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「ふ、まぁお前にしては上出来だろ」

 ミルリーフ初のモンスター討伐を静かにニヤリと笑うアルカンタラだった。


「……でも、そんな喜んでるヒマもなさそうだぞ?」

「……え?」

 アルカンタラの言葉の意味がよくわからず、ミルリーフはキョトンとした顔をしている。


『ドドドド……』


 荒野の彼方からとどろく足音にミルリーフも気づいた。

「……嘘でしょ!?」

 地平線の向こうから数体の紫ライオンが姿を現す。


「どうしよう……ちょっとアルカンタラ、いつまで座ってんのよ。アンタも起きて戦いなさいよ。ずっと休んでるんだから体力も回復したでしょ」

「3体くらいか? まあ少し休めたしアレくらいならサクッと追っ払うか」

 さすがの今のミルリーフに3頭のモンスターは荷が重いと見て、アルカンタラが腰を上げた。その時


「だ、大丈夫ですかー!?」

 アルカンタラたちの背後から男の声が響く。


「ん? 誰だ……?」

 息を切らせながら、2人の方へ駆けてくる青年の姿。


「はぁはぁ……お二人とも大丈夫ですか? モンスターの足音がして」

「あなた、もしかして冒険者?」

 大きな荷物、腰につけた剣、まさに冒険者という姿の青年にミルリーフが尋ねる。


「はい! 僕は冒険者のバーランダーといいます。暗黒水晶を壊すために僕らパーティーで最北端の大陸を目指しているところです」

 バーランダーと名乗る冒険者の青年は爽やかな笑顔を二人に返した。アルカンタラたちと同じくらいの青年だ。


「ほう、お前も……ん? パーティーって……お前1人なのに?」

「え? 僕らは3人組のパーティー、『バーランダーズ』と言いまして……ってアレ!? 仲間がいない!?」

 焦りながら辺りをキョロキョロとするバーランダー。彼の遥か後方をゼイゼイ息を切らせながら2人の冒険者が走り寄ってくる。


「あ、あんな後ろに……ったく、アイツら! バーランダーズのメンバーとして情けないぞ!」

 現代の冒険者を始めてみるアルカンタラは頭をかかるバーランダーを奇妙なものを見るように眺める。

「……なんかコイツ、弱そうだな……」

「ち、ちょっと、アルカンタラ! やめなさいよ」

 呆れたようにボソッとつぶやいたアルカンタラの言葉にミルリーフは怒る。幸い、バーランダーには聞こえていなかったようだ。


「そ、そんなことより! モンスターがすぐそこまで迫っています! 僕の後ろに隠れてください!」

 アルカンタラたちを守ろうとバーランダーは剣を抜く。新品のようにピカピカの剣だ。


「え? お前が守ってくれんの?……?」

 突然のことにキョトンとするアルカンタラ。


「もちろんです! 世界を平和にするために……勇者になるために僕は冒険者になったんです! 冒険者たるもの、ここであなたたちを救わなければ!」

 恥ずかしげもなくクサいセリフを放つバーランダー。


「お、おう……なんか熱いなコイツ……」

「でも…… 大丈夫なのかしら……モンスター3体を1人で……」

 バーランダーの背中を心配そうに眺める2人。


「……いや案外、こいつ強者かもしれないぞ? 昔も一見、弱そうな戦士が実は凄腕だったなんて言う事はいくらでもあるぜ?」

「そ、そういうものなのね……奥が深いわね……」

 ゴクリと唾を飲み込むミルリーフ。

「まあ現代の冒険者ってやつのレベルを見ておきたい。ここはあのバーランダーとか言う奴に任せてみるか」



 モンスターはもう目の前まで来ている。ノロノロ走ってくるバーランダーズの2人はとても間に合いそうにない。

 バーランダーと紫ライオン3体の戦いだ。

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