スクープは恋の予感!? 〜珍聞部、大暴走〜
初投稿です。
文章につたない部分があると思いますがご承知おきください。
ハチャメチャな新聞部ならぬ珍聞部を題材にした青春コメディを書かせていただきました。
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珍聞部、結成!
春風が桜の花びらを舞い散らせる4月。青春高校の校門をくぐった1年生の佐藤みなみは、期待と不安が入り混じった表情で校内を歩いていた。
「よーし!高校生活、楽しむぞー!」
みなみは心の中で気合を入れると、教室に向かって歩き出した。そんな彼女の前に、突如として現れたのは…
「おーいっ!君っ!そこの茶髪の可愛い子っ!」
振り返ると、派手な金髪に真っ赤なリップ。制服をアレンジしたミニスカート姿の先輩が、両手を広げて駆け寄ってきた。
「え?私ですか?」みなみが戸惑いながら聞くと、
「そうよ!あなた、新聞部に入らない?」
唐突な勧誘に、みなみは困惑した表情を浮かべる。
「あ、ごめんなさい。自己紹介が遅れちゃった!私、3年の山田ユリカ。新聞部の部長よ」
ユリカは、にこやかに自己紹介すると、みなみの手を取って熱心に語り始めた。
「うちの新聞部ね、今メンバーがほとんどいないの。このままじゃ廃部になっちゃうから、新入部員を探してたのよ。そこであなたを見つけて、『この子だっ!』って思ったの!」
みなみは困惑しながらも、ユリカの情熱的な雰囲気に圧倒されていた。
「え、えっと…でも、私、新聞作りとか全然経験ないし…」
「大丈夫よ!経験なんて関係ない!」ユリカは力強く言い切った。「大切なのは『やる気』と『センス』。あなたなら絶対に楽しくやれるわ!」
そう言うと、ユリカはみなみの腕を引っ張り、廊下を走り出した。
「ちょ、ちょっと!どこに行くんですか!?」みなみが慌てて尋ねると、
「新聞部の部室よ!他のメンバーも呼んであるの。さあ、これから珍聞部…じゃなかった、新聞部の結成式よ!」
みなみが「え?」と声を上げる間もなく、二人は部室へと到着した。
ガラッと音を立てて開いたドアの向こうには、すでに二人の女子生徒が待っていた。
「やっほー!ユリカ先輩!」
「おー!新入部員ゲットですか?」
元気な声で二人が近づいてくる。
「はい、みんな!紹介するわ。こちらが佐藤みなみちゃん。これから私たちと一緒に新聞部で活動してくれるのよ!」
「えっ!?」思わずみなみが声を上げる。「まだ入部するって決めてないのに…」
しかし、ユリカは聞こえない振りをして、さらに紹介を続けた。
「みなみちゃん、こっちは2年生の中島エリカ。写真担当よ」
「よろしくね♪」派手なピンク色の髪をなびかせながら、エリカが手を振る。
「そして、同じく2年生の高橋アヤカ。イラスト担当ね」
「はじめまして〜」黒縁メガネをかけた小柄な女の子が、恥ずかしそうに挨拶をした。
みなみが困惑した表情でいると、突然、部室のドアが再び開いた。
「すみません、遅くなりました」
落ち着いた声で入ってきたのは、スラリとした体型の男子生徒。整った黒髪に真面目そうな表情が印象的だ。
「あら、岡部くん。ようやく来たわね」ユリカが嬉しそうに言う。
「岡部くん、こっちは新入部員の佐藤みなみちゃん。みなみちゃん、こちらが2年生の岡部タクミくん。うちの部のただ一人の男子よ」
タクミは丁寧に頭を下げると、「よろしくお願いします」と挨拶をした。
「さーて!これでメンバーが揃ったところで…」
ユリカが大きな声で宣言する。
「青春高校珍聞部、正式に結成!」
「えーっと…」みなみが小さな声で言う。「私、まだ入部するって…」
しかし、ユリカたちの歓声に、みなみの声はかき消されてしまった。
こうして、みなみの予想外の高校生活が幕を開けた。果たして、この珍聞部…いや、新聞部はどんな活動を繰り広げるのか。そして、みなみは本当に新聞部員として活動するのか…?
