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第67話 レティウス王

火の国の王の言葉を受けたセルシス王子が、アイリーンを抱き寄せ言う。


「先ほども申し上げた通り、ドラゴンは人に倒せるような存在ではない。

ドラゴンは人など一瞬で塵に出来る……。

補佐だとしても、ドラゴンと対峙するのであればやはり依頼は断らせて頂きます。」


「セルシス様……。」


セルシス王子は毅然とした態度を崩さなかった。それを見た火の国の王が、意地悪そうな笑みを浮かべる。


「ほう……人を一瞬で塵に出来る、か。」


火の国の王がそう呟き、手を前に突き出した瞬間……光り輝く巨大な火の玉がアイリーン達の目の前に突然現れた。


「俺も出来るぞ。」

「!!!」


水の国でドラゴンの攻撃を再現した時と同じく、セルシス王子が咄嗟にアイリーンを庇い抱き締める。


しかし火の玉はすぐにその場で離散する。


「時の国の王太子は、相当婚約者が大切なようだな。素晴らしいことだ。」


アイリーンを強く抱き締め、鋭い眼で睨みつけるセルシス王子へ、火の国の王がそう言う。


「名乗るのが遅れたな。

俺は火の国の王、レティウス・サラマンダー。

ドラゴンを倒す者だ。」


---------------------------


「はあああ……疲れた…………。」


アイリーンは客室のソファに倒れ込んだ。

ソファのクッションに顔を埋めた後、横向きに寝そべる。


(淑女にあるまじき行為だけど……今は誰も見てないしいいわよね。)


謁見の間でレティウス王と対面した後、アイリーンとセルシス王子はそれぞれの客室へ案内された。


(レティウス王の力、凄かったわ。

水の国で再現したドラゴンの攻撃に似ていた。

確かに彼の力があれば、ドラゴンも倒せるかもしれない……。

私がやるべきことって何なのかしら?補佐って言っていたけれど……)


アイリーンが考えを巡らせていると、客室のドアがノックされる。


「時の国の魔法使い。レティウスだ。」

「?!!」


扉の外からレティウス王の声がする。

アイリーンはあまりにも驚いた為、ソファから転げ落ちた。落ちた際、ソファ横にあったサイドテーブルに腕をぶつける。

ドタンバタンと音を立てながら、アイリーンはなんとか立ち上がった。


(レティウス王が直接訪ねて来るなんて……!

うぅ全身が痛い…………。ってああ、早くお返事しなくては!!)


「レ、レティウス王。如何いたしましたか……?」


アイリーンが応えると、扉の外から笑い声が聞こえてくる。


「くっ……はは!いきなり部屋を訪ねて申し訳ない!随分と驚かせてしまったようだな。

怪我はないか?」


(転んだことがバレている……あれだけ音を立ててしまえば当然か。恥ずかしいわ……。)


「…………。」


アイリーンは恥ずかしくて無言になってしまった。

扉の外からまたレティウス王が声を掛けてくる。今度は真剣な声色だ。


「おい、どうした?

まさか怪我をしたのか?

無礼を許してくれ、入るぞ。」


そう言ってレティウス王がいきなりドアを開けた。


「えっ……ええ?!」


まさか部屋に入ってくるとは思っていなかったアイリーンが声を上げる。

転げ落ちた為ボサボサに乱れた髪、少しよれてしまったドレス、赤くなった腕、痛みのあまり潤んだ瞳。

そんな淑女にあるまじき姿を見られたアイリーンの顔が、みるみるうちに真っ赤に染まる。


「いやぁ!」


アイリーンは猛烈な恥ずかしさに耐えかね、ソファの後ろに蹲った。


(あああ……大国火の国のレティウス王の前で私は…………!!早く淑女らしく挨拶しなくちゃ!でもこんな状態で淑女らしく振舞っても滑稽では?!)


アイリーンが蹲っている間に、レティウス王がアイリーンに近付く。

気配に気付きアイリーンが顔を上げると、すぐそばに膝をついたレティウス王の姿があった。

レティウス王の燃えるように赤く、真っ直ぐな瞳に見つめられる。


「どこを怪我した?蹲るほど痛いとは……すぐに医者に見せよう。」


「あ…………その、平気です。

少しぶつけてしまっただけですので。」


アイリーンがやっとの思いでそう答える。

レティウス王と見つめ合う形になったアイリーンの顔は、違う意味で再び真っ赤になる。


アイリーンの赤い頬を見たレティウス王が微笑み、さらに顔を近付けてくる。


「可愛いな、アイリーン。」

「??!」


いきなり名を呼ばれ、顔を近付けられ……完全に混乱状態となったアイリーンが、レティウス王を突き飛ばそうとした瞬間。怒鳴り声が部屋に響いた。


《おい、レティ!!》


突然レティウス王の周りが燃え盛り、白く大きなトカゲが現れる。

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