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第65話 火の国

翌日。

クロノス邸は朝早くから騒がしかった。


「荷物はこちらの馬車へ。

ああ!そちらは食べ物ですか?ではこちらへ……」


出立の準備が終わる頃には、日は昇りきり正午に近付いていた。


馬車に乗り込む寸前、ばあばことメイド長のモナリザがアイリーンに軽食とクッキーが入ったバスケットを持たせてくれた。


「長旅になるでしょうから……。アイリーン様、どうかご無事で。」


ばあばは泣きそうな顔でアイリーンを見つめた。


「ありがとう、ばあば。

あまり心配しないで。大丈夫。」


アイリーンは心配のしすぎで彼女の体調が悪くなるのを恐れ、笑顔でそう言った。


そんなアイリーンの手をアリシアが引いた。


「アイリーン……必ず帰って来て下さい。」


アリシアの真剣な眼差しに、アイリーンはたじろいだ。昨日アリシアに貰った金貨袋は持参したが、アイリーンには逃げる気がなかった。

アイリーンが逃げれば、クロノス家は勿論、時の国王家ひいてはセルシス王子が危機的状況に陥るからだ。


(母様……ごめんなさい。

必ず貴方を守りますから、どうか……幸せに……。)


アイリーンはそんな思いをアリシアに悟られないようにと、また笑顔を作った。


「はい、母様。」

「………………。」


アリシアの悲痛に満ちた顔に気付かない振りをして、アイリーンは馬車に乗り込んだ。


(オルフェ様……結局最後に挨拶出来なかったわ。)


アイリーンは馬車の窓からクロノス邸を眺めながらオルフェのことを思った。

その時クロノス邸2階、東の角部屋の窓にオルフェの姿が見えた。オルフェの首には、普段は服の下に隠されているクロノスの至宝が輝いていた。


---------------------------


昼。

火の国の使者率いるアイリーン一行は、時の国の城へ到着した。

時の国の王に謁見した後、セルシス王子と共に火の国への旅路につく。


「今回王は招致を辞退したんだ。

もし今王に何かあれば、時の国は混乱に飲み込まれてしまう。

それに今は火の国の上空にいるらしいが……ドラゴンがいつこちらへ飛んで来るか分からないしな。

俺のみが時の国王家代表として、火の国へ向かう事になった。」


アイリーンはセルシス王子の要望で彼の馬車に同乗していた。


「セルシス様が一緒で心強いです。

ただセルシス様……分かっておられると思いますが、くれぐれも火の国の王の前で依頼を断るような事はしないで下さい。

国家間の関係にヒビを入れるような行動は……」


「それは約束出来ない。」


アイリーンの言葉を遮るようにセルシス王子が言う。その声にはあからさまな怒りが表れていた。


「アイリーン……俺は俺の為にお前を守る。

お前に懇願されようと、考えは変わらない。」


(私も同じです。私は私の為に、大切な人達を守りたい。)


馬車の中はギスギスとした空気が流れていたが、そんな状況でも勿論時間は過ぎていく。


火の国への旅路について3日。アイリーン達一行は火の国の王都へ着いた。


(ここが火の国の王都……。

水の国へ行く際、火の国の領土は通ったけれど、王都は初めて。すごい……!)


火の国は大陸で最も大きな国だ。

国の中心には大きな火山があり、大量の鉄や鉱石が取れる。その関係もあり、他国より明らかに様々な技術が進歩している。


(街灯がたくさん!夜になったら綺麗だろうな……。えっ!あれってもしかして少し前に新聞で見た、機械仕掛けの馬?!)


アイリーンが窓に張り付き外を眺めていると、セルシス王子もアイリーンの横から窓を覗いてくる。


「火の国はやはり技術が進んでいる。

食料などはほとんど他国から輸入していると聞いたが……これだけの技術力とそれを支える資源があれば、経済は盤石だろうしな。」


「石畳の道に街灯、時計台に機械仕掛けの馬……とても近代的で美しい街ですね。」


気付けばアイリーンの顔のすぐ横にセルシス王子の顔がある。いつの間にか、アイリーンとセルシス王子は肩をくっ付けて馬車の窓を覗いていたようだ。

セルシス王子もアイリーンの顔がすぐ横にあることに気付く。

目があい、距離の近さに二人とも同時に頬を染めた。


(セルシス様の赤面した顔をまた見れて嬉しい。とても綺麗だわ……。)


その美しい顔を赤らめ、瞳に熱を宿したセルシス王子は、どんな天使の絵画よりも美しかった。

セルシス王子の顔がさらに近付いてくる。

アイリーンは自然と目を細める。

二人の唇が触れそうになった瞬間、馬車が止まり扉がノックされる。


「殿下、クロノス公爵、着きました。」

「「!!」」


二人は慌てて離れ、馬車から降りた。

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