八十八話 湖の先の館へ
こんなに投稿続いたの久しぶりじゃないだろうか……調子はそこまでよくないんですが、集中自体が出来てるみたいですね。
昔、チルノたちと遊んだ湖を抜けたその先に、真紅の館はそびえ立っていた。
「おお……大きい……」
向こうの世界だとしても、この屋敷は豪邸の部類に入るであろう。各所には細かい装飾がなされ、周辺には侵入者を阻むように塀がそびえ立つ。唯一の出入り口である門には、中国の民族衣装を纏った『人外』が門を守っていた。
……ただし、眠って。
「「「……」」」
三人とも、言葉が出ない。確かに門番の仕事はヒマな時もあるだろう。しかし眠ってしまっていては、その意味がない。
「美鈴……!」
咲夜が怒りを込めたチョップを頭部に決めると、「いたぁ!?」と可愛らしい声を上げて飛び起きた。
「ハッ!? さささ咲夜さん!? と……そちらの方は?」
「お嬢様が連れてこいと昔言ってた人よ。……お客様の前だからナイフはやめておいてあげる」
「ご、ごめんなさい!!」
素早く身をかがめ、咲夜に土下座する。どうやら立場としては、咲夜の方が上らしい。
「今日は見逃してあげるけど、これ以上やったら給料カットね」
「ヒィ!!」
切実な悲鳴を洩らす人外さん。……こういうのもなんだが、ものすごく動作や雰囲気が人間に近い。能力がなかったら、人間と勘違いしていたかもしれないと、参真は思った。
落ち込んでいた門番に、小傘が元気よく声をかけた。
「お仕事がんばって! えっと……」
「あぁ、ありがとうございます! 私は紅 美鈴。紅魔館の門番を務めていますよ!」
「さっきまで寝てたけどね」
「あはは……これからお世話になります。でいいんでしょうか?」
「それはお嬢様次第よ」
咲夜はあくまでクールに返した。それとは対照的に、門番の人は明るくこちらに手を振ってくれている。根はいい人そうだ。
門をくぐった先で、広大な庭が彼らを出迎える。少しばかり屋敷の扉までは距離があった。咲夜が先に扉を開いて、
「さ、どうぞ参真様」
恭しく頭を垂れて、参真をもてなす。それにならって参真たちも、
「それじゃあ……お邪魔します」
「お邪魔しまーす!」
紅魔館内部へと足を踏み入れた。
内装も豪奢の一言で、まさに『お屋敷』だ。
「ほへ~すっごいね~」
行くことには反対気味だった小傘も、いざ来てみるとそれなりに楽しんでくれているようで、参真としては一安心である。相変わらず咲夜は参真たちを先導してくれているが、この後の予定はどうなっているのだろう?
「あの、咲夜さん」
「なんでしょうか?」
「この後、直接……あなたの主さんに会いに行くんですか?」
「いえ、今はお休みになられているので、夜に改めてです。とりあえず今は、客室に向かっております。荷物などは一旦そこに置いてもらう形にしようかと。一息ついてから、この紅魔館を案内いたしますわ」
「助かります」
客人を相手にするのは、初めてではないのだろう。説明も手慣れた様子だ。
「わぁ! すっごいすっごい!!」
「……小傘ちゃん。少し落ち着いて」
落ち着いている参真、咲夜に対して、小傘は豪邸に入るのが初めての子供のようにはしゃいでいる。本当は彼女も楽しみだったのかもしれない。
「だって、こんなすごいところだよ? ご主人さまだって、本当はすぐにでも絵にしたいくせに~」
「何 故 バ レ た し」
「もう結構一緒にいるから、それぐらいわかるよ」
などと話している間に、客室に着いた。中はホテルのようにぴかぴかで、ここの掃除をした人間がいかに几帳面かがよくわかる。
「それでは、少し時間が経ったら案内させていただきますわ」
「どうもすいません。案内もよろしくお願いしますね」
メイド長は門前のように頭を下げると、次の瞬間には『消えて』いた。
まるで手品か何か見せられたような気分だ。彼女の能力か何かだろうと察しをつけ、参真はソファーに腰を下ろす。
「わぁ! ベットだベットだ!!」
変わらない様子の小傘に苦笑しつつ、参真は早速、未使用の鉛筆を取り出す。今の内に香霖堂で買った物の整理をしておこう。リュックを広げ、参真はごそごそと、整理を始める。
「私も手伝うよご主人さま!」
「ああ、ありがとう。助かるよ」
そこに小傘も加わり、二人は時に談笑して手をとめたりしながら、咲夜さんが再びやってくるまで、荷物の整理をしていた。
小傘は予定より子供っぽくなっちゃいました。
参真君ははしゃぐような性格じゃないし、それ考えると、彼女が盛り上げ役に適任だなぁと。そういう意味じゃ、本当に小傘がいてくれてよかった。