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第44話 セルシス王子とウンディーネ

アイリーン、セルシス王子、オルフェの3人は、水の精霊ウンディーネのいる大聖堂のような部屋を訪れた。


イゾルデ女王や騎士姫達も集まっている。


「……お久しぶりです、イゾルデ女王。この度は突然の訪問となり、誠に申し訳ございません。」


セルシス王子が本当に申し訳なさそうな声でそう言い、深々とお辞儀をした。


「久しいですね、セルシス王子。最後に会ったのは貴方がまだ10歳の頃かしら?

……残念だわ。今の貴方を見れたら良かったのだけれど。きっととても美しく成長しているのでしょう?」


そうイゾルデ女王が優しい声で言う。

どうやら2人には面識があるようだ。


「いえ、騎士姫達の美しさにはとても敵いません。」


セルシス王子がそう答え、微笑んだ。

その微笑みの麗しさに、騎士姫達が息を呑む。

その時、白いイルカがどこからか空中を泳いで来た。


《セルシス王子!久しぶりにお会いしたわ。

相も変わらずなんて美しいお顔!》


そう言いながらウンディーネはセルシス王子の周りをくるくると回った。


「ウンディーネ様は、セルシス様とお会いしたことがあったのですね。」


アイリーンがウンディーネに話し掛けた。


《ふふ!セルシス王子は過去に2度ほど水の国にいらしているの。

両国の親交を深める為の訪問だったわね。

だから彼が小さな頃から知っていますのよ。

その頃から美しい容姿でした。》


ウンディーネはそう言い、セルシス王子をうっとりとした様子で見つめていた。


「そ、そうだったのですね。」


アイリーンはウンディーネの様子に若干引いてしまった。


「アイリーン……俺の近くにウンディーネ様がいらっしゃるのか?」


そうセルシス王子がおずおずと尋ねて来た。

また、どの方向を向くべきか迷っているようで、首を左右に動かし始める。


(そうだった!セルシス様には見えていないのだったわ。)


「はい。セルシス様の右隣にいらっしゃいます。

ウンディーネ様は、セルシス様のことをとても褒めていらっしゃいます。その……美しいと。」


アイリーンの言葉を聞いたセルシス王子が右隣へ向かって跪く。


「身に余るお言葉をありがとうございます。

この世でもっとも清廉で美しいと名高いウンディーネ様に褒めて頂けるとは……俺は世界一の幸せ者です。」


そう言いセルシス王子が一層麗しく微笑む。


《きゃ〜〜!》


ウンディーネが興奮した声でそう叫び、胸びれで頬を抑えて身体をくねらせた。


アイリーンはウンディーネの様子を見て、内心何とも言えない気持ちになっていた。


(もしかして……というか確実に、ウンディーネ様と水の国王家の方々は面食いよね。

セルシス王子に色めき立っているのを見ると、なんだか……モヤモヤするわ。)


《ああ!そういえば、セルシス王子にも色々お伝えしなくてはならないわね。》


我に返ったウンディーネがそう言い、アイリーンの元へ泳いで来た。


《アイリーン、イゾルデにインクと紙を用意させて。手紙を刻むと言えば分かってくれるはずよ。》


「その、ウンディーネ様……本当にセルシス様に事の顛末を全てお話しなさるのですか?」


アイリーンはセルシス王子に聞かれないよう、とても小さな声でウンディーネに尋ねた。


《ええ。……貴方の心配は分かっていますよ、アイリーン。

確かにセルシス王子を巻き込めば国家間の問題となります。……しかし、ドラゴンに関する問題はもうどの国も無関係ではいられません。


大丈夫。時の国に不利な状況にはなり得ません。今は各国が団結しなくてはならないのです。今回の件は、必ず団結への第一歩となるでしょう。》


ウンディーネの声はとても真剣だった。


(本当は不安で仕方ないけど……ウンディーネ様の言う通りだわ。

……それに、時の国と時の国王家、そしてクロノス家を守る為には、ドラゴンの情報に加え他国の協力は必要不可欠……。)


「……分かりました。」


アイリーンはイゾルデ女王に、ウンディーネがインクと紙を欲していることを伝えた。


すぐにイゾルデ女王が命じたメイド達が、青いインクと紙、小さな机、水晶で出来た文鎮を運んで来た。


騎士姫達が机に紙を置き、文鎮で紙の両隅を留めた。


《アイリーン、渡していた依頼書も用意してくださる?》


ウンディーネの言葉を受け、アイリーンは依頼書を机に置き、隣の紙に習い両隅を文鎮で留めた。


《完璧な準備ですわ。では……》


ウンディーネが目を瞑る。瞬間、部屋に波打つような光が溢れる。そしてインクが複数の水の球になりゆっくりと宙へ上がり、紙に落ちた。


紙に落ちた瞬間、インクが文字の形になる。

そうやってみるみるうちに手紙が書き上がっていった。


アイリーンが水の国から貰っていた依頼書にもインクの水滴達が降り注ぎ、気付けば書き換えられていた。

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