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水無月の紫陽花  作者: アンドリウス
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プロローグ

微熱はいつか快楽となり、狂気にまみれた幻惑にさえ気づかず。


それでもきっと誰かのために。

信じられる君のために。


走るんだ。生きるんだ。

 

運命は変えられるって、俺はもう知ってるから————。




 意識が覚醒した。


「もう朝か・・・。」


大きな欠伸をする。

なんだか変な夢を見ていたような見ていないような、そんな気分。

まぁいいや。思い出せないということは大して重要なことでもないだろうし。

体を起こし、洗面台で顔を洗う。冷たい水の刺激で意識がはっきりとした。

そして袋に入った複数個はいったパンの1つを食べながらテレビをつける。

5月15日、朝のニュースだ。

今日の天気、昨日の事件、政治家の発言……様々な情報が目に飛び込んでくる。

そうしていると、ある話題が出てきた。

それはここ最近起きている連続殺人事件についてだった。

被害者は全員10代の女性。しかも現場は俺の住んでる街にそこまで遠くないときた。


「はぁ・・・最近物騒だな。」


朝食を終え、身支度をし家を出る。

職場までの道のり、いつも通りの風景。

何も考えず、ただただぼーっと歩いていく。

そうしていると俺の職場が見えてきた。


私立暁女学園——ここら辺でもずば抜けて偏差値の高いお嬢様学校。


そう、この私立暁女学園こそが俺の職場なのだ。

俺はこの女子高で清掃の仕事をしている。





「ふぅ・・・花壇はこんなもんかな・・・。」


これから夏に近づくにつれ雑草もどんどん伸びていくんだろうな、だるいな。と思いながらも次の仕事に取り掛かろうとする。


「次は倉庫の掃除か・・・。」


中庭の端に古びた倉庫がある。

中は埃っぽく、長い間使われていないため、少しカビ臭い。


「とりあえず中を空にするか」


中にあるものをどんどん外に出していく。

すると奥の方に何やら光るものが見えた。


「これは・・・お守り?」


拾い上げようとした瞬間、目の前が光に包まれた————————!




ゆっくりと目を開ける、あたりは白い世界。


「おい、お前名前は」


声を掛けられ後ろを振り向くと一人の女の子が立っていた。


「私の質問にこたえろ。お前、名前は何という」


「俺はキョウヤだけど・・・ここはどこだ」


「ここはいわゆる精神世界だ。おいキョウヤお前私と契約しないか?」


何だこの女。顔はいいが、言ってることが滅茶苦茶だ。

精神世界?契約?訳が分からない・・・・。


「いきなり何言ってんだ!ここから出してくれよ!」


「先に私の質問にこたえろ。私と契約しないか。ちなみにイエスと答えないとここからださん」


「そんな断れないじゃないか!それと契約って何をするつもりなんだ」


「それは言えないな。先にイエスかノーか答えてもらおうか」


そんな無茶苦茶な提案があるかよ・・・・。しかし先にこの変な空間から出ることが優先だ。

とりあえず建前でイエスと言ってここからだしてもらおう。


「あぁいいよ。契約しよう、だからここから早く出してくれ」


「そうか契約するんだな、ではこれからよろしく頼むぞキョウヤ。では戻そう」


「これからよろしくって・・・、ちゃんと元の場所に戻してくれよ」


手を組んだ内容は知ったこっちゃないが、これで仕事に戻れるみたいだ。


「あぁもちろん元の世界に戻すとも、ついでに時間もな」


「え」


そしてまた目の前が光に包まれた————————。






意識が覚醒した。


「もう朝か・・・。って朝!?」


目を覚ましたらベッドの上だった。さっきまで学校にいたはず・・・。

もしかして今までの出来事は夢だったのか?


「まぁ夢ならあのへんな出来事も納得いくな」


時計を見るともう職場に行く時間に近づいていた。

いそいで朝食を終え、身支度をし家を出る。


職場までの道のり、学校へ歩いていく女子高生。いつも通りの風景。

何も考えず、ただただぼーっと歩いていく。


・・・・・・いやいつも通りじゃない!なんで女子高生がここを歩いているんだ!!


「おい!おい!いつ気づくんだ」


後ろから声が聞こえる。


「お前はさっきの変な女!おい!どうなってる!」


「私はお前を5月15日に戻しただけだが?」


「そんなわけないだろ!この道にあの制服の女子高生が歩いているのはおかしい!!去年の6月15日に私立暁女学園全生徒は行方不明になっているんだよ!」


そう俺は桐谷キョウヤ。去年の6月15日に全生徒、全教員が行方不明になり誰もいなくなった私立暁女学園の特殊清掃をしている24歳だ。


「だから戻しただけだが、去年の5月15日に。あぁついでにお前は本当に清掃の仕事ということになっている」


「は」


・・・・嘘だろ。戻した?1年前に?そんなことできるわけないのに・・・。

もう一度スマホの時計を見る。確かに去年の5月15日だった。

信じたくないがこれは紛れもない現実みたいだ。


「契約の内容だが、キョウヤ私はお前に託した。あの事件が起きる前に私立暁女学園の生徒を救ってくれ」


「それが私とお前が交わした契約だ」


「はは・・・・・」


笑うしかない。こんなことが本当に現実に起こるだなんて。


・・・・でももしこんな俺でも・・・今まで惰性で生きてきた俺でも


未来を・・・運命を変えられるなら・・・・・。


————————なんて、眩しいことなんだろう。



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