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初めての取材、大混乱!
「よーし、みんな!」ユリカが勢いよく黒板に「特ダネ」と書き始めた。「私たちの記念すべき第一号の特集は…」
一同が息を呑んで見守る中、ユリカは大きく「恋愛」という文字を書き加えた。
「青春高校、恋愛事情大調査!」
「えー!」みなみが思わず声を上げる。「い、いきなり恋愛ですか?」
「そうよ!」ユリカが目を輝かせながら言う。「高校生にとって一番興味があるのは恋愛でしょ?これで絶対に部数が伸びるわ!」
エリカが両手を挙げて賛同する。「賛成〜!私、写真で恋するカップルをバッチリ撮っちゃいますよ〜♪」
「え、えっと…」アヤカが恥ずかしそうに言う。「で、でも、盗撮とかダメですよね…?」
「もちろん!」ユリカが即答する。「盗撮なんてしないわよ。ちゃんと許可を取ってから撮影するの」
「あの…」タクミが冷静に意見を述べる。「でも、恋愛中のカップルに許可を取るのって、難しくないですか?」
「大丈夫よ!」ユリカが自信たっぷりに言う。「私に任せて!」
みなみは不安そうな表情を浮かべながら、「私、こういうの初めてで…」と小声で呟いた。
「心配しないで、みなみちゃん!」ユリカがみなみの肩を叩く。「あなたはインタビュー係ね。きっと上手くできるわ!」
「えっ!?」みなみが驚いた表情を見せる。「い、いきなりインタビューなんて…」
「よーし!」ユリカが声高らかに宣言する。「作戦開始よ!」
そうして、珍聞部の面々は校内に繰り出した。
エリカはカメラを手に、カップルを探して歩き回る。
「あっ!カップル発見!」エリカが興奮した様子で叫ぶ。「ちょっと、二人とも!写真撮らせて!」
驚いたカップルが慌てて逃げ出す。
「あー!待ってー!」エリカは追いかけながら、シャッターを連射し始めた。
一方、アヤカは遠くから様子を眺めながら、スケッチブックにカップルの絵を描いていた。
「うーん、これじゃあまりにも遠すぎるかな…」アヤカが呟く。「もう少し近づいてみようかな…」
そう言って数歩前に出たアヤカだったが、突然足を滑らせて転んでしまった。
「きゃっ!」
アヤカの悲鳴に、カップルが振り返る。
「大丈夫ですか!?」男子生徒が駆け寄ってくる。
「あ、ありがとうございます…」アヤカが顔を真っ赤にしながら立ち上がる。「あの…実は…」
アヤカは勇気を出して、カップルに取材の趣旨を説明した。意外にも、二人は協力的だった。
「へー、新聞部の取材ですか?面白そうですね」女子生徒が笑顔で言う。
「じゃあ、僕たちの恋愛エピソードでよければ、話しましょうか」男子生徒も協力的だ。
アヤカは嬉しそうに二人の話を聞き始めた。
一方、タクミは冷静に校内を歩き回り、アンケート用紙を配っていた。
「すみません、恋愛に関するアンケートにご協力いただけませんか?」
多くの生徒が快く協力してくれたが、中にはちょっと変わった反応をする生徒もいた。
「恋愛!?」ある男子生徒が興奮気味に言う。「俺、超モテるんすよ!どんな質問でも答えられますよ!」
タクミは冷や汗を流しながら、「はい…ありがとうございます…」と答えた。
そして、みなみは…
「あの…す、すみません!」みなみが震える声で話しかける。「恋愛について、ちょっとお聞きしたいんですが…」
相手の男子生徒は真っ赤な顔で固まってしまった。
「え!?ぼ、僕に恋愛の話を!?」
「いえ、そうじゃなくて…」みなみが慌てて説明しようとするが、
「ごめん!急いでるんだ!」
男子生徒は素早く立ち去ってしまった。
「はぁ…」みなみがため息をつく。「どうしよう…全然上手くいかない…」
そんなみなみの前に、突然ユリカが現れた。
「どうよ、みなみちゃん!順調?」
「え、えっと…」みなみが困った表情を見せる。「実は…全然…」
