第48話 騎士姫達の意外な一面
『姉様、よく決断しました!
フィリップ様とは別れた方がいいです!あんな顔だけの男!
顔だけはいいのは認めます。でも本当に顔だけです。他は全てにおいて取るに足りません。
あんな人姉様に相応しくありませんわ。』
イリア姫の追憶の像は腕を組み、笑顔でそう言った。
(……え?先ほどまでのイリア様と印象が違うような……。イリア様ってこういうことを仰る方だったのね……??)
イリア姫の意外な態度に、アイリーンは目を丸くした。
アイリーンの驚いた顔に気付いたイリア姫の顔が真っ赤になる。
「あ、これは……その……」
『私も婚約解消に賛成です、ソフィア姉様。
女性関係にだらしない男性など、姉様の伴侶として論外です。
ソフィア姉様は引く手数多なのですから、わざわざフィリップ様のような下衆野郎を選ぶ必要はないかと。』
レイ姫が先程まで掛けていた椅子にはレイ姫の追憶の像がおり、丁寧だがどぎつい批判の言葉が聞こえてくる。
(え……レイ様ってこんなに毒舌なの……?)
『フィリップ様は顔だけはいいのでキープにしては?あんな男は本命にせず、遊んでぽいくらいが丁度いいかと思いますわ。』
ラズリー姫の追憶の像が、可愛らしく頬杖をつきながらそう言う。
(えっ……??えっとラズリー様は11歳よね?先程まで無邪気だったのに、これは一体……?)
『もうラズリー、どこでそんな言葉を覚えてくるの?そんな事を言ってはいけませんよ。』
ソフィア姫がラズリー姫を窘める。
『ソフィア姉様、ラズリーは意味も分からず言っているに違いませんわ。最近変にませてきていて……』
『レイ姉様うるさい!』
先程の様にレイ姫とラズリー姫が喧嘩を始める。イリア姫がため息を吐く横で、ソフィア姫がミルクと砂糖を混ぜ始めた。
『レイ姉様だって大人ぶってるけど、恋愛のことなんて何にも分かんないくせに!』
『それはラズリー貴方も同じでしょう!』
ソフィア姫が魔法で砂糖入りのミルクを操り、大きな水滴状にして二人の元へ飛ばす。パチンと指を鳴らすと砂糖入りのミルクは凍り、そのまま二人の口の中に転がり込んだ。
『二人共、アイスキャンディーでも舐めて冷静になって頂戴。
……やっぱり女性関係のだらしない殿方なんて最低よね。貴方達のお陰で決意が固まったわ。』
そう言いながらソフィア姫が手元の砂糖入りミルクを操り凍らす。そしてそれを自身の口とイリア姫の口に放り込んだ。
『ありがとう、みんな。』
そう言いながら美しく微笑んだソフィア姫が黄金色の光の粒へと戻って行く。
「あ!姉様……!」
イリア姫が声を上げたのと同時に、ソフィア姫の追憶の像が消える。
場が静寂に包まれる。
「……これが、思い出を再現する魔法なのですね……。」
イリア姫が複雑そうな顔でそう呟く。
アイリーンは居た堪れない気持ちになる。
「はい……。その、何というか……申し訳ございません…………。」
アイリーンは騎士姫達の意外な一面を勝手に見てしまったことに対し、申し訳なさを覚えた。
「アイリーン様が謝ることではありません!本当に素晴らしい魔法ですわ!
私達が普段から言葉に気を付けていれば良かったのです。お恥ずかしい限りですわ……。」
イリア姫が赤い顔でそう言う。
「「お恥ずかしい限りです……。」」
レイ姫とラズリー姫も続けてそう言う。
アイリーンは笑い出しそうになるのを必死で堪えた。
(中身は歳上の私からすれば、三人共とても可愛く見えるわ。おませな子達なのね。)




