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Never Island  作者: 阿久津ゆう
4章 偽りの時間とホムンクルス
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43話 退かぬ心

 ふざけるなふざけるなふざけな!!!

何で二人がこんな目に合わなければならないの!!


 彼女は生きる意思を無くしてしまった。

茫然自失となりただ目的もなく街を徘徊する毎日を送っていた。

そして彼女はいつの間にかホームレスのような状態になっていた。


 夫と娘と過ごした記憶と思い出だけが彼女の拠り所であった。


凍てつく吹雪が彼女を襲う。


 ああ....やっとこれで死ねる二人に会える。


 「何だいあんたまるでもうすぐ死ぬような面っぷりだね」

虫の息の状態のミディールの前に一人の老婆が現れ彼女に手を差し伸べる。


 「なんて顔しているんだい


(.................)


私は声を出すことが出来なかった


 「歩く力は残っているかい?」

(...............................)


 「そうかいなら連れの者に頼んで運ぶとしようか」

そういうと老婆は彼女の両手を包み込むように握りしめささやく


 「私の名は阿久津那智(あくつなち)この島の統治者にしてひとりの研究者。皆は賢者とよんでいるようだがね」


(.....................!)

ミディールはとめどなく涙があふれる

 

 「どうしてそこまで追い詰められたかはわからないが私でよければ力になろう。」

私は彼女の差し伸べた手を掴んだ。

そして私は彼女の元で様々な事を学び研究者の道に進んだ

 

 彼女の元で私は人としての禁断の領域。死んだ人間をよみがえらせる装置を-------。

完成まであと一歩のところまで来ていた。


 「なぜなの?.....あと少しなのに形成された身体が一定の時間が経つと細胞が崩壊していく。」


 「これでは駄目だねたとえ身体がちゃんと出来上がっても望んだ人間の記憶を入れただけの人形だよ」

「それでもあんたは研究者としては成功したも当然だよ」


 「これのどこが成功だと言うの?私は何のためにここまでやって来たと思っているの?夫と娘を取り戻すために...私は....」


 「いいかい良くお聞きミディール、あんたは家族を生きらせようと研究と実験を積み重ねていった結果とんでもない領域に知らず知らずに手を出しそれを掴んでしまったのだよ。

「あんたは失敗どころか成功以上の成果をなしどけたのだよいいかい良くお聞き。あんたが踏み込んだ領域中世時代のヨーロッパで盛んに扱われていたロストテクノロジーの技術[ホムンクルス]の生体の作成に成功してしまったのだよ


 かつて中世時代のヨーロッパでは錬金術という魔術に似たような技術ががあった。

その錬金術の中に疑似生命体「ホムンクルス」を作る術があったという。

 「たとえあの失われた秘術でも肉体を維持できたのはほんのひと時だけ。ちゃんと細胞を維持できたことは一度もなかったという」


 那智は続けてミディールに説明していく


 「いいかい?良くお聞き錬金術は現在では失われた技術「ロストテクノロージー」だ錬金術という技術は現代では失われホムンクルスの作成も不可能となった。しかしあんたは現代の科学とテクノロジーを駆使して錬金術を再現しホムンクルスの作成に成功したのだよ」

 「家族にもう一度会いたいと言うその想いの力によってあんたは失われた秘術を現代の科学とテクノロジーで完全に再現してしまったのだよわかるかい?」


 「それでも.....だめ私にとっては失敗だわ」

落胆するミディールだが。


 「....ふむ...あんたにあわせたい子がいるついて来なさい」

那智はミディールに屋敷まで案内し一人の少女を紹介する

 

 「この子は最近私の養子にした美亜じゃよ」

少女は傷だらけの状態で回復処置をほどこす装置に入れられていた。


 そしてこの時ミディールは那智から様々な事を説明された。

那智は別の歴史を辿った未来からこの世界に転移してきた事。

そして今、装置の中で眠っている少女、美亜もまた自分と同じ世界から転移してきた事。

美亜は人の手で人工的に作られた存在「ガーボンヒューマン」である事を


 「その技術を使えばミィルを...」


 「それは無理だねホムンクルスの作成とガーボンヒューマンの作成は技術的に全くの別物。そもそもホムンクルスは元から存在していたものをコピーするように作られている。ガーボンヒューマンは1からすべて文字通り作成するように作られている。全くの別物だからね。」