ユリカは驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。
「大丈夫よ!私が特別指導してあげる!」
そう言うと、ユリカはみなみの手を引いて歩き出した。
「ほら、あそこにいるカップル!あの二人に話を聞いてみましょう!」
みなみが躊躇していると、ユリカは強引に二人の前まで連れて行った。
「こんにちは〜!」ユリカが明るく声をかける。「ちょっとお時間いいですか?」
カップルは少し驚いた様子だったが、ユリカの明るさに引き込まれて話を聞いてくれることになった。
「さあ、みなみちゃん!インタビューして!」
ユリカに促され、みなみは緊張しながらも質問を始めた。
「あの…お二人はどうやって付き合うようになったんですか?」
カップルは照れくさそうに笑いながら、出会いのエピソードを話し始めた。みなみは次第に緊張がほぐれ、自然に会話を楽しむようになっていった。
「ねえ、これからデートなの?」ユリカが突然質問を投げかける。
「え?ああ、はい…」男子生徒が少し困惑しながら答える。
「じゃあ、私たちも一緒に行っていい?」
「えっ!?」みなみとカップルが同時に驚きの声を上げる。
「取材のためよ!リアルな恋愛を体験したいの!」ユリカが興奮気味に説明する。
カップルは困惑した表情を浮かべながらも、ユリカの熱意に負けて了承してしまった。
「よーし!」ユリカが声高らかに叫ぶ。「エリカ!アヤカ!タクミ!みんな集合よ!」
校内のあちこちから珍聞部のメンバーが駆けつけてきた。
「これから、このカップルと一緒にデート取材よ!」
「えー!?」みんなが驚きの声を上げる。
こうして、珍聞部の面々は、困惑するカップルを囲んでデートについていくことになった。
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デート大作戦!珍聞部、暴走の巻
カップルを真ん中に、珍聞部のメンバーが取り囲むように歩く姿は、誰が見ても異様だった。
「ねえねえ、これからどこに行くの?」ユリカが興奮気味に尋ねる。
「え、えっと…」男子生徒が困惑しながら答える。「映画を見に行こうと思ってて…」
「映画!?」エリカが目を輝かせる。「素敵〜!どんな映画なの?」
「ホラー映画です…」女子生徒が小声で答えた。
「えっ!?」みなみが驚いた声を上げる。「ホ、ホラーですか…」
「大丈夫よ、みなみちゃん!」ユリカが明るく言う。「怖かったら私の腕にしがみついていいわよ!」
「いや、そうじゃなくて…」みなみが困った表情を浮かべる。
一行は映画館に到着。チケットを買う列に並ぶと、ユリカが突然大声で叫んだ。
「よーし!みんな、カップルシートよ!」
「えっ!?」カップルが驚いた声を上げる。
「取材のためよ!」ユリカが当然のように言う。「私たちも隣のカップルシートで観察するわ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」タクミが冷静に制止しようとする。「それじゃあ、カップルの二人が落ち着いて映画を楽しめませんよ」
「そうだね…」アヤカも小声で同意する。
しかし、ユリカは聞く耳を持たなかった。
「大丈夫よ!私たちはカップルの邪魔をしないわ。ただ、そっと見守るだけ!」
結局、ユリカの強引さに負け、珍聞部のメンバーもカップルシートで映画を観ることになった。
暗い映画館の中、ホラー映画が始まる。
「きゃっ!」突然の驚かしシーンに、みなみが思わず声を上げる。
「大丈夫?」隣に座っていたタクミが優しく声をかける。
「は、はい…」みなみが顔を赤らめながら答える。
一方、ユリカとエリカは…
「おーっと!今、手を繋いだわよ!」ユリカが小声で叫ぶ。
「よーし!バッチリ撮ったわ!」エリカがカメラのシャッター音を鳴らす。
