5話 月の光
ヒロインの初登場回です
「こんにちは」
少女は理人を見つめそう言うとにっこりと笑い笑顔を見せると立ち上がろうとする。
「ほ!ほわ!」
しかし、立ち上がろうとした瞬間、力なく崩れ落ちるように倒れそうになるが、理人が受け止める
「大丈夫かい?」
理人はそう言うと少女を近くに置いてあるイスに座らせる。
少女は装置の中で眠っていた時以上に小さく見え、更にかよわい少女に見えた。
見た目は10歳ぐらいの少女に見える。
どうやら制作段階の初期のころにコールドスリープ処理されたのだろうか?
「君はいったい....いつから、ここに眠っていたんだい?」
「わからない、ここ何処?お婆ちゃんはどこ?お兄ちゃん誰?」
そう言うと少女はまわりをキョロキョロと見わたす。
そして少女は再び理人を見つめながら問いかける。
「お兄ちゃんもしかして理人さん?」
「え?なんで俺の名前を」
「お婆ちゃんがいってた!私が起きた時には理人さんと美香さんがいるって!」
「美香の事をしっているのか!!!!」
理人は思わず少女の肩をつかみおもいっきりおしてしまう。
少女は理人と奏花にいろいろと説明し始める。
少女は5年前まで理人の祖母、那智と暮らしていたが。いつどの頃にコールドスリープ処理を施されたのはわからないとの事。また自分と暮らしていたころにはまだ美香は屋敷にはいなかったとせつめいされた。
なるほど何となくわかってきた。婆ちゃんがこの世界に来たのは5年以上前、そして何だかしらの理由によりこのガーボンヒューマンの少女を保護して一緒に暮らしていた。そして今から五年前にこの少女をコールドスリープ処理を施した。美香がこの世界に来たのはそのあと。奏花の話によると美香と知り合ったのは4年前。建前上は本土から引っ越してきたことにされているようだ。どうやら自分は飛んできた時期が数年単位でズレてしまっていたようだ。
「君の名前は?なんて言うんだい?」
「美亜ていうの!!お婆ちゃんがつけてくれたの!」
「鏡光花の片割れの名前か、君もあの人の孫なのかい?」
「私のお婆ちゃんはお婆ちゃんだけですよ」
そう言うと美亜は再び理人に笑顔を見せた。
鏡光花その花は理人が元いた世界では非常に希少な花である。
この花は二つの姿と名前がある。
一つは日中、太陽の光をあびて咲いている状態を、美香花
二つ目は夜間、月の光を浴び咲いている状態を、美亜花
どうやら婆ちゃんはこの少女に美亜という名前を付けることで美香の名前にも意味合いを付けたようだ。
二人とも隔たりもなく婆ちゃんに愛されていたようだがならなぜこの子はコールドスリープ処理を施したのだろうか?謎は深まるばかりである。それに美香は?あいつは本当にどこに行ってしまったのだろうか?
美亜は首から太ももまで覆った状態の真っ白な布で出来た服を一枚来た状態で寝かされていた。
さすがにこれではまずいと思った俺は美香の部屋から服を借り美亜に来させた。
言うまでもないがやはりサイズが合わない。しかし今は我慢してもらわないと困る。
その後、美亜の提案で彼女の自室まで案内された。
年頃の少女らしい部屋だった。
美亜の話によれば部屋は5年前、彼女が眠りに付く前と全く同じ。そのままの状態だったらしい。
理人と奏花は美亜を自室で休ませることにした。
コールドスリープ処理による冬眠状態から覚めたばかりでまだ、まともに動けるどころかまともに歩くことすら困難な状態だったからだ。
二人は屋敷から出て再び庭の場所に移動し今後の事もかねて話し合う。
美香の事、美亜の事を、そして理人はこれからどうするのかを
「これから理人君はここに住むんだよね?」
「少なくとも俺はそのつもりだよ、それに婆ちゃんもそのつもりで準備していたようだし」
「それに....」
理人は屋敷を見上げるそして何かを決意した表情を奏花みせる
「あの子を、美亜をこの屋敷で一人にするわけはいかなだろ?」
そういうと再び理人は屋敷再び見下ろす
「もしよければ私たちの通う学校にこないかな?」
「俺は少なくともちゃんと学校には通うつもりだ。」
「いろいろと問題があってこの島に来たがどんな場所であれちゃんと学校には通うつもりだ」
「本当に?先生とかいないし生徒のほとんどが押しかけだけど、本当にきてくれるの?」
「ああ、だからこんど案内してほしいその学校に」
理人はその後、屋敷内で一つの部屋を自分の部屋に決め、人通りの生活に必要なものを街で買い揃えた後に部屋に一通り荷物をまとめた。
奏花が晩食を作ってくれた。近所のよしみだといってくれたことには本当に感謝しかなかった。それに晩食を食べた時はものすごく心が温かかった。
美亜はあの後はベットで横になっていた。まだ体調は不完全でまともに立てない状態だからだ。
奏花に作ってもらったスープを美亜に飲ませたが問題なく食べることは出来そうである。
というより体調がまだよくない割に食欲だけはあるようでスープ大皿四杯分は丸々平らげてしまった。
「ふぁ~もうおなかいっぱいです」
「まさかこんなに食べるとは...」
ほほにスープの残りかすをつけ満足そうに笑う美亜。
理人は彼女の笑顔を見ているとなぜかすごく心が温かくなるというか安心する気持ちがした。
それになぜか懐かしい気持ちがした。美亜と出会ったのはまだ半日しか出会っていないのになぜこんな気持ちになるのかわからなかった。
理人は彼女の頭に手をのせ優しくなでた。
「ふえ...」
美亜は撫でられた瞬間恥ずかしそうに声を出し目をつぶりそのまま理人の胸の中に...
理人はなぜかよくわからないがそのまま美亜を受け入れてしまい抱きしめてしまった。
彼女の存在がすごく暖かく感じた。
「すまないもしかしたらもう少し早く君を起こす事ができたかもしれない」
理人はそのまま彼女を強く抱きしめ彼女の存在を強く認識する。
「俺はずっと一人だった。だからこの辛さだけはわかる」
「ひょっとしたら君は起きたとき一人ぼっちで路上をさまよっていたかもしれない」
「俺は婆ちゃんの代わりにはなれないけど絶対に君を見捨てたりはしない」
美亜は理人の話を聞くとやさしく彼の手をにぎる
「君に言ってもわからないと思うけど俺はこの世界の人間ではない」
「別の世界から来たんだ」
美亜は優しく微笑みながこう告げた
「ちゃんと信じるから話を聞かせてください」
理人は彼女の笑みを見るとこれまでの事を淡々と説明する。
前の世界での事、前の人生を、そしてその終わりを、どうやってこの世界に来たのかを、淡々と彼女に話した。他の人に話せなくても彼女だけには嘘をつきたくなかった。彼女もまたあの人の、祖母の孫なのだから。
「 話してくれてありがとう」
「大丈夫、私ちゃんと信じますよ」
美亜は再び理人の手を握り彼に笑顔を見せた。
「大丈夫、私はあなたをちゃんと信じるよ」
「あなたの心がちゃんと感じれるから」
彼女のその言葉を聞き理人は安堵した。
「理人さん、今度は私の話を聞いてくれますか」
そういうと美亜はベットから立ち上がり理人を見つめる
「ああ、今度は俺が君の話を聞く。君の話を全て信じると約束するよ」
そういうと今度は理人が美亜を見つめ笑顔を見せた。
「実はいうと私もあの世界から飛んできたの」