 那智の一言がミディールにとどめを刺す事になる


 「あんたが考えていることに一つくぎを刺しておくよ。それはガソリンで動く車に油を入れるような行為だよそれは不正解」


 ミディールはその場に崩れるように倒れこみ泣きじゃくりながら床を叩く


 「なあ、あんたは家族にあいたくてここまでやって来たのだろ?私は最初からあんたの望む結果には決してならない事を私は知っていた。」


 「そんな....あなたは最初からこうなると知っていて....」


 「なぁ、ミディールよ人が本来手を出してはいけない領域にまで手を出してまで事を為そうとする人間ほどこれ程おごがましい存在だとは思わんかね?」


 「愛する人に生きてほしいと思うのがなぜいけないの?」


 「わたしはただあんたに生きる道筋を与えたかったただそれだけだったのに.....いつの間にか失われた領域にいつの間にか踏み入れてしまっていた。私の間違いだった.....」


 「ごめんなさい....私の勝手にあなたを巻き込んでしまった......これ以上どうする事も出来ないのだから私はこのままあなたのまえから消えるわ...」


 「まあ、そう言わんでくれんかね。見返りとは言わんが一つ頼みごとをお願いしたい。これから数年以内に私の孫の二人がこの世界に転移してくる。一人はこの子にそっくりな少女だ。私の命はもうそう長くはない....彼らの力になってはくれんかね?」


「なぜ私に託すの?人の道を大きく外れた私になぜ?」


 「私はね前の人生、前の世界では二人には何も教える事も残す事も出来なかった。今度こそ、必ずやり遂げて見せると誓ったのにどうやら今回も無理そうだ。夫を亡くし娘を失くし絶望しながらもかれらにすがり執着したあんたなら二人を託せると思ったのじゃよ。あんたを試すようなことになってしまったがね」


 「そのお孫さんたちはいつごろ転移してくるの?」


 「美香はいまからあと2年後」


 「理人の方は美香が転移してきてから2年後に転移してくるはずだ。いいかい問題は彼らが転移したあとだ。」


 那智はミディールに睨みつけるような噛み締めた表情を見せる


 「私が元いた世界では私がこの世界に転移した後、世界そのものの情勢を一変させるほどの大災害が起きた.......らしい......」


 (らしい?どういう事だ?)

ミディールは疑問に思った。自分が死んだ後の世界の情勢をなぜ知っているのか?

 「あなたは死ぬことでこの世界に転移してきた。なぜ元の世界の情勢を知っているの?あなたはどうやってそれを知ったの?」


 「すまないね、さすがに今はそれはまだ話せないのだよ。それでもこれから話す事を信用してほしい。」


 「話の内容にもよるわよ」


 「それでもかまわないさね。どのみちあんたは信用せざる得ない。いいかい良くお聞き。あの世界で起きた大災害がこの世界でもほぼ同じ時間帯に間違いなく起きる。今から5年後。2011年3月11日。大地震が起き巨大な津波が世界を襲う。こちらの世界であれと同じものが起きれば人類そのものが終わる」


 「その大災害と彼らに何が関係があるの?」


 「地震が起きた震源地に関わる座標に関わるデーターを美香がもってくる流れになっている。座標がわかれば大災害を止める突破口になるはずだ。」


「なぜ私に託すの?」


 「あんたは間違いなく一人の親だ。そうでなければここまでのことは為せなかった」


 「それが私を選んだ理由?」


 「それも一つの理由だがね。人としての想い、人としての記憶、人としての責務そして...親としての責務」

「私から見たあんたの心はどれも間違いはなかった。私もそうでありたかった。だがしかし私にはもう時間がない」

「いいかい良くお聞きミディールよ人の心にはアニマという魔力の様なものがこもっている。そのアニマを良きことに使うか悪いことに使うかはその人個人しだいだ。アニマは人の心の色によって善にも悪にもなる」

「私が見た限りではあんたは間違いはないと思う」


 「それはあなたの思い過ごしかもしれない。私はまた同じことを繰り返してしまうかもしれない」

「夫と娘を殺した犯人に復讐する可能性だってある。そのアニマという力を使って」


 「あんたは悩んだはずたよ。これ以上自分の心が傷付かないかを自分の心を傷つけないために必死だったしかしそれでも犯人はそんな事を知るよしもないだろう」


 那智はミディールを見つめる一息すると再び語りだす。


 「進め前へ。後ろを向くな。そして抗え。そんな理不尽な状況から。大切なのは間合い。そして退かぬ心だ」

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現実世界〔恋愛〕
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