43.5話 観測者
私は、決めた。彼らと共に美香ちゃんのいる世界に行く事を。
それが今の自分の「死」を意味する事だとしても。
彼女の尊厳を破る行為をしたことに本人に直接謝罪をしたいと言う気持ちもあるがそれだけでなくにより彼女のその心情に触れたことで友達になりたいと言う気持ちが芽生えたこと。
そして.....自分の母親があの計画に関わっておりその責任者である阿久津那智が美香がいるあの世界にいることは間違いわなく。そして母の死に何かしら関わりがある。
しかしあちらの世界に行くためには問題が山済みである3人分のグロベルクシステムの装置の入手である。
通常の装置なら問題ないのだが。グロウダイバーとして転移する人間の所持品もひっくるめて処理する装置は非常に高価なものである入手は困難である。
「さてどうする....」
「言っとくが俺はそこまで貯金はないぜ」
「......私の母さんが残していった遺産金をつかっても一人分にも満たないわ....なんせ一つの装置で5000万はかかるもの」
「ミィルたしか君の同僚にグロウベルグシステムの観測者がいたはずだ」
甘夏目のいう観測者とはグロウベルグシステムの管理とグロウダイバーたちが関わったことで新たにひろがっていく並行世界を管理観測する人間の事である。
「理唖に頼むって言うの?あの装置を使う事はまぎれもなく死を意味するのよ?さすがに彼女に頼むのは無理があるわ。」
ミィルにとって理唖という女性は家族同然の存在である。
理唖はミィルの母親の友人であり元同僚でもある彼女が亡くなった後ミィルの身元引受人として保護し共に生活をしさらに研究者としての支援もしていた。
幼くして母親を亡くしたミィルにとってはもう一人の母親であり仕事上での同僚であり良き理解者でもあった
「これから私たちのする行為はひととして自殺に等しい行為。それの手助けをしろなどと口が裂けても言えないわ」
「ミィル、そう言うがあの人に黙って行くつもりかい?」
甘夏目のいう事はもっともである。どのみち彼女には話さなければならない。
「なぁ、こういう考え方はどうだどうせなら味方は多いいほうが良いだろ?おまえが彼女に話して味方につけるんだ。どのみち彼女に話す事は避けて通れないんだぜ」
「新田の言うとおりだと思う私たちには少しでも味方が必要だ。なんだったら彼女も一緒についてきてもらえばいい観測者がいる事はこちらとしては本当に心強い」
ミィルは二人の話には乗り気にはなれなかった。
しかし今の自分たちには助けを求めるにも当てがないのだ。
「理唖はいまどこにいるんだ?」
「みなとみらい市にある時間観測テクノロジーセンターに勤務しているはずだわ」
ミィルは渋々ながら二人の提案に承諾し理唖と連絡を取ろうとするが...
「ここ数日連絡なしの当欠だと?どういうことだ?」
「理唖さんのスマホに直接連絡してみたらどうだ?」
ミィルは甘夏目の言うとおり彼女のスマホに電話をするが.....
現在おかけになった電話は現在電波が届かないか電源が入っていないため連絡できません。
「嫌な予感がするな.....」
「GPSの機能を使って居場所を特定してみてはどうだ?」
何か嫌な予感がする甘夏目は直観というか雰囲気というかとにかくやばい気がした。
「ミィル彼女と最後に会ったのはいつ頃だ?」
「理人君と美香ちゃんの自宅に行ったその日に会ったのが最後。その後から数日はオフィスで作業しっぱなしだったから....」
「その日何か変わった会話とかしなかったか?」
「理人君と美香ちゃんの.........話を.......彼女の尊厳を破る行為を...してしまったことを....」
「ちっ..........この馬鹿ッ!!!」
「....これは感づかれたな」
「ミィルの分の装置を含めて援助してくれという話をされることを予期して姿を隠しやがったな」
「さすがに話すタイミングが悪かったね。これは予想外の展開だよ」
「どうする?無理やり見つけ出しても聞く耳は持たないと思うぜ?」
「探し出して...話がしたい理唖と.....どうしても話さないといけない....私は避けては通れないから」
ミィルの決心は固かった。
母の死の真相。那智が一体何をしようとしているのか。そしてあの計画の全貌。
自分には知る権利がある。そして人としてこれはなにかしら避けられない運命みたいなものを感じたからだ。
理唖と話説得する。
今の自分たちにはその道しかない。
「新田、軍のGPS機能を使って理唖を居場所を突き止めるわ」
「わかった。俺のPCからならすぐ出来るはずだ。とっとと取り掛かるぞ」
理唖の居場所はあっけなく特定できた。場所は......
彼女のプライベートオフィスだった。
場所は山梨県の道志村の山の中。
三人はすくさま車を走らせ目的の場所まで直行する
目的の場所はかなりの山奥の場所のようだ。目的の場所についた時には既に日が落ちあたりは真っ暗な状態となっていた。
小さなさびれた村の集落のはずれ付近に見た目が新しく周りの寂れた建物とは全く似つかわしくない建物が........目的の場所はここだ。
建物には明かりがついていないが電機は通っていた。
三人は建物の中をてわけして探索。
新田が理唖のスマホを発見した。さらに甘夏目が机に一つの紙切れを発見しそれを目にする。
その用紙には.......
「そんな馬鹿な.....」
見間違えるはずがなかった。その用紙に書いてあった文字は理人たちが転移した先の座標である。
しかし転移先の日付までは書いては無かった。
一方ミィルはオフィスの地下室でグロウベルグシステムの装置を発見。なんと4体もおいてあった。しかもその装置はお目当ての人間の所持品もひっくるめて処理する装置であった。
なぜ彼女がこんなものを?そう思いながらミィルは装置の中に目をする........と、ミィルはとんでもない光景を目のあたりにする?
ミィルはその場で腰を抜かし倒れこむとそのまま嘔吐してしまう。
そんなバカななんで装置の中に理唖が.........
ミィルはすぐさま装置の中の彼女を確認する。
理唖はすでにこと切れており別の並行世界に意識が転移した後であった。
「おい!!!大変だこの紙切れ!!!」
甘夏目がミィルに慌てて駆け寄って来るが.......
すぐにその異様な光景は甘夏目にも目に入る事となる
「ど...どういう事だ......」
甘夏目は一瞬でとんでもないことに気づいた。
用紙に書いてあったものは間違いなく理人と美香が転移した先の座標だつまり....
でもなぜだ何のために彼女が.....
三人は一旦今現在の現状のを整理することとした。
机には用紙がおいてあった。その用紙に書いてあった文字は理人と美香がいるはずの世界の座標が書き示されてあった。
地下にはグロウベルグシステムの装置が4体おいてあり、それは自分たちが必要としていたものであった。その四体のうち一体は使用済みとなっておりその中には........
なぜ....彼女が。
意味が分からない.........
なぜ理唖が...彼女が........
そして理唖の転移先は...........
「間違いない今装置の履歴を調べたが紛れもなく指定された座標は二人がいるであろうあの世界だ」
なぜ........いったい何が起きている
謎は深まり私たちにとっての物語の展開は新たな局面に移ることとなる......
それは紛れもなく真実に向かって進んでいる。