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第12話 むりむり♡挿入ってる♡♡


 コラボ配信が開始してから約2時間ほどが経過して。


 私が用意したモンスターを、エリカさんは次々とテイムしていくことに成功した。



「あの、もうちょっと他に良い感じのモンスターって居なかったんでしょうか……」


 フロアの合間にあるセーフティポイントで、エリカさんはそんな愚痴をこぼす。


 そんな彼女の傍らには、触手モンスターのワームプラント、粘液カタツムリのエビルスネイルを始めとした凶悪な見た目のモンスターたちが揃い踏みしている。


 だって仕方ないじゃないの。モンスターに可愛さを求められたって困るわ。



「サキさんが先日捕まえようとしていた、あのモフモフなんかは……」

「近付こうとした瞬間に、貴方の首が胴体から泣き別れするけど。それでもいいなら」

「…………この子たちで我慢します」


<なにこの図>

<AVの撮影現場ですか?>

<エリカ様、似合いそう>

<アイドル配信者のAV堕ちキター>


「違いますぅ! 絶対にそんなことしませんからぁ!」




「さて、そろそろ良い時間だし。今日のところは実践をして終わりにしようか」


 配信も終わりに近づいているため、私はエリカさんにそう告げる。

 今日は彼女のおかげで新規のチャンネル登録者が激増したし、大収穫だったと言って差し支えないだろう。この前の失態は帳消しだ。サブチャンネル爆破事件なんて、さっさと記憶から消してしまおう。



「実践?」

「そうよ、なに? ペットにするつもりだったの?」

「え? あ、あはは。そうでした」


 本来の目的は、彼女の戦力アップだ。

 ただモンスターを仲間にしたところで、彼女自身が強くなるわけじゃない。この戦闘での連携力を鍛える意味合いで、敵モンスターと闘ってもらう予定だった。



「じゃ、まずは軽く最初のフロアボスにでも挑んでみましょうか」

「ふ、ふふふフロアボスですかっ!?」

「何よ、雑魚過ぎて不満?」


 深層モンスターの将軍オークの強さが100とすれば、最初のフロアボスなんて精々10ぐらいだ。それだけ雑魚なら、いくらエリカさんでも楽勝でしょう?


 だけど彼女は首が千切れるかと思うほど、顔を横にブンブンと振っていた。



「雑魚!? 何を言ってるんですか! 普通は中堅探索者が連携の取れる数人パーティを組んで、どうにか犠牲を出さずに倒せるかどうかのレベルなんですよ? 私なんかが一人で挑んだら、五分と経たずに細切れにされちゃいますよ!」


 へぇ、知らなかった。でもエリカさんなら大丈夫じゃない? 悪魔スキルを持ってるし。そんな考えを察してくれたのか、視聴者が横から補足してくれる。


<エリカ終了のお知らせ>

<さすが悪魔、コラボ相手にも容赦ないw>

<でもアイアンメイデンさんが居れば平気じゃね?>


 おい、そこのお前。このか弱くて可愛いサキちゃんを、恐ろしい拷問用具の名前で呼ぶんじゃない!



「んー。じゃあ負けそうになっても、私が守ってあげるから安心しなさい」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあ、そのフロアまでちゃっちゃと行くわよ!」


 そうして最初のフロアボスのいる、第五階層へとやってきた。


 ここのボスはエリートゴブリン。

 普通のゴブリンと違って、バスケット選手の身長と相撲取りぐらいの横幅がある。ただし見た目からは想像もできないような俊敏性と、鍛えられた筋肉の鎧を持っているのが特徴だ。


 もちろん、パワーもノーマル個体に比べると段違いに強い。右手の棍棒は普通の人間程度なら一振りで叩き潰しちゃうだろう。


 といっても、悪魔の私に取っちゃコイツも雑魚オブ雑魚なんだけど。


<またチ○コがバキバキモンスターなわけだが>

<どうしてこのダンジョンは卑猥な奴ばっかなんだよw>

<普通のモンスターはいないのかww>


 うっさいわね、ダンジョンマスターがサキュバス(淫魔)なんだから仕方ないでしょ!



「さぁ、エリカさん! 頑張って倒してみなさい!」

「……はい」


 武器を構えて対峙する二人(+α)を、私は壁際でボクシングのセコンドのように眺めていた。

 対格差がありすぎて、エリカさんが相手を見上げる形になってしまっている。彼女は自分の頭よりも高いところから垂れてくる涎を、引き攣った顔で見つめていた。



「大丈夫かしら……」

「完全に捕食者と被捕食者の図デビ」

「おーい、大丈夫~?」

「ひゃ、ひゃい……!」


 まるで蛇に睨まれた蛙みたいだ。あれは完全に腰が引けてしまっているわね。とはいえ本人が恐怖と緊張でガチガチで動けなくても、彼女にはテイムモンスターがいる。


「ほら、声を出してこ~!」

「――!! はいっ! お願い、みんな。私に力を貸して!」


 エリカさんの両サイドにいるモンスターが、粘液まじりにヌチャァと返事をする。大丈夫、あの子らは私が直々にチョイスしたモンスターだもの。


 それに私はエリカさんよりさらに上位のマスターだから、念話で指示も出せるしね。



「サクラ、あいつの足を触手で捕まえて!」


 サクラと名付けられたワームプラントはエリカさんの命令に従い、エリートゴブリンの足へと両腕を伸ばす。敵はエリカさんに攻撃しようとすでに駆け出していたので、その触手に足を捕らわれて呆気なくすっ転んだ。



「ユリちゃん! デバフ攻撃をお願い!」


 スライディングのように、前のめりに地面を滑るエリートゴブリン。そこへ追撃とばかりに、エビルスネイルの口からベトベトとした白い粘液が吐き出されると、あっという間に敵は全身粘液まみれとなった。


 なんていうか、この一瞬ですごい絵面になってしまった気がする。


 いわゆるBUKKAKE(ぶっかけ)状態である。あまりの濃ゆい粘性ゆえに、エリートゴブリンのパワーも敵わず。白いドロドロの海で必死にもがき苦しんでいる。


<こ、これは……>

<やっぱりAV撮影じゃねぇかw>


「違いますよぉ! ワザとじゃないんですぅ!」


 思いがけない展開に、涙目のエリカさんは視聴者に向かってそう叫んでいる。だけど、ゴメン。私の目から見ても、これはちょっと酷い。


「せっかくの清楚な天使のイメージが台無しデビね」


 デビちゃんからもそんなツッコミが入る。あとさっきは言わなかったけど、モンスターに花の名前を付けて可愛くしようとしても、無駄だよね……。



「は、早く止めを刺して終わらせなきゃ……サクラちゃん、やっちゃって!」

「あっ、待って! 具体的な指示を出さないと、もっと酷いことに……」

「え……っ?」


 止める間もなく、焦った彼女は曖昧な命令を下してしまった。

 サクラもといワームプラントは食肉型植物モンスター。つまり捕食するためには、ヤワな部分から攻めていく特徴があって……。



「あっ」

「あ~」

<あ……>


『ぶふぉおおおっ♡♡』


 身動きが取れなくなっていたエリートなゴブリンの下のお口に、サクラはその太い触手の腕を容赦なくズボっと突き刺した。


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