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その日は相変わらずの天気で  作者: うさぎちゃん
3/8

おおたくん

そのまた次の日だった。

その日も教室に花はいなくて、

 席には、新しい花が飾ってあった。

多田という男子生徒が、机の上に飾ってあるのを見ているところだったので、僕は声をかけるか迷った。


率先して罵詈雑言を浴びせていたのは多田だという噂を、耳にしたことがある。


そして、それについては、花は何も語らなかった。

……いや、語れなかったのかもしれない。

いつもつるんでいた長谷(ながたに)が居ないのも、彼らしくなかった。



「おおた、あのさ」

 いつもなら声をかけないタイプだったのに、なぜか僕は声をかけていた。

多田は、決してガタイがいいわけじゃない。


ただ、少し周りの見えないタイプで、例えば体育のバスケか何かで一人がボールを独占するようなシーンになると、そいつをきっちりマークするのが得意というタイプ。

みんなでドッジボールをやると、特定の相手を執拗に追いかけて、ボールをそいつにばかり投げている。


そういう、違反とも言えないが私怨が強く表に出る性格をしていた。


ひとことでいえば、こいつは、ちょっと怖かった。


一度目をつけると、先生が止めに入るまで、執着をやめない。

みんなの前に個人を晒すようなことでも、平気でやってのけたし、女子だからって手加減しない、と、女子にまで執拗にボールをぶつけていた。


握力が強いと自慢していたから、痛そうだったが、その場の誰もがとっさには動けない、そういう気迫を持っていた。


そのくせ、この手のタイプはなぜか先生にはうまく媚びられるから、切り抜けがうまい。


つまり、要領がいい。

今も生徒会長を狙っていた。



「あの、さ」


「なんだよ。何か用か」


僕より少し背の低い彼から、僕より低い声が訝しげに投げられる。


「その席、岸崎のところだよな」


「だから?」


早く会話を終えたいような、イライラした声だった。

「……いや。別に」


何か言いたい。

でも何が言いたいかわからず、もごもごと口を動かす。


屈んで話すと失礼になりそうだったが、背伸びするわけにもいかない距離に、僕は、どうしようかと迷った。

目に映る何もかもに、迷う。




「おおたは、花が好きだったか?」


「……もうすでに逝っちまったもんは、仕方ないだろ」


おおたの答えは、好き嫌いじゃなくて、諦めだった。



「殺すには惜しかったのに」

まあ、いいや、と廊下に出ていくすれ違い様に、多田はそんなことを呟いていた。


惜しいだのなんだの、お前は神かよと苛立ちが募ったけれど何も言わなかった。










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