「ちょっと!」後ろの客が怒った声を上げる。「静かにしてください!」
アヤカは、暗闇の中でカップルの様子をスケッチしようとしていたが、何も見えずに困っていた。
映画が終わり、ほっとしたように外に出るカップル。しかし、珍聞部の面々は全く気を抜かない。
「次はどこに行くの?」ユリカが食いつくように聞く。
「あの…」カップルが困惑しながら答える。「カフェで少し休憩しようと…」
「カフェね!」ユリカが目を輝かせる。「よし、行きましょう!」
カフェに入ると、カップルは二人掛けの席に座った。そして、その周りを取り囲むように珍聞部のメンバーが陣取る。
「あの…」カップルが居心地悪そうに言う。「少し距離を置いてもらえませんか…?」
「えっ?」ユリカが驚いた表情を見せる。「でも、これじゃあ会話が聞こえないわよ?」
「ユリカ先輩」タクミが諭すように言う。「さすがにここまでは度が過ぎますよ」
「そうだよ」エリカも珍しく冷静に言う。「もう少し距離を置こう」
しぶしぶ同意したユリカたちは、少し離れたテーブルに移動した。
「はぁ…」みなみがため息をつく。「これって本当に取材なのかな…」
「私も疑問に思います」タクミが同意する。「もう少し穏当な方法があるはずです」
そんな会話をしていると、突然、カフェの入り口が開き、見知った顔が入ってきた。
「あれ?」アヤカが小声で言う。「あの人、うちの学校の先生じゃない?」
全員が振り返ると、確かにそこには青春高校の国語教師・佐々木先生の姿があった。しかし、驚いたことに佐々木先生の隣には見知らぬ女性の姿が…
「まさか…」ユリカが目を輝かせる。「これは大スクープよ!」
「ちょっと、ユリカ先輩!」タクミが慌てて制止する。「先生のプライバシーですよ!」
しかし、ユリカは聞く耳を持たなかった。
「エリカ!カメラ用意して!」
「了解!」エリカも興奮気味に返事をする。
「ちょ、ちょっと待ってください!」みなみが必死に止めようとする。「こんなことしたら大問題になりますよ!」
しかし、ユリカとエリカは既に動き出していた。二人は佐々木先生のテーブルに近づき、突然フラッシュを焚いて写真を撮り始めた。
「わっ!」佐々木先生が驚いた声を上げる。「君たち、何をしているんだ!」
「取材です!」ユリカが堂々と答える。「先生の恋愛スクープ、いただきました!」
「なっ…」佐々木先生が真っ青になる。「やめなさい!これは誤解だ!」
混乱する店内。他の客たちも騒ぎ始め、店員が慌てて駆けつけてくる。
「お客様、こちらでそういった行為は…」
その時、突然、アヤカが大きな声を上げた。
「あっ!」
全員がアヤカの方を振り向く。
「あの女性…私の姉さんだ!」
「えっ!?」全員が驚きの声を上げる。
「そうか!」佐々木先生が安堵の表情を浮かべる。「君は高橋さんの妹か。実は今日、君のお姉さんと家庭訪問の日程を相談していたんだ」
一瞬にして、場の空気が変わる。
「えっと…」ユリカが恥ずかしそうに言う。「どうやら、私たち、大きな勘違いをしてしまったみたいね…」
カフェの騒動は、アヤカの機転のおかげでなんとか収まった。しかし、珍聞部の面々は店を出されてしまい、路上に立つはめになった。
「はぁ…」みなみが深いため息をつく。「もう、取材はお しまいにしませんか?」
「そうだね…」エリカも反省気味に言う。「ちょっとやりすぎたかも…」
「でも!」ユリカが突然元気を取り戻す。「これで終わりじゃないわ!私たちの珍聞…じゃなかった、新聞はまだまだこれからよ!」
「えぇ〜」みんなが疲れた声を上げる。
そんな珍聞部の面々を尻目に、最初のカップルはいつの間にか姿を消していた。
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締め切り直前!珍聞部、大ピンチ!
