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Never Island  作者: 阿久津ゆう
4章 偽りの時間とホムンクルス
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41話 思いやり

 理人と隆太は市長と合流しあの研究施設に車で向かっていた。

前回は徒歩で歩いていたが今回は車での移動なため多少の心の余裕がある。

しかし楽観はできない。ユウキとミナの容態がいつ、急変するかわからない。

とにかく急ぐことに越したことは無いのだ。


 ドン!


 何かが衝突したような音が走り車中にいきなり衝撃が走った。


 「何が起きた?」


 理人たちが車から出てると前のタイヤの二つが雪に完全に埋もれている光景をまのあたりにする。どうやら雪のせいでスリップを起こしてしまっているようだ

「市長さん。俺が後ろから押しますからアクセルを全開にしてください」


 「わかったやってみよう」

理人と隆太は車を後ろから思いっきり押し市長はアクセルを全力で前回にする。

車は少しずつ前に進み何とかスリップの状態から抜ける事が出来た


 また天候が悪化し始めているこのままでは更に酷い状況になるかもしれない。

理人は目の前ある廃家を目にする。


 「このままでは危険だ天候がすこしでも収まるまであの廃家でやり過ごすしかない。」

これは仕方のない決断だこのままでは自分たちの命も危険にさらされることになる。苦渋の決断だ。

彼らをどうにかして助けてあげたいがどうにもならない状態だ。天に祈るしかないとはこういう事である。


 3人は廃家の中で天候が少しでも緩やかになるのを待つことにする。


 理人は狭い廃家のなかでユウキの今の心境について思いつめていた。


彼は本当に辛かったんだな。妹がこんな風になって。ずっと妹の事だけを想い続けて生きて来たんだな。


 理人は自分自身とユウキの今までの歩んできた道筋を照らし合わせて見ていた。


 あんな装置があったら間違いなく俺は彼と同じ選択をしていたと思う。

でも...........。

やはり一度死ぬことには変わりはないんだ。

 彼は俺と同じだ。大切な人を愛する人の死をまじかで目のあたりにした。

俺と彼の選んだ選択は全く同じだ。


 違うのは今その大切な存在が目の前にいるだけ。


理人は決心した。


 「いつ天候が回復するかもわからない。ここからは徒歩で行く」

理人の決意は既に決まっていた。


 「だけどよぉ例えあの研究所についてもあんなデカい装置をどうするんだよ」

隆太のいう事はもっともである。3人がかりで運ぶにせよこの猛吹雪の中では命にかかわるし装置が壊れてしまっては元もこうもない。


 くそ.....どうすればいい


 「私が一人で車に乗って向かおう」

市長はそう言うと立ち上がり歩き出す。


 「徒歩ではどのみち時間がかかりすぎる車で無理やり移動するしかない。しかしそれでは危険が伴うのも変わりはない」


 「ならなおさら三人で行動したほうが良い。またさっきのようなことがおきれば複数人で行動していたほうが対処できる。」


 「君たち二人はまだ子供だ。子供を守るのは大人の務めだよ」

市長はそういうと理人の頭をなで笑顔を見せる


 「市長、俺はユウキ君がしたことをどうしても間違っていたとは思えないんですよ。ただ一途に妹の事を思って彼はこの選択をしただけ。こんなつらい思いをするのは理不尽だと思う。だからこそ何が何でも助けてあげなくちゃならないと思う」


 「ああ.....だからこそだよ。君達の話を聞いてわたしも彼らのためにどうにかしてあげたいと思ったからこそ今こうして君たちと行動を共にしている」


 「そうだぜ!!!ここで二人が死んじまうなんて理不尽だぜ!!絶対にたすけてやろーぜぇぇ!!」


 「俺たちも行きますよここで待つなんて御免ですよ」

3人は車に乗り込み再び移動し始める。

 途中でなんどもスリップしなんども試行錯誤をくりかえし前に進む

少しずつだが前進していく。

 途中で理人は意識を失いかけてしまう

「おい!兄ちゃん!!!しっかりしろ」


 意識が朦朧とする中、ある人物の顔か脳裏に浮かびあがる

美香......

 ああ...わかっている諦めないよ絶対。


理人は右足に違和感を感じ始める..........


 「いかんこれは凍傷だ......」


 「兄ちゃんこれ以上は....」


 「気にしないでくれ俺は大丈夫だ。」

理人は車から出て雪をずかずかと踏み車をうしろから思いっきり押しむりやり進ませようとする。


 「アクセルを踏んでください俺の事は気にしないで」


 「おい...やめろって...」

隆太は理人の腕を掴み止めようとするが理人は止まることは無かった

 「いいって、車ん中で休んでろって」

理人の目は完全に瞳孔が開いているように見えた

 「ちくしょう!!!うごけぇぇぇぇぇぇ」

隆太は車を押すと少しずつ動き出しスリップの状態から脱出した。


 「やったぜ兄ちゃん」

 

 「..................」


 「嘘だろ兄ちゃん?」

 隆太は理人を抱え車に入り理人の体にこびりついた雪を跳ね飛ばし彼を呼びつつけた。


 「あの研究所まであと少しだいまは先に進むしかない君はとにかく彼を呼び続けてあげてくれ」

この先の道は平たんな道が続くだけだあとはすっ飛ばしてどうにかる。

市長はとにかく車を飛ばした。


 「見えたぞあの建物だ」

市長と隆太は理人を抱えながらなんとか研究所に入ることができた。

 「兄ちゃん大丈夫か?」


 「ああ...大丈夫だ」


 「足を見せてくれ」

市長理人の足を見ると鞄の中に入れていた包帯で応急処置を施した。

 「応急処置にすぎないからこれ以上の無理はダメだよ?いいね?」

市長は優しく理人にそうささやくとかれを背中に背負い歩き出す。


 ついに回復処置を施す装置が置いてある部屋まで彼らはたどり着くことができた。


 研究施設においてあるパソコンで市長はミディールたちに連絡をする事にする。

隆太は理人をベットに寝かせると二人は疲れ切って眠りに付いてしまった。


 「ああそうだ...無事についた」

市長はパソコンのシステムでミディールと話していた。

 「それで二人の容態は?」


 「今は何とか容態は安定しているけど油断はできないは」


 「こちらも二人を少し休ませたらそちらに戻るとするよ。心配しなくても大丈夫だ二人は必ずそちらにお送り返すと約束しよう」


 パソコンの画面に回復処置を施す装置にユウキとミナが映っていることに気が付き市長は目にする


............................


 「彼が...そうなのかい?」


 「ええ、そうよ」

市長は彼らを無言で見つめる


 「そうか......彼はやり遂げたのだな」



彼はそう一声呟いた

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現実世界〔恋愛〕
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