。お嬢様」
「ぷっ……! お前はそういうキャラじゃないでしょう……ククク……」
わざとそれっぽい言葉を使ったら、よほど面白かったらしく、笑われてしまった。しかも腹を抱えてである。それほどおかしいことをしたつもりはないのだが。
「ふふふ、この調子でお願いね」
「かしこまりました」
「だから……もう、無理に使わなくていいわよ」
またクスクスと笑いながら、レミリアはその場を去っていく。
……その笑顔が『二枚目』の絵になったことをレミリアが知るのは、翌日の夜になってからであった。ちなみに、その後参真が部屋に戻り、またどきまきしながらベットに潜り込み、一時間ほど眠れなかったのは、ここだけの話である。
結局先送りにしても、それじゃ解決しないよって話。
はたして、主人公はちゃんと答えを出せるのだろうか? 自分でもわかってないところがありますので、ちょっと不安だったりします。半分勢いで書いている節があるからなぁ……