取材から一週間後、珍聞部の部室は異様な緊張感に包まれていた。
「よし、みんな!」ユリカが声高らかに宣言する。「いよいよ明日が発行日よ!今日中に全部仕上げなきゃいけないわ!」
「えぇ〜」みなみが不安そうな声を上げる。「間に合うんでしょうか…」
「大丈夫よ!」ユリカが自信たっぷりに言う。「みんなで力を合わせれば、きっとできるわ!」
しかし、現実は甘くなかった。
「あの〜」アヤカが小さな声で言う。「私のイラスト、まだ半分も描けてないんですけど…」
「えっ!?」ユリカが驚いた声を上げる。「どうして!?」
「だって…」アヤカが恥ずかしそうに言う。「カップルの絵を描くの、恥ずかしくて…」
一方、エリカは…
「あ〜あ」エリカがため息をつく。「せっかく撮った写真の半分以上がブレてるし、残りは暗すぎて使えないよ〜」
「なんですって!?」ユリカが絶叫する。「じゃあ、使える写真はいくつあるの?」
「えっと…」エリカが指を折って数える。「2枚…かな?」
「2枚だけ!?」ユリカが頭を抱える。「それじゃあ足りないわよ!」
タクミは黙々とパソコンに向かっていたが、突然立ち上がった。
「ユリカ先輩」タクミが冷静に言う。「アンケート結果の集計が終わりました」
「おお!さすがタクミ君!」ユリカが目を輝かせる。「で、どんな結果だったの?」
「はい」タクミが眼鏡を直しながら答える。「『恋愛経験がある』と答えた人は全体の10%。『恋愛に興味がある』と答えた人は30%。残りの60%は『恋愛よりも勉強が大事』と回答しました」
「えぇ〜!?」ユリカが驚きの声を上げる。「そんなはずないわ!絶対におかしいわよ!」
「でも、これが事実です」タクミが冷静に答える。「数字は嘘をつきません」
「う〜ん」ユリカが唸る。「これじゃあ、恋愛特集にならないじゃない…」
そんな中、みなみが小さな声で言った。
「あの…私のインタビュー記事なんですけど…」
「どうしたの、みなみちゃん?」ユリカが尋ねる。
「実は…」みなみが恥ずかしそうに言う。「カップルへのインタビューがうまくできなくて、代わりに友達同士の関係について聞いてしまったんです…」
「なんですって!?」ユリカが絶望的な表情を浮かべる。「これじゃあ、恋愛特集どころか、友情特集になっちゃうじゃない!」
部室に重苦しい空気が流れる。
「どうしよう…」ユリカがぼそっと呟く。「このままじゃ、新聞が作れない…」
その時、突然、タクミが立ち上がった。
「ユリカ先輩」タクミが真剣な表情で言う。「僕に考えがあります」
「えっ?」全員がタクミに注目する。
「確かに、恋愛特集としては失敗かもしれません」タクミが冷静に説明を始める。「でも、これを『青春高校の本当の姿』として特集を組めば、むしろ面白い記事になるんじゃないでしょうか?」
「どういうこと?」ユリカが首をかしげる。
「例えば」タクミが続ける。「『意外と恋愛よりも勉強!?青春高校の実態』とか、『友情こそ青春の真髄!仲間との絆を探る』とか…そういった切り口で記事を構成すれば、むしろリアルな高校生活が見えてくるんじゃないでしょうか」
