6話 美亜の心
私は....いや...俺は彼女のその言葉が理解できなかった。
しかし美亜は嘘を言うような子ではない。それだけはわかる。
「聞かせてほしい、君の話を」
理人は何となくだが彼女の美亜の心に傷がついている。そんな気がした。
そしてどんな話の内容であろうと美亜の心を守ろうと思った。彼女も元は自分がいた同じ世界にいたことなどもはや関係なかった。
「私は理人さんの言う通り、ガーボンヒューマン。人の手で作られました。」
「そして前の世界では私は生活支援用のガーボンヒューマンとして作られました。」
「でも私は製作段階から何だかしらの不備が起きて欠陥状態で育ってしまったんです」
なんてことだ....ということは今の美亜の体調不良は...それが原因なのか?
「つまり今の君のその体調不良などはコールドスリープの後遺症だけではないと?」
「多分しばらくすれば普通に歩けるようにはなると思うんですが激しい運動はちょっと無理かもです」
美亜の説明によると、彼女は廃棄処分が決定されていたが彼女の臓器などには問題が無かったため次のガーボンヒューマンの作成のために生かすため彼女の体から臓器を摘出するためにどこかの病院に移送された。
しかしそれは彼女にとって死刑宣告だ。美亜は死にたくなかった生きたかった。そして美亜は病弱で貧弱な体をひきずって逃亡、当然彼女を捕まえるため追手が彼女を探しだしたらしい。その後、美亜はどこかの病室に逃げ込んだのだが、その場所にはあの例の装置が、人の意識を電脳世界にダイブさせた後にほかのどこかの世界に送り込むための装置が設置されてあったという。
.....
追手が彼女に迫っていた。
美亜は生きたかった。
部屋のドアは美亜が事前に鍵を閉めたらしく追手がけたたましくドアを蹴っ飛ばし無理やり開けようとしている
このまま彼らにつかまれば私はこれで終わりだ。
生きたい、死にたくない。
もうこれしか方法はない。
でも私は人間ではない。
この装置は人の手で人工的に作られた私でもちゃんと作用するのか?
このまま死ぬくらいなら何もしないよりましだ。
勝手に私を作って失敗作だから処分される。私は彼らに都合の良い部品のように扱われ処分される。
そんなの嫌、まっぴらごめん。だったら私も勝手にする。あの人たちの理由なんて私には関係ない。
美亜はその重い体を引きずり無理やり装置に入り起動させ電脳世界にダイブした。
私は生きる、生きて自由を手にする。
そして美亜はこの世界にわたってきた。
しかし彼女には生きるすべがなかった。
どうすればいいのかもわからなかった。
島の街のスラム街のような場所で美亜は座りたたずんでいた。
お腹がすいた。
喉も乾いた。
食べるものもない。
誰も助けてくれない。
視界がぼけて見えるもう限界だ。
. ............
雨が降り注ぐその日、ある老婆が彼女を目にし話しかける。
「何だいあんたもしかして......、」
「あんたこの世界のもんじゃないね」
美亜は老婆の話は聞こえるが返答することができなかった。
返答する気力が無かった。
「そんな死んだような眼をするんじゃないよ」
そう言い老婆は美亜に手を差し伸べた。
...........
.....
「それが私とお婆ちゃんの出会いです」
なんというか本当にひどい話だ。
勝手すぎる。
むごすぎる
この子にも心がある。
「そして私は数年間お婆ちゃんとこの場所で暮らしました。」
「なんでコールドスリープ処理などされたんだい?」
美亜は首を横にふりわからないという。
どういう事だ?彼女をコールドスリープ処理をしなければいけない何かが俺や美香がいなかった時期に起きたのだろうか?
次の日、俺は彼女に使われていたコールドスリープ装置を詳しく調べてみた。
何でもいいので手掛かりが欲しかったからだ。
接続されていたパソコンを操作しデーターを回覧してみるといくつかのシステムを発見した。
「ヒーリングモニタリーシステム」
「モニタリースキャンシステム」」
「メディカルスキャンシステム」
「こ...これは....」
間違いない医療用回復システムだ。しかも人間とガーボンヒューマンの両方に使用できるかなり高度なものだ。
メーカーの名前が消されているどこで作られたのかは完全に謎だ。
理人は嫌な予感がした...
美亜に使われていたコールドスリープ装置に医療用回復システムが一体型としてついていた。
......
まさか!!!!
美亜!!!!!!!