48話 一人ぼっちの神様
やあ....母さん久しぶりだな随分と顔を出せないで悪かったな
隆太は墓石に向けて話しかけている。
この墓石は彼の母親のお墓だ。
隆太の母親は彼が幼い時期に行方不明となりいまもその消息は謎のままである。
彼女は日本本土がどうなっているのか探索するための隊の観測隊、旅団の一員だった。
寒冷化が進みそのほとんどが雪や吹雪が世界中を襲う状態なため海は完全に凍り付いた氷河となっているため徒歩での大陸横断が可能なのである。
彼女はこのアイランド島から氷河を渡り日本本土の地に上陸し現在どのような状態にあるのかを観測をする任務に就いていた。
あと一歩で日本の地にたどり着くというところで彼女の隊の運用車は運悪くブリザードに直撃してしまっう。
「もう少しで日本の地に上陸できる」
彼女から来たこの無線の会話を最後にまったく連絡が来なくなってしまった。彼女の生存は絶望的だと行政から判断された。
「母さんすまなかったな今までほったらかしにしてしまって」
隆太は墓石に水をかけて布で丁寧に磨いていく。
「また.....すぐに天候は荒れはじめる。またしばらくは顔を出せなくなるだろう。ごめんよ年々この寒波はひどくなる一方なんだ」
隆太はお墓の前に一輪の花を供えた。
「ごめんもういくよ」
そういうと隆太はゆっくりと歩き出す。
墓地から出ようとした彼はなにか違和感を感じた。
何かがおかしい。誰かの息づかいというか苦しそうなかすむような声が「ぜえぜえ」という声がかすかに聞こえるのだ。
隆太は雪に埋もれた祠に注目した
この社の中から微かにだが息を切らすような声が聞こえる。
ばさ!!どさ!!!!雪を蹴っ飛ばしどかしていくと雪に埋もれた祠の扉が目の前に現れた。
息を切らすような声ははっきりと聞こえ隆太は慌てて雪事祠の扉を蹴っ飛ばす。
社の中には真っ白な狐が横たわっていた。
どうみても狐だしかしこんな真っ白な狐見たことがない。そもそもこんなところに社があった事すら知らなかった。
精気を感じずぐったりしている。
「............おい、食うか?」
隆太はリュックサックに入れておいたレーションを差し出す。狐はがっつきながらそれを食べだした。
「お前あんな吹雪の中良く生き延びられたな」
レーションを食べる狐の頭を撫でる隆太
...............どうする?こいつをこのままここにおいて帰っていいのか?
「.....................」
レーションを食べ終えた狐はそのまま横になって眠りについてしまった
よく見たら真っ白な毛並みの中に普通な狐独特な色の毛が混ざっている。
こんなに真っ白なのは衰弱しているからか?
はぁ...........仕方ないか
隆太は真っ白な狐を背負って歩き出した。
わりと小柄なためそんなに重くは感じない寧ろ軽いとさえ思える
「zzzzzzz~」
いい性格してやがるこんな状態で熟睡しているとは
-----隆太&理緒停-----
やれやれやっと帰ってこれた。天候は晴れているとはいえ雪がかなり積もっている普通に歩くだけでもかなりきつい。そんな中こいつを背負って帰って来たんだもうくたくただ。
「ヤッホーおかえりー」
家にはいると理緒がげんきに出迎えてきた。
さてと、こいつにはどう説明するかな。「これからこいつをペットにするぞ。」いやないなこれは。
「新しい家族だ。」いやないだろそれは。
「どったの?この子」
理緒は物珍しいそうに真っ白な狐を見つめる。
隆太は母親の墓参りの最中に母親の墓石の近くに雪に埋もれた祠があってその中にぐったりしていたこの真っ白な狐を見つけたことを説明する。
あ、最初から普通にそう言えばよかったんだ
「..........」
狐は静かに目開けると隆太と理緒を見つめる
「おッス!私は理緒、でこっちは隆太っち。で、ここは私たちの家。」
「お前あのままじゃ野垂死ぬとこだったんだぜ俺がお前を見つけられたのは運が良かったんだぜ」
「............」
狐は目を開いたままぐったりと横たわったままジッとしている。
相当衰弱しているようだ。
「すまねぇお前に食えそうなものはこれくらいしか今は無いんだ許してくれ」
そういうと隆太は自分の膝の上に狐を寝かせ先ほども食べさせたレーションを口元に差し出す。するといきおいよくガツガツと食べだす。
「理緒、水もってこい」
隆太は狐に少しつ水を口元に滴らせながら飲ましていく。
「隆太ッちマジで優しいねイヒヒヒヒ!」
「うるせぇよ」
理緒にこんな事いわれたが自分でも何でこいつにこんなに優しくするのかわからなかった。たぶん母親の墓参りの後での傷心が原因ではないだろうか?自分ではこのときそう思っていた。
「.........」
狐は涙を流しているように見えた。
「ぁぁ、別に気にしなくていい。おまえが良ければずっとここにいてもいいぜ」
「.....!!...」
「無理に鳴かなくていい」
隆太はそっと頭を撫でる
何でだろうか?俺はこいつをほってはおけなかった。
何故だろうか?こいつの顔を初めて見た時、俺がこいつを助けるのは運命みたいなものを感じだ。
「ほれお食べなさいな」
理緒は即席ながらカボチャで作ったスープを飲ませてあげた。レーションよりは絶対マシだ
夜も更けそろそろ床に就く時間である
「私が隆太ッちの左で寝て、狐っちは隆太ッちの右で寝るんだぞ」
「.....きゅ」
「おお鳴いたぞ」
理緒は狐の頭をわしゃわしゃと撫でる
「明日はお前の名前をきめてあげるからな!」
「おい!電気消すぞ」
部屋の電気を消して二人と一匹は床に就く
「こうしていると本当に家族みたいだな!」
「はしゃいでないでいい加減ねろや」
「きゅぅぅん」
......................................
...................
......................
----AM2時ごろ---
んん~なんだこれ凄くいい寝心地いい....なんだか暖かくて柔らかいぞ
隆太はだんだん意識がはっきりしてくる。そしてこれは夢ではないと少しずつ自覚していく
どういう事だ今俺が布団の中で抱きしめているやつは誰だ?俺の隣(左)ではたしかに理緒が寝ているてことは狐か?しかしこの感触は動物ではなく明らかに人だ。
恐る恐る隆太は自分の胸の中にいる存在を確認しようとする。
------そして。
「やっといまのわらわを見てくれたのじゃ」
「え?」
「この姿をちゃんと見せないといけないじゃろ?」
「はぁ?」
「この姿がわらわのもう一つの真の姿じゃ」