「なるほど!」ユリカが目を輝かせる。「そうよ!これこそが私たちの学校の真の姿なのよ!」
「そうだね!」エリカも賛同する。「ブレた写真も、リアルな高校生活の象徴として使えるかも!」
「私も」アヤカが小さな声で言う。「友達同士の絵なら、もっと描けそう…」
「私のインタビューも使えるかも!」みなみも元気を取り戻す。
「よーし!」ユリカが声高らかに宣言する。「みんな、やる気出た?これから一晩中かけて、最高の新聞を作るわよ!」
「おー!」全員が元気よく返事をする。
こうして、珍聞部の面々は、予想外の方向に進んだ特集記事を完成させるべく、一晩中奮闘することになった。
部室の時計が午前2時を指す頃、ようやく全ての記事が出来上がった。
「はぁ…」ユリカが大きなため息をつく。「なんとか…できたわね」
「本当に…」みなみが疲れた声で言う。「もう、目が霞んで…」
「でも」タクミが静かに言う。「良い新聞になったと思います」
「そうね!」エリカが元気よく言う。「私たちなりの青春が詰まった新聞よ!」
アヤカは既に机に突っ伏して寝ていた。
「よし!」ユリカが立ち上がる。「あとは印刷するだけね!」
しかし、その時…
「あれ?」タクミが不思議そうに言う。「プリンターが動かない…」
「えっ!?」全員が驚いた声を上げる。
「どうしよう!」みなみが慌てる。「このままじゃ、発行できない!」
「落ち着いて」タクミが冷静に言う。「インクがなくなっただけかもしれません」
タクミがプリンターを確認すると、案の定、インクが切れていた。
「やっぱり…」タクミが言う。「インクを補充しないと…」
「こんな真夜中に!?」みなみが絶望的な声を上げる。「どこにインクが売ってるのよ…」
「大丈夫!」ユリカが突然元気を取り戻す。「私が何とかするわ!」
そう言うと、ユリカは部室を飛び出していった。
「ユリカ先輩!」みなみが慌てて追いかける。
残されたタクミとエリカは、呆然と見送るしかなかった。
30分後、ユリカとみなみが息を切らして戻ってきた。
「ただいま〜!」ユリカが大声で言う。「インク、ゲットよ!」
「えっ!?」タクミとエリカが驚く。「どうやって?」
「実は…」みなみが説明を始める。「ユリカ先輩が、先生の家に電話をかけて…」
「なんですって!?」タクミが驚いた声を上げる。「先生を起こしたんですか!?」
「そうよ!」ユリカが得意げに言う。「佐々木先生、最高!すぐに学校に来てくれたわ!」
「まさか…」エリカが目を丸くする。「先生を巻き込むなんて…」
「でも」みなみが小声で言う。「先生、意外と協力的だったんです。『青春真っ只中の君たちの熱意に負けたよ』って…」
「そうそう!」ユリカが続ける。「それで、職員室にあった予備のインクを分けてくれたの!」
タクミとエリカは呆れながらも、感心した様子だった。
「さあ!」ユリカが声高らかに言う。「これで印刷できるわ!急いで始めましょう!」
こうして、珍聞部の面々は夜明けまで印刷作業に追われることになった。
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珍聞部、デビュー!
