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第46話 騎士姫達とのお茶会

「アイリーン、こっちに行ってみよう。」


アイリーンとセルシス王子は手を繋ぎながら、水の国の城下町を歩き回った。


水鏡は日光を受け、虹色の波模様を城下町全体に描いている。風が吹くたび揺らめく虹色の波模様はまるで、透き通った水の中にいるような感覚になる。

加えて水鏡は、水の国の水晶の屋根に反射した光も受け、虹色の宝石が散りばめられているかの様に煌めいている。


道の中央の水路から聞こえるせせらぎの音と、人々の生活する音。


柔らかな日差し。頬を掠めるそよ風。


家々の軒先に飾られた、サンキャッチャーが描く虹色の光の粒たち。


そして握られた手のぬくもり。


(心地良い……)


アイリーン達はどちらからともなく立ち止まり、道の端に寄った。

穏やかな風が吹く。

町中の虹色の光の粒がちらちらと舞う。


「……洗い立ての洗濯物の匂いがする。」


セルシス王子がおもむろに言葉を紡ぐ。

アイリーンが目を上に向けると家と家の間にロープが掛けてあり、そこに白い洗濯物たちがはためいていた。


「水をやったばかりの草木の香りもする。暖かな陽だまりの香りも。

食べ物の良い匂いもする。」


アイリーンとセルシス王子の横を賑やかな子供たちが駆け抜けていく。


「鬼ごっこ勝った方が、今日のおやつを選ぼう!もちろん半分こな!」

「待ってよ、お兄ちゃん!」


子供たちの声を聞いたセルシス王子が、とても優しい目で言う。


「どちらが勝っても、いい思い出になるな。」


柔らかい日差し、穏やかな風、ぬくもり、子供たちの声、虹色の光の粒。


セルシス王子が優しい笑顔でアイリーンに言った。


「ここには、幸せが溢れているな。」


また穏やかな風が吹き、2人を優しく包んだ。


(ああ……幸せだわ……。)


アイリーンは心からそう思った。


---------------------------


午後4時。

セルシス王子との城下町散策から戻ったアイリーンは、水の国の城のティーサロンへ向かった。


ティーサロンは庭園に面しており、屋根は青水晶のように青く透き通ったガラスで出来ている。壁一面は窓になっており、開け放たれた窓から優しい風が入ってくる。


「お待ちしておりました、アイリーン様。

本日は私達のささやかなお茶会にお越し頂きありがとうございます。」


裾の短いドレスの端を摘み、イリア姫はお辞儀した。既に騎士姫達は全員集まっており、イリア姫に続きお辞儀をしてくる。


「こちらこそ、本日はお招き頂きありがとうございます。」


アイリーンもお辞儀を返す。そのタイミングで部屋中に光の波が広がる。


《おかえりなさい、アイリーン。

セルシス王子とのデートは楽しかったかしら?

……あ!急かしては駄目よね。まずはお茶会を始めないと!》


どこからともなく現れたウンディーネが、部屋の中央に位置する円卓の真上をくるくると周遊しながらそう言う。


「ウンディーネ様……。」


その様子を目で追いながら、アイリーンがウンディーネの名を呟いた。


「!……アイリーン様、やはり先程の光はウンディーネ様がいらした証だったのですね。

つまり今この場にウンディーネ様がいらっしゃるということですよね……?」


呟きを聞いたイリア姫が、緊張した面持ちでアイリーンにそう尋ねて来た。

見渡すと騎士姫達全員の顔が強張っている。


《いけない!アイリーン、騎士姫達に私は早々に去ったと伝えて頂戴!

きっと私がこの場にいると思ったら、騎士姫達は気兼ねなく話せなくなってしまうわ。》


イリア姫の言葉を聞いたウンディーネが風の如き早さでアイリーンに指示を言い渡す。


「あ……ええと、つい一瞬前までいらしたのですが、引き波の如く去って行かれました……。」


アイリーンがそう返すと、騎士姫達は皆ほっとした表情になる。

こうしてお茶会が始まった。


「それにしてもアイリーン様はすごいですわ!

魔法具がなくてもウンディーネ様と会話出来るだけでなく、直接依頼も受けられるなんて!」


第四王女のラズリー姫がそうアイリーンに声を掛けた。


「あ……ありがとうございます、ラズリー姫。」


アイリーンはなんと答えればいいのか分からず、とりあえずお礼の言葉を返した。


ラズリー姫が続ける。


「アイリーン様の方が歳上ですから、気軽にラズリーとお呼び下さい!

ねぇ、アイリーン様はどんな魔法が使えますの?

私、時の魔法を見たことがないんです!」


「あの、えっと……」


「もうラズリー!まずは改めて挨拶なさい!

いきなり馴れ馴れしく話し掛けては失礼でしょう。」


第三王女のレイ姫がラズリー姫に注意する。


「……もう、レイ姉様ったら相変わらず口うるさいんだから……。」


そうラズリー姫が小さくぼやく。


「ちょっとラズリー?何か言いました?」


レイ姫が眉を顰める。


「もう二人共!アイリーン様が困っていらっしゃるわよ!こんな場で喧嘩なんてしないで下さい!」


イリア姫が二人を注意する。


「だってイリア姉様!レイ姉様が!」

「でもイリア姉様!ラズリーが!」


レイ姫とラズリー姫が同時にイリア姫にそう訴える。


「だってもでももありません!静かになさい!」


(……完全にアウェイだわ。というか、騎士姫様達はもっと淑女らしい方々かと思っていたけれど、何というか……。)


《もうこの子達ったら相変わらずね。ソフィアがいないと喧嘩ばっかりなんだから。

ごめんなさいね、アイリーン。》


騎士姫達のやり取りをぽかんとした顔で見ていたアイリーンへ、ウンディーネが言う。


置いてけぼりのアイリーンに気付いたイリア姫が、焦った様子でアイリーンに向かって言う。


「お恥ずかしいところを見せてしまい、申し訳ございません。ええと、改めてご挨拶させて下さい。」


イリア姫がそう言い、場を仕切り直す為手を叩いた。

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