8話 日常
「妹さん私も探すの手伝うよ?」
そう言うと美亜は立ち上がり理人に手を差し伸べる
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「一緒にさがそ?」
「ね?」
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「わかった。よろしく頼む」
そして理人は美亜の手を受け入れた。
それは理人にとって初めて妹、美香以外に心を許した存在であった。
次の日、美亜は体調が復調したため彼女が着る服や靴を調達するために街に出た。
わかってはいたがかなり治安が悪いというかかなり町全体が錆びついた雰囲気がする。
行政もほとんど機能しておらずしかも電機がいきわたっていないので当然夜は真っ暗。
うちの屋敷でさえ夜はロウソクの火と電池式の明かりが必要。
そういえば非常電源の装置が地下のあの部屋にあったような?あれはいったい?...
「おう!!あんたら那智さんとこのお孫さんだろ?」
見るからに図体のでかい男性が二人に話しかけてきた。
「そうだけどあなたは?」
「俺はこの電化製品を売ってるもんだよ」
そういうと男性は何かの部品を二人に見せる
「多分、後でそういうのは必要になると思うんだけど今はこの子の着るものと履くものが必要なんだどこかにそういった店はしらないかい?」
「そう言った店なら港町の方に言ってみるといいよ、わりとしゃれた店が多いいからね」
そういうと男性は詳しく道を教えてくれた。
治安が悪く見えるが実際に島に住んでいる人たちはそんなに素行は悪くないようだ。
しばらく歩いているととあるお婆さんが
「あらまあ〜あなた達が那智さんとこのお孫さんだね〜これよければもっていきなさい〜」
と言って沢山の果物手渡された。
またしばらくすると気さくな中年の男性が話しかけてきて
「これ持ってきな!はははは!気にすんじゃね!」
自家製の野菜を手渡された
またあるとこに
「うちの店のサンプルだもってきな」
そんなこんなで
「うちの店のパンもっていきな〜」
「ぜぇぜぇはあはあ....なんかいつのまにか荷物が増えてないか」
「だ!大丈夫ですか〜(汗)」
そしてこうなった
どういことだ島中の人からあの人は幕わられているじゃないか。
それに..
「すまねぇ。みんなで美香ちゃんのことは島中探したんだ」
「あの子の身に何が起きたのかは誰もわからない..だけど皆君たちの味方だから...」
美香のこともみんなが良くしてくれたんだな
もっと早くこちらの世界に来ていればもしかしたら.....
......
後悔しても仕方がない。今は出来ることをするしかない。美香を探さなければいけないのは当たり前だが今の俺は美亜を守らなければいけない。前に進むしかないんだ。
美亜に服を買ってあげた。
真っ白なワンピースとスカート。これは本人の希望でかなり気に入ったらしい
さらに気になっていたようなのでシルクハットの帽子を一つ。
更にこの世界は寒冷化が進み毎日が寒い日が続いているためマフラーや耳当てなどを数個購入。
.........
更にすごい荷物になってしまった。
「おう!!さっきの兄ちゃんと嬢ちゃんじゃないか!!て!!おおい!!大丈夫か」
丁度先ほどの店に戻ってきたところに先ほどの男性が話をかけて来た
「このワゴン貸してやるからこいつで荷物運びな!!」
と言って男性は一緒に荷物をワゴンに入れるのを手伝ってくれ。
正直マジで助かった。これほどの大荷物になるとは思わなかった。
「す...すまないまさかこんな事になるとは思わなかったんだ」
「たすかります(ぺこり)
その後二人は借りたワゴンで荷物を屋敷まで運びある程度まとめた後に夕食の準備をし始めた。
もらった食材でシチューを作り二人で晩食にありつく。
電気がないのでやはり不便だ、とくに食事の支度は非常にやりにくい。
水道や火元のガスはちゃんと通っているようだ。
にしてもあの婆さんはどうやってこんなデカくてりっぱな屋敷を手に入れたのだろうか?まさかローンとかかけてないだろうな?
いやそれはないか、あの人は借金と言う物が本当に大嫌いな人だったからな。ローンを組んだことすら一度も無い人だった。ありえない話だ
そう言えば誰かと食事をするのも久しぶりだ、
二人は一つのテーブルで向き合って食べている。
前の世界では理人は美香が亡くなって以降はほとんど食事は一人で食べていた。
一時期、結婚し家庭を持った時は家族と食事をとる時期はあったが一時の時期だけであった。
子供が生まれた後はほとんど毎日が外食で済ませていた。
子供が生まれ妻が変わってしまったのが原因でもあるがやはり彼の心の中には美香という存在が大きかった。彼の心の中に美香という存在が大きかったことで結局のところ彼の心は妻や子では満たされることはなかった。
でも今の理人は違う。美亜という存在は確実に彼の心境を変えつつあった。
「理人さん、ちょっと大切な話があるんですけどいいですか?
「どうしたんだいあらたまって?」
「そろそろ学校行きませんか?」
すっかり忘れていた。そういえば奏花に学校を案内してもらう約束をしていた。
美亜の体調の悪化によりすっかり忘れていた。あれからすでに数日がたっている。
「私も行っても平気ですよね?」
「まぁ~ほとんどの生徒が押しかけ出来ている状況らしいからね問題ないんじゃない?」
「私、学校とかに通うのが憧れだったんです。」
「体調はもう大丈夫かのかい?」
理人が心配するのも無理はない彼女は一時は高熱で寝込んでいた。
そもそも彼女の体はそんなに丈夫ではない無理はさせたくはない。
「友達沢山出来るかな~私いろんな人と話がしたいです!」
美亜は心浮かばせ笑顔ではしゃいでいる。
無理もない前の世界ではあんな酷い仕打ちを受けたんだ。
美亜の好きなようにさせてあげよう。普通に学校に行って友達と遊んでいろんなことを話したり、たくさんの事を学ぶ。これは当然の権利だ。人間とかガーボンヒューマンとか関係ない。
理人はこの時こう思った。
美亜と美香、二人とも「俺が守る」と言える男になってやると。
彼はこの時、心から誓ったのであった。