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第7話 すぐ萎えちゃって恥ずかしくないのぉ♡


「もう……一生お酒飲まない……」


 お酒、怖すぎる。

 まさか一晩のうちに、20万人も居たチャンネルがBANされちゃうなんて。



「もうやだ、ダンジョン引き篭もる」

「メインチャンネルは無事だったんだから、いつまでも()ねるんじゃないデビ」

「うっ、うっ……」


 せっかく収益化ができるようになったのに、そのチャンネルごと爆散してしまった。


 残ったのは大量の空き缶と、飲み食いした領収書の束。調子に乗って、知り合いの悪魔から追加でお酒を購入しなきゃよかったよ……。



「はぁ……またイチから配信して、リスナーさんたちを集めなきゃならないなんて」

「そのことなんだけど……サキ。今日は予定を変更して、ちょっとお出かけしたいデビ」

「えー? モンスター退治でウサ晴らし?」


 そんな気分じゃないんだけどなぁ。

 いつもの部屋で、推しの配信を観ながら傷付いた心を癒したいんだけど。



「違うデビ。今回はモンスターを狩るんじゃなくて、ダンジョンに行く準備の実況配信をしたいと思ってるんだデビ」

「準備の実況? どうして今さら準備なんてするのよ?」


 このダンジョンで、私の敵になるようなモンスターは居ない。だったら準備をせずとも、いつでも突入できるはずでしょ。日用品だって、ネットでアイツに注文すればそれで終わりじゃーん。


 ――という私を放置して、デビちゃんは勝手に話を続ける。



「サキは自分が他人からどう見られているか、もっと気にした方が良いデビ」

「そんなの、可愛いって思われてるに決まってるじゃない」

「そういう意味じゃないデビよ……」


 じゃあどういう意味よ?

 と聞いてみれば、デビちゃんは私が本物の悪魔だって人間にバレないか心配みたい。



「人間は脅威と感じた相手には、悪魔よりも卑劣な手段で排除してくるデビ。お馬鹿なサキなんて、あっという間に殺されちゃうデビ」


 ダンジョン配信界に突然現れた私のことを、すでに一部の人が危険視し始めているらしい。


 どこに住んでいるのかも不明、本名も分からない、正体不明の少女。しかも誰も知らなかったスキルを使い、素手で敵を粉砕しまくるんだもんね。

 そりゃあ得体のしれないヤバい奴、って思われても仕方ないか。


 デビちゃんがサブチャンネルで私の生活風景を流していたのも、無害な人間アピールの為だったみたい。



「意外と考えていたんだね、デビちゃん」

「サキが何も考えていなさすぎるんだデビ」

「ぐ、否定できないのが悔しい……」


 配信でもダンジョンでしか私の姿を見ていない。だからモンスターが化けてるんじゃないか、って言う人もいるんだとか。


 つまり私がダンジョンの外でも人間らしく生活している証拠を見せて、視聴者を納得させろってこと?



「え~やだぁ、行きたくなーい。おうちから出るのは、まだちょっと勇気が――」

「街に行けば、サキが食べてみたいって言っていた海岡屋の『ラーメン』もあるデビ」

「さぁ、さっそく行くわよ! プレミアム豚骨が私を待ってるわ!」



 ◇


「……現金な奴デビ」


 肩掛けカバンのストラップに擬態したデビちゃんが、何かを言っている。

 それを無視して、私はダンジョンの外にある街をルンルン気分で歩いていた。



「ふっふふ~ん、今の私は無敵! なぜならラーメンが待っているから!」

「そのラーメン、そんなに美味しいのかデビ?」

「私の推しがオススメしていたんだもの、間違いないわ!」


 同じダンジョン配信者の東北OAさんも絶賛していたし、いつか行ってみたいと思っていたんだよね。


 あれ? もしかしたら、生の彼らに会えるかもしれないんじゃない? ちょっとドキドキしてきた!


 そんな妄想に(ひた)っていると、目の前に五階建ての大きな建物が見えてきた。多分あれが今回の目的地、ダンジョン専門店だ。



『ダンジョン行くならBIGモンスター。どんな素材も高額買取!』


 建物の壁にある大きなモニターから、そんなコマーシャルが流れてくる。国内最大手のお店で、私もDoutubeの広告で何度も見たことがある。


「ランキング1位のギルドに所属しているハヤトって人が、イメージキャラクターをやっているんだって」

「へぇ。凄いイケメンデビ」


 女性人気が凄いらしいけれど、私は顔よりもトークが面白い東北OAの方が好きだ。



「う、うわぁ……」


 お店の前には、長蛇の列が出来ていた。

 いや、行列っていうかこれ……人の壁?


『ハヤトがCMの撮影に来てるんだって!』

『探索用品が新発売されるからじゃない?』


 そんな声があちこちから聞こえてくる。なるほど、この人たちはみんなハヤト目的なのね。



「デビたちも見学するデビ?」

「ううん、興味ない。あ、向こうに可愛い装備があるわよ!」


 一階には、ダンジョン探索用グッズの新作がこれでもかと並んでいる。


 撮影用イヤホン型カメラ、疲れにくいシューズ、簡易テントetc.……その中には、ピンク色のドレス型防具なんてのも売られていた。


 なになに、素材にピーチワームの皮を使用することで魔法耐性がアップ? 超かわいい! ……って、嘘!? これで50万円もするの!?



「昨日の浪費で、お金はないデビよ?」

「……わ、分かってるわよ! まずはヴォーパルラットのドロップ品を売りに行きましょ!」


 後ろ髪を引かれながら、五階の買取カウンターへ。他のフロアと違って、売りに来た探索者はチラホラとしかいない。受付の担当者らしき人はたくさんいるけれど、みんな暇そうに見える。


 みんなハヤトを見に行っているのかしら。でも都合がいいわ。今のうちにさっさと売り払って、ラーメンを食べに行こう!


 だけど、ここで問題が発生した。


「ちょっと! 素材の買い取りができないってどういうこと!?」



⇒第8話 お前にはむりむり♡諦めちゃえ♡

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