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第58話 今魔法を使いたい

全員がその場で唖然とした。

訳も分からないうちに周りは更地と化していた。


「姉様……姉様は……?!」


イリア姫が叫ぶ。

同時にソフィア姫の叫び声が聞こえた。


『いやぁあ!メグ……!!』


声の方を振り返ると、下半身がほぼなくなったメグの下からソフィア姫が這いずり出て来た。


下半身だけでなく、背中側の鎧も溶けており、その中は……。


見ようとしたアイリーンの目を、オルフェの手が遮った。


「お前は見ない方がいい。」


ソフィア姫は森の方へ全力で走り、大木の後ろに蹲った。


『はぁっ……はぁっ……』


恐怖の為か全身をガタガタと震わせている。


『……私は水の国の誇り高き騎士姫……私は水の国第一王女……私は、私はあの子たちの姉……』


ソフィア姫はそう呟き、胸元のブローチを握り締めた。


『イリア、レイ、ラズリー……!』


魔法で氷の槍を出し、それを掴む。

イリア姫の身体が水を纏う。身体の周りには大きな水の玉が2つ、衛星のように廻る。


『あああああああぁ……!!!』


イリア姫が叫び、ドラゴンへ突撃した。

大きな水の玉から大量の水が噴射され、その力で空を舞う。

先ほどの閃光弾を出そうとしているのか、ドラゴンは口を開き光を纏う。その口に氷の槍を突き刺す。


瞬間、大爆発が起こり、あたりに追憶の霧と粉塵が舞う。


「姉様!姉様ーっ!!」


曇る視界の中、イリア姫が崖の縁へ駆けていく。

崖から落ちるギリギリのところを、レイ姫とラズリー姫が押さえ付けた。


同時に霧と粉塵の中から、人らしきものが弾き出され、森へと落ちていった。


すごい剣幕のイリア姫がアイリーンに向かって叫ぶ。


「アイリーン様!!姉様はどこへ行ったのですか!!」


「!!」


イリア姫の叫び声にアイリーンの身が竦んだ。


「い、今、“ノスタルジア”で……」


アイリーンが焦り再び魔法を使おうとする。

それをオルフェが制止した。


「アイリーン!安易に魔法を使うな!!

今日はもう2度も“ノスタルジア”を使用したんだぞ!」


「でも……!」


「アイリーン様!!」


「凍てつけ!!」


場が騒然とする中、イゾルデ女王が詠唱した。

瞬間、辺りが凍りつく。


「!!」


特にイリア姫は足元まで凍りつき、身動きが取れなくなっていた。


「一旦皆落ち着きなさい。……イリア、これは魔法で再現されたものですよ、落ち着いて。」


「……はい……申し訳ございません……。」


イゾルデ女王に諭され、謝罪したイリア姫は俯き黙り込んでしまった。


(……イリア様の為に、今“ノスタルジア”を使いたい。このまま涙の止まらない夜を過ごして欲しくない。)


アイリーンはそう思い森へ目を向けた。

鬱蒼と生い茂る木々達。森の終わりは見えない。


(そんなに遠くまでは吹き飛ばされていないはず……だから“ノスタルジア”をかける範囲も、ここから1kmほど先まででいいはず……何とかなるかも……)


「“ノスタルジア”で、ソフィア姫を探します。」


アイリーンはそう言い、森へと歩き出す。

その手を、オルフェが引き留めた。


「……どうしても今、魔法を使うんだな?」


アイリーンが振り返ると悲しそうな顔をしたオルフェと目が合った。

アイリーンは胸が締め付けられる感覚に襲われる。


(オルフェ様の心配を無碍に扱うことになる。

それでも私は、今魔法を使いたい。


罪滅ぼしにもならないかもしれないけれど、イリア様の叫びに今応えてあげたい。)


アイリーンは真っ直ぐな目でオルフェを見つめて言った。


「はい。今、魔法を使いたいのです。」


その言葉を受けたオルフェが、アイリーンを抱き締めた。

そして握っていたアイリーンの手を、自分の首元に押し付ける。


「オルフェ様?!」

「アイリーンを離せ!」


アイリーンとセルシス王子が同時に声を上げる。


(……?オルフェ様の首元に何か……)


アイリーンはオルフェの首元に何か硬い物がある感触に気付いた。瞬間、身体から魔力が溢れてくるのを感じる。


「セルシス様!大丈夫です。これも魔法の一環です!」


アイリーンとオルフェに駆け寄って来るセルシス王子に、アイリーンがそう声を掛けた。


「気付いたか?」


オルフェがアイリーンの耳元で囁く。

近すぎる距離に緊張しながらも、アイリーンが答える。


「はい。……オルフェ様の持つ魔法具の力で、魔力を増強して下さっているのですね?」


「そうだ。どうしても魔法を使うなら、この状態で使え。これなら今から使う魔法も、魔力消費だけで使えるからな。」


オルフェがさらにアイリーンを抱き寄せる。

身体が密着し、アイリーンの心臓が跳ねる。


「ちょっとオルフェ様、近すぎます。

その……恥ずかしいです……。」


アイリーンが赤面しながらそう言うと、オルフェも顔を赤くした。


「何だその顔、煽ってるのか?

……早く魔法を使えよ。」


アイリーン達の様子を、セルシス王子は鬼のような形相で見ていた。

騎士姫達はと言うと、イリア姫が側にいたレイ姫とラズリー姫の目を手で覆っていた。


「もう!……集え黄金の記憶の欠片たち。織り成すは追憶の影。再現せよ、“ノスタルジア”!」

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