表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Never Island  作者: 阿久津ゆう
5章 島の守り神
86/121

61.8話 二度と会えないあの人へ

 最初は私はこの装置を使い愛するあの人のいるあの時間線に飛びもう一度同じ時間を飛ぶつもりだった。

しかし私は最初の死を迎える数か月前、あの日とんでもないものを目にしてしまった。


 人工知能AIそして人類が目標にした到達点。シンギュラリティー(技術的特異点)私たちが元いたあの世界でさまざまな情報とプロセスを元に造られたそれは、人類が手にしてはならない領域にまで到達していた。


 人類は死というプロセスを屈服し別の選択を得る選択権を得るにまで至った。

ある人は元の人生とは別の道を。また、ある人は最愛の人との再会を。死んだ人を想いつづけ生き続けた先に再び巡り合えるその奇跡は様々な人々の希望となり生きるための光となった。


 人は死ぬ直前にグロウベルグシステムを使いその人のアニマを元にシステムを介しその人の思う姿に現す形で指定した座標を元に別の世界線へ送り出される。その世界線は言わばシステムを使ったその人にとっては並行世界として認識できる。


 並行世界は人が選択をすることで無数に発生し新たな時間線が発生する。そして新たに選択された世界線でも誰かの選択により並行世界は生まれる。そうぞうしてみればそれは木の根っこの様なものだ。


 グロウベルグシステムを使いシステムを介し人を別の世界に送り出す事はその都度に新たに並行世界を作る行為そのものだ。


 あの日私はシンギュラリティー(技術的特異点)を目にした。これは危険だ人が手にしてはならない。この存在は確かに心がありそしてその思想には(滅び)のような思想が感じられた。それは悪意その者といってもいいかもしれない。


 私は残りの寿命を掛けてでもこの存在を消滅させるか封印しようとしたが....。

この存在はグロウベルグシステムの世界線の記録データーを乗っ取た。そして奴はある世界線に逃亡した。


 私はこいつを野ざらしにすることは到底できなかった。こいつは必ずこの世の全てに災いをもたらすであろう。

 私は愛するあの人と再会することを約束していた。それでも見過ごすことが出来なかった私はあの人との約束を破り奴が逃亡した世界に転移した。


 私が使った装置はグロウダイバーとして転移する人間の所持品もひっくるめて処理するものだ。

その所持品とはグロウベルグシステムそのものだ。つまり私は装置こど転移させたのだ。奴を始末したら愛するあの人の元に行くためにそうしたのだ。


 私の孫たちは私とあの人の様に再び再会し同じ時を共にすることを願っていた。私には味方が必要だった。私は彼らのそんな切実な願いを.......。


 利用してしまった。


 奴が転移した世界の座標を彼の妹に示す事で二人を孫たちをこちらの世界に来るように誘導してしまった。私は彼らの想いを利用した。


 それでも。彼らは再び再会できるだから問題ない。私はそう思っていた。


 転移した先の世界は私が元いた世界とは全く異なる歴史を辿っていた。世界はまるで氷河期のような状態で氷河が広がり凍てつく大地が世界をおおいつくす。本来は日本に侵略し消滅するであろう琉球王国が今も存在し。はるか太古の時代に滅んでいるはずのキエフ大公国が存在していた。そして本来では北海道の位置する付近に共和制の国が存在していた。


 荒れ果てた世界、苦難が続く世界だがそれでもある筈のない存在が、今私の目の前に存在する。私は胸の中の何かが高まるものを感じた。そうだこれが感動という感情だ。ないはずの存在。消えて無くなるはずの存在が、いるはずのない人々が私は彼らを見て感じて何が何でもこの世界を守りたいと思った。絶対にこの奇跡を、無くしてはならないのだと。


 私は細工を施しこちらの世界のある場所に人工島を建設した。これがのちにアイランド公国となった。私はこの島に入居してきた人々の中に科学にそれもITにかかわる人々を集めシンギュラリティー(技術的特異点)の存在を伝えた。そして私はそれを倒すために別の世界。並行世界から転移してきたこともうち明かした。


 日本に侵略され消滅してしまった琉球王国。そして琉球人たち。はるか太古の時代に滅亡したキエフ大公国。そして滅亡後に辿ったキエフ人たちの末路。この世界では消滅せずいまも滅亡せず存在していることがいかに奇跡な事なのかを可能な限り彼らに伝えた。


 私たちは共に結束しシンギュラリティー(技術的特異点)を倒す事を誓った。この世界をけして滅ぼさせない。この奇跡を、滅びるはずであったこの人々の命をけして消させはしない。