朝日が昇る頃、ようやく全ての作業が終わった。
「やった〜!」ユリカが両手を挙げて喜ぶ。「完成よ!」
「本当に…」みなみが疲れた声で言う。「信じられない…」
タクミは黙々と新聞を束ねていた。エリカとアヤカは既に床で眠っていた。
「さあ!」ユリカが元気よく言う。「これから配布よ!」
「えっ!?」みなみが驚く。「もう!?」
「当たり前じゃない」ユリカが言う。「朝のホームルームで配るのよ!」
こうして、珍聞部の面々は眠い目をこすりながら、各教室を回って新聞を配布し始めた。
「はい、どうぞ!」ユリカが明るく声をかける。「珍聞部特製、青春新聞よ!」
「珍聞部じゃなくて、新聞部です…」タクミが小声で訂正する。
生徒たちは最初、怪訝な顔をしていたが、新聞を手に取ると次第に興味深そうに読み始めた。
「へえ〜」ある生徒が言う。「意外と勉強熱心な奴が多いんだな」
「ほんと」別の生徒が言う。「恋愛よりも友情が大事って、意外とみんな思ってるんだ」
「あ!」女子生徒が声を上げる。「この写真、ブレてるけど、なんか雰囲気あるよね」
「このイラストも可愛い!」別の女子生徒が言う。「友達同士の絵、すごく自然!」
珍聞部の面々は、生徒たちの反応を見て少しずつ自信を取り戻していった。
そして、昼休み。
「ねえねえ」ユリカが興奮気味に言う。「みんな、新聞のこと、どう思った?」
「結構面白かったよ」ある生徒が答える。「普段見えない学校の一面が見れた気がする」
「私も!」別の生徒が言う。「友情特集、すごく共感できた!」
「写真もイラストも良かったわ」女子生徒が言う。「素人っぽさが逆にリアルで良かった」
珍聞部のメンバーは、嬉しさで顔を紅潮させていた。
「ねえ」みなみが小声でユリカに言う。「私たち、意外とやれるかも…」
「そうよ!」ユリカが目を輝かせる。「これが私たちの青春なのよ!」
その時、突然、校内放送が鳴り響いた。
「珍聞部の皆さん、至急、校長室まで来てください」
「えっ!?」全員が驚いた顔を見合わせる。
「まさか…」タクミが心配そうに言う。「怒られるんでしょうか…」
「大丈夫よ!」ユリカが自信たっぷりに言う。「きっと褒められるわ!」
しかし、校長室に入ると、校長先生の表情は厳しかった。
「君たち」校長先生が言う。「勝手に新聞を発行したそうだね」
「は、はい…」みなみが小さな声で答える。
「しかも」校長先生が続ける。「夜中に先生を呼び出したり、学校の備品を無断で使ったり…」
珍聞部のメンバーは、頭を垂れて立っていた。
「でもね」突然、校長先生の口調が柔らかくなる。「君たちの新聞、とても良かったよ」
「えっ!?」全員が驚いて顔を上げる。
「確かに、手続きは間違っていた」校長先生が言う。「でも、君たちの熱意と、できあがった新聞の内容は素晴らしい。これこそ、高校生らしい青春じゃないかな」
珍聞部のメンバーは、喜びと安堵の表情を浮かべた。
「ただし」校長先生が付け加える。「今後は proper な手続きを踏んでくれたまえ。そうすれば、公認の新聞部として活動を認めよう」
「はい!」全員が元気よく返事をする。
校長室を出た珍聞部のメンバーは、喜びを爆発させた。
「やったー!」ユリカが飛び跳ねる。「私たち、公認になるのよ!」
「信じられない…」みなみが涙ぐむ。「本当に、夢みたい…」
「よかった」タクミが安堵の表情を浮かべる。「これで正々堂々と活動できます」
「次は何を特集しようかな〜」エリカが楽しそうに言う。
「私も、もっと上手に描けるように頑張るね」アヤカが小さな声で言う。
そして、部室に戻った珍聞部の面々。
「さあ、みんな!」ユリカが声高らかに宣言する。「これからが私たちの本当の船出よ!珍聞部…じゃなかった、新聞部、前進!」
「おー!」全員で声を合わせる。
こうして、波乱万丈の船出を果たした新聞部。彼らの青春物語は、まだまだ続いていくのだった。