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 ミルリーフは城に用意された部屋にアルカンタラを案内する。

 客人用のピカピカの部屋、フカフカベッドにシャンデリアと豪華な一室だ。


「おお……これはすごい! この時代の部屋はみんなこんな豪華なのか? なんだこの弾力は!?」

 ベットをぴょんぴょんと飛び跳ね遊ぶアルカンタラ。


「ちょっと、遊んでるんじゃないわよ! この部屋は客人用の特別豪華な部屋よ」

 子供のように遊ぶアルカンタラをあきれた表情で眺めるミルリーフ。


「なあ、さっきから気になっていたんだが天井に吊るされているあの光ってるランプはなんだ?」

 アルカンタラは電球を指差す。


「……ん? 電球がどうかしたの? あ、そっか。100年前に電球はなかったのか……」

「……デンキュウ? それは電魔法か!?」

 興味津々なアルカンタラ。


「アンタ……あんなに強くても何も知らないのね。

 蛇口から水を出しただけで驚いてたし。しょうがないわね! 私がイチから現代での暮らしを教えてあげるわ!」


 ミルリーフは腕を組んでアルカンタラを見下ろす。

「……くっ、偉そうに、ムカつくな」


 室内で使われている電気は地下に眠るエネルギーを利用している。

 魔法を使うものが減った現代の世界では、電気や火なども地下エネルギーを使っており、ミルリーフが氷漬けのアルカンタラを発見した時もその地下エネルギーの採掘中だった。


「――――そういう訳で今はみーんな地下エネルギーを使っているのよ。昔に比べるとだいぶ便利な生活になったんじゃないかしら?」

 ミルリーフは一通り説明を終える。


「地下エネルギーか……そんなものがあったとは」

 アルカンタラは不思議そうに電球をつつきながら呟く。


「ふふ。私はアンタから見たら未来人だからね。なんでも聞いてちょうだい」

「ふん、まさか未来人がこんなに弱くなってるなんてソーサーやアゼリが知ったら悲しむぜ」

 アルカンタラは嫌味たっぷりに返す。


「うぅ……ねえ、ソーサーおじいちゃんとアゼリおばあちゃんの話を聞かせてよ。

 文献とか昔話では聞いたことあるけどどれもリアル感がないのよね」

「お、ソーサーとアゼリか……いくらでも話すことはあるぞ。まずは何から話すかな?」


 それからアルカンタラは一晩中、勇者パーティーの思い出を語った。

 ずっと氷の中で眠っていたアルカンタラからすればつい数日前のことも、ミルリーフから見れば100年前のおとぎ話だった。


 ◇


「すごい話だわ……伝えられてる話とは全然違うわね。おじいちゃん達、まるで神様みたいな書かれ方をされてる文献ばかりで……」

 アルカンタラの話を聞きながらミルリーフは祖先のエピソードに驚く。


「はは、神様? ソーサーもアゼリも普通の人だったよ。強くて優しい戦士だ」

 誇らしげにアルカンタラは言った。


「ソーサーなんか酔っ払うと酷くてな。酔っ払ってサドラー国王をボコボコにしてたなぁ」

「お、おじいちゃんが……!?」

 青ざめるミルリーフ。


「ああ、アゼリもムカつく奴にはトコトンやるタイプで手がつけられなかったよ」

「まさか……私の先祖がそんなヤンチャだったなんて……」

「くっくっ、こんなもんじゃないぞ? ソーサーなんてあれで女癖が悪くてなぁ――」

「やめてぇ! もう聞きたくないわぁ!」


 言い伝えの勇者像とはだいぶ違った真実を知り、耳を覆うミルリーフだった。

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