表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/120

第36話 セルシスと呼べ

それから30分程経っただろうか。

アイリーンとセルシス王子はまだ空にいた。


憔悴しきった顔のアイリーンとは反対に、セルシス王子は目をキラキラさせて飛び続けている。


その時はいきなり訪れた。

突然セルシス王子の翼が消えたのだ。


「!!!」


セルシス王子は驚いた表情のまま落ちていく。


「駄目……!セルシス様!!!」


アイリーンは叫んだ。そしてセルシス王子を追い、急降下する。気圧が急激に変わり、耳が聞こえなくなる。


アイリーンの脳裏に風の精霊シルフの言葉が蘇る。


《これは君の“語り手”の分。

このブローチは魔法具だから、魔力がないものが使う時は、アイリーンが魔力補填してあげて。

1回の魔力補填で約30分ほど飛ぶことが出来るよ!

二人で空のデートを楽しんでね!》


(もう!!私、何故こんなに大事なことを忘れていたのかしら!!


何としてもセルシス様の落下を止めなきゃ……物

体の時を止める魔法……物体の時を止める魔法……!!)


アイリーンがセルシス王子の落下を止める為に魔法を使おうとしたその瞬間、セルシス王子が空中で向きを変え、庭園の高木の枝を掴んだ。


「ふっ……!」


そのまま遠心力で一回転し、庭園に植えてあった金木犀の植木へ飛び込んだ。


「殿下!!無事ですか?!」


一瞬の出来事を成す術なく見ていたアイリーンは、セルシス王子の落ちた金木犀の植木の横に降り立ち叫んだ。


「ああ、大丈夫だアイリーン。」


植木の中からセルシス王子が這い出て来る。

身体のところどころに小さな傷が出来ているが、大きな怪我はなさそうだ。


アイリーンはセルシス王子に抱きつき、魔法を発動した。

セルシス王子の身体の傷が消えて行く。


「ごめんなさい……本当にごめんなさい、殿下……。殿下を危険に晒すなんて、私は最低です……。」


アイリーンは自分の行動を後悔していた。

エフィリア女王や風の精霊シルフのように風の魔法を使える訳ではないアイリーンが、落下対策なども全く考えず、魔法の使えない彼を空に上げた。これがどれだけ危険な事だったか。アイリーンは今やっと理解し、己のしてしまった行動に震えていた。

一歩間違えればアイリーンはセルシス王子を死に至らしめていたのだ。


「アイリーン。俺は大丈夫だ。あまり気に病むな。」


セルシス王子が震えるアイリーンの背を撫でる。


「気に病まないのは……無理です。

殿下……私に何か罰を。何でも受け入れます。」


アイリーンがセルシス王子に抱きついたままそう言った。


少し間を置いてから、セルシス王子がアイリーンの腰に手を回して言う。


「なら……これからずっと俺のことは“セルシス”と呼べ。空中では何度も呼んでくれていただろ?」


「え……」


そんなことでいいのか。

アイリーンは驚き顔を上げた。

するとセルシス王子と目が合う。至近距離で見た彼の瞳は美しく、妙に熱っぽく、アイリーンは固まった。


「これが罰だ。いいな?」


そう言いながらセルシス王子の顔がアイリーンに近付いて来る。アイリーンの心臓がどくどくと脈打つ。セルシス王子の鼻先がアイリーンの鼻先に当たった瞬間、恥ずかしさに耐えかねたアイリーンがセルシス王子から離れた。


「その……様はつけてもよろしいでしょうか……?」


アイリーンは真っ赤な顔を隠すように俯きながらそう聞いた。


「あ、ああ……許す。」


同じく真っ赤な顔を隠すように空を仰いだセルシス王子がそう答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