第47話 お茶会の思い出
「改めまして……水の国第二王女、イリアです。
年齢はアイリーン様と同じ14歳です。
同い年ですし、お好きな様にお呼び下さい。
仲良くして頂けると嬉しいです。」
イリア姫はそう言い微笑んだ。
悲しみは依然として滲んでいるが、こちらに寄り添おうとしてくれているのが分かる優しい表情をしている。
「改めましてご挨拶を。水の国第三王女、レイです。年齢は12歳です。私のことも好きに呼んで頂ければと思います。
この度は水の国の為に力をお貸し頂けること、感謝致しますわ。
私に出来ることがありましたら是非協力させて下さいませ。」
続いてレイ姫が挨拶する。
表情や言葉遣いは固いが、礼儀を重んじた丁寧な挨拶だ。
「先程は失礼いたしました。改めてご挨拶させて頂きます。水の国第四王女、ラズリーです。
どうぞ気軽な呼び方でお呼び下さい!年齢は11歳です!
私、お尋ねしたいことが沢山ございますの!
是非仲良くして下さいませ♪」
最後にラズリー姫が挨拶した。とても友好的で可愛らしい挨拶だ。
レイ姫が年齢に対して大人びた印象を与えるのと対照に、ラズリー姫は年齢より幼い印象を受ける。
アイリーンも騎士姫達に改めて挨拶をした。
「私も改めてご挨拶させて下さい。
時の国の魔法使いの本家であるクロノス家現当主、アイリーン・クロノスです。
ウンディーネ様並びに水の国王家の皆様のお力になれるよう頑張ります。
……その……仲良くして頂けますと幸いです。」
(挨拶ってなんだか恥ずかしいわ。変じゃないわよね?)
アイリーンが挨拶を終えると、早速ラズリーが身を乗り出して来た。
「ねぇねぇアイリーンお姉様!時の国の魔法を見せてくださらない?
なんでも思い出を再現出来る魔法が使えるとか!本当にそんな素敵な魔法がありますの?」
「ラズリー!いきなり馴れ馴れしい呼び方はよしなさい!!」
ラズリー姫の発言にまたもレイ姫が注意する。
先程のような喧嘩が始まる前に、今度はアイリーンがフォローを入れた。
「お気遣い頂きありがとうございます、レイひ……様。私はラズリー様にお姉様と呼んで頂け光栄です。」
敬称に姫をつけると距離を置いた印象を与えてしまうと感じたアイリーンは、思い切って騎士姫達を様呼びにすることにした。
「まぁ……アイリーン様がそう仰るのなら。」
レイ姫がアイリーンの言葉を受け引き下がる。
しかしラズリー姫はレイ姫を煽った。
「さっすがアイリーンお姉様!意地悪なレイ姉様と違って優しい御方ですのね!」
「このっ……!」
レイ姫がまた眉を吊り上げラズリー姫を睨む。
(もうっ!なんで喧嘩したがるのよこの姉妹は!)
「ラ、ラズリー様!魔法をご覧になりますか?!先ほど仰っていた思い出を再現する魔法!!」
またもアイリーンがフォローを入れる。
アイリーンの魔法の話にラズリー姫は食いついた。
「まあ!見たいですわ!」
ラズリー姫だけでなく、レイ姫とイリア姫も魔法に興味があるようだ。こちらを伺うように見つめている。
(ティーサロンといえばやっぱりお茶会の思い出よね。騎士姫様達のお茶会の思い出を……)
アイリーンは目を閉じて詠唱した。
「集え黄金の記憶の欠片たち。織り成すは追憶の影。再現せよ、“ノスタルジア”。」
あたりに黄金色の光の粒が舞う。そして美しく優しい声が聞こえて来た。
『イリア。』
イリア姫の横。少し不自然に空いていた空間に、美しい女性が座っていた。
黄金の光に身体を縁取られた、騎士姫達と同じ青く艶やかな髪とアクアマリンの瞳を持つ女性。
呼びかけられたイリア姫はゆっくり横を向く。
『イリアはお砂糖1つにほんの少しのミルクだったわよね?』
そう言いながら女性は紅茶に砂糖とミルクを入れる。
「ね、えさま……」
イリア姫が呟く。
レイ姫とラズリー姫は硬直し、その女性……ソフィア姫を見つめていた。
『レイは砂糖もミルクもなしで、ラズリーは砂糖2つにミルク多め。……はい、紅茶の用意が出来たわよ。』
ソフィア姫が立ち上がり、レイ姫とラズリー姫の前に紅茶を出す。もちろん追憶の像なので黄金の光に縁取られた実体のない紅茶だ。
しかし全てが本当にそこに在るかのように息づいてる。
『ねぇみんな、この間の話の続きなんだけど……やっぱり私、フィリップ様とは婚約を解消したいと思っているの。どう思う?勝手すぎるかしら……。』
ソフィア姫は困ったように眉を下げそう言った。
「あ……この会話……。」
イリア姫が何かを思い出したように小さな声で呟く。
その時、イリア姫が座っている椅子が黄金の光の粒子に包まれる。驚いたイリア姫が立ち上がると、そこには黄金色の光に形作られたイリア姫が座っていた。




