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第7話 登城

「オルフェ様、アイリーン。お待ちしておりました。

今日はオルフェ様がいらして初めての晩餐ですので、シェフに腕を振るって貰いましたの!

たくさん召し上がって下さいね。」



食堂に着くと、上機嫌なアリシアがオルフェを迎えた。

アイリーンは足早に自席に移動した。


(たしかに今日はいつもより豪華な食事!美味しそう!とてもお腹が空いているから嬉しい……。)


食卓につき、早速アイリーン達は食事を始めた。


「そうそう、アイリーン。殿下から連絡があり、明日登城するようにとのことよ。」


食事の途中、アリシアがさらっと言った言葉にアイリーンは驚いた。


「母様!そんなさらっと言うことではないでしょう!どうしましょう……。」


昨日の今日で登城を言い渡されるとは、何かあったのだろうか。

そもそも今まではセルシス王子の方が訪ねて来るのが常だった為、登城を言い渡されたことはほとんどない。

もしかして昨日話したのち、だんだんと不愉快に思えてきて、怒っている……などだろうか。

アイリーンはそう考え気が重くなった。


「俺も行く。」


アイリーンが登城せよと言われた理由に関して考えていると、オルフェがそう言った。


「…………え?どこにですか……?」


「城に決まっているだろう。お前と共に登城する。」


「ええと……なぜですか?」


「…………理由はなんでもいいだろう。」


(いやいやいや!何を言っているのこの人!)


「駄目です。オルフェ様をお連れすることはさすがに出来ません。」


アイリーンがはっきりとそう言うと、オルフェは少しむっとした顔をして言った。


「分かった。勝手に付いて行く。」


「だから駄目です!!」


アイリーンとオルフェのやり取りを見てアリシアは楽しそうにクスクス笑っていた。


----------------------------


翌日。

アイリーンは登城する為、馬車に乗り込んだ。

心配していたオルフェの姿は見えない。


(さすがにオルフェ様もそこまで非常識ではないわよね。良かった。)


アイリーンは馬車に揺られながら、オルフェのことを考えた。


(彗星のように突然現れた、私の魔法の師。

なぜ彼を見ると時折胸が痛むのかしら。切ないような、申し訳ないような……。

何かを……彼に言いたかった気がするのだけれど……。)


馬車が大きくガコンと揺れ、アイリーンの思考が切り替わる。


(……それよりも、ちゃんと魔法を習得しなければ。

没落を回避し、母を、クロノス家を、そして自分を守らなくては……!

もう絶対に、馬車ごと落ちて死ぬなんて嫌……!

殿下との関係も、出来ることなら…………。)


そんな風に考えを巡らせている間に、城に到着した。澄み渡る晴天に白い城が眩しく映えている。


「クロノス嬢。呼び立ててすまない。来てくれて感謝する。」


「殿下、ご招待頂きありがとうございます。この度は登城出来て光栄です。」


城に着いてすぐに、セルシス王子が直々に迎えてくれた。

アイリーンはいつも通り丁寧に挨拶し、深くお辞儀をした。


「今日はあまり畏まらなくていい。

公の用事などではなく、個人的な頼みがあり呼んだ。だから、その……もっと近しい感じで接して貰えると嬉しい。」


セルシス王子の要望にアイリーンは驚いた。

そして困った。


(親しい感じ……とは!?どう接したらいいのかしら。ええと……殿下呼びをやめた方がいいってことかしら?敬語は使っていいわよね……!?)


アイリーンが困惑し、何かを言おうとしてはやめる姿を見て、セルシス王子は笑い出した。


「ふふ……あはは!昨日みたいな感じでいい。そんなに悩まなくて大丈夫だ。

お前は存外、分かりやすいな。」


セルシス王子が笑っているのを見て、アイリーンは恥ずかしい気持ちになりながらも、どこか嬉しかった。


----------------------------


「……殿下、どこに向かっているのでしょうか。」


「着いたら説明する。」


アイリーンとセルシス王子は城の長い廊下を歩いていた。


(早速頼みたいことがあるから付いてきて欲しいと言われ、かれこれ10分は廊下や階段を歩いている……。)


大体王族の部屋は城の上階の方の奥にある。

もしかして王子の自室にでも案内されるのだろうかとアイリーンがそわそわしていると、ある部屋の前で王子が足を止めた。


「ここだ。入ってくれ。」


王子がドアを開け、アイリーンを部屋に招く。


そこは可愛らしい装飾が施された美しい部屋だった。

優美な薄ピンクのジャガードのカーテンがかかった寝台。

寝台の近くには可愛らしい花を模したランプ。

なぜか花の飾られていない、美しい水色の花瓶。

壁に飾られた妖精たちの絵画。

陽の光がたくさん差し込む大きな白枠の窓からは、庭園を臨めるバルコニーが見える。


「ここは……?」


明らかに女性の部屋。

どうしてここに案内されたのだろうか。まずここは誰の部屋なのだろうか。


「……母の部屋だ。」


「え……。」


アイリーンが案内されたのは、セルシス王子の母、亡くなった王妃の部屋だった。

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