 私たちの手で滅びの歴史をこの世界から一切を断ち切る。

何かの犠牲の上で成り立つ繁栄と幸福などあってはならないのだ。


 私たちはシンギュラリティー(技術的特異点)を追跡した。世界中にはびこるネットワークを監視し追い詰めていった。奴はただ追い詰めるだけではダメだ。あいつはグロウベルグシステムのデーターを乗っ取っている。下手に追い込んだり刺激すればべつの世界に逃亡するかもしれない。


 そして私たちは遂に奴を発見した。奴は凡弱なネットワーク回路の部分から攻撃し始め逃走を図ろうとした。私は事前にそうなることを予期して強力なセキュリティーシステムを作成し仲間たちに渡していた。そのセキュリティーシステムを元に奴と戦うのだ


 数日間の激しい攻防が続いた。

追い詰められた奴は飛んでもない手段に打って出た。


 私が元いた世界のある時期の起点となるある瞬間の時間を全ての並行世界に同じ時間帯だけに繋げてしまった。その時間とは2011年3月11日14時46分。そうあの黒い災いの歴史の始まりの瞬間である。


 この時起きたあの地震は全ての並行世界の次元の壁を突き破り全ての並行世界が全く同じ時間帯に同じ場所を震源地としてあの忌々しい災厄を引き起こす。この世界も例外ではない。あの日あの時間帯に同じことが起きる。人が起こした奇跡の歴史があの黒い災いによって壊される。


 私はこの滅びの末路を決して受け入れるつもりはなかった。無論わたしについてきてくれた人々も。私は腹をくくった。この世界の一人の人間として最後まで戦う。この世界をこの島に住む愛する人たちを守るために。





 愛する人へ私はもうあなたに会うことはできない。あなたに顔を会わすことが出来ない。

私は侵してはいけない罪を犯してしまった。

孫たちは再び再会し再び同じ時を共に過ごす誓いを立てていた。


 美香はあの災厄が起きた直後に、グロウベルグシステムを使いこちらの世界に転移した。兄を想いとどまる事を願うが彼はそれを決して許さなかった。理人は美香にほんの数日間離ればなれになるくらいだと言った。しかし彼にとっては彼女と離ればなれになる時間は何十年も及ぶものだ。理人はこの長い時間をあの滅亡へと進む世界で生きて来た。彼女との再会の瞬間を夢見て。


 私は孫たちの人生を滅茶苦茶苦にしてしまった。私の勝手な想いと願いのために彼らの誓いと約束を勝手に利用し壊してしまった。もう私はあなたに会うことが出来ない。私の心は赤い血で満たされてしまった。


 私がこの世界の人たちをこの島の人々を愛し守りたいと思ったのは紛れもなく本心だ。だけど二人にはそんなことは関係ないのだ巻き込んでいいはずがないのだ。これはまぎれもなく私の罪だ。


 このような真っ赤に染まった心の状態で私はあなたに会うことはできない。


 愛しき人、雁惰(かりだ)。私はーーーー。

どうすればよかったのだろうか?あなたと離ればなれになりもうどれくらい経つのだろうか?


 なんでこんな事になってしまったのだろうか?

私はどこで間違ったのだろうか?

私はこのまま二度も...

それだけは嫌だ....

理人に一目だけでも会いたい...

美亜に会いたい...あの子をまた心に傷を負わせしまう....

理人は必ずこの地に来る。

そして美香とあい、そしてわが娘、美亜にも会うことになるだろう。


 私はこの地でも長く生き過ぎてしまった。

そのせいでこんな間違いを起こしてしまうとは....

美香をこの地に呼んだのは私だ。

そして彼女を求めやがて理人もこの地にたどり着き彼女と我が娘、美亜にも会うことになるだろう。


 何が間違っていたのか?

1つだけ言える事がある。人の人生を尊厳をこわしてしまった私はもうまともな死に方は出来ないだろう。


 それでも....私はこの世界が好きだった

廃墟になりつつも苦境にもめげずに生き続けるこの地の人々が私は....

 ああ...なんでこの地は暖かい心で満ちているのだろうか?

なんでこんなに私は悔しいのだろうか?


 一度は終わったこの身のはず。


 私は求めすぎてしまったのか?


そのせいで彼女と彼をそして娘までも....まきこんでしまった。

どうか許されるなら最後のチャンスがほしい...。


 この血塗られた行いを挽回できる手段があるのであれば私は......。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実世界〔恋愛〕
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