40話 With the real you
「死んだ人はその時点で歳をとる事もなくそのまま時間が止まる。生きている人は時間が動きつづけ死んだ人と時間が離れ歳を取っていく。それが時間を追うごとに積み重ねていく事で人は肌で実感する。それを積み重ねていく事でより重みを感じていく。それが辛くて悲しいことだという事がより重みを実感させていく」
そうだ。あの人の言うとおりだ。だから僕は耐えきれなかった。その負の積み重ねからどうしても抜け出したかった。
あの頃が懐かしい。どんなにひもじい思いをしても二人で過ごしたあの日々が。
ユウキは装置の中でミナの身たちを抱きしめながら物思いに更けていた。
------。「私に何かあったら代わりにあなたが守ってあげて」
母さんごめんよ。僕は選択を間違ってしまったのかもしれない。ここにいるのは僕の「ミナ」であって母さんの守りたかった「ミナ」ではない。
ーーーーーーーーー。「彼女に素敵な名前をありがとう」
そうか僕はまた同じ名前を付けたんだな。この子にも...僕は....
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。「お父さんを恨まないで」
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恨めるはずないだろう。僕にとってのミナにたいする愛情が本物であるように父さんの母さんにたいする愛情は本物だった。
だから僕は父も母も恨まない。
いや恨めないんだ。
この子は間違いなくミナだ。僕の大好きな妹のミナだ。ミナの遺骨と髪の毛を素体にしてミナを蘇生させた。
僕はそう思っていた。
でも実際は違ったようだ。あの頃のミナの記憶をもった別人のミナを僕は作ってしまった。
この子は........真実を知ったら....僕の事をどう思うだろうか?
ばれなきゃいいのか?
いいやそんな事許されるはずがない。
僕の勝手な気持ちでどうにかしてはダメだ。
この人たちは僕たちを助けようとしてくれている。
僕は彼らの気持ちを裏切ってはダメだ。
僕たちの容態が安定したらこの子に。ミナに全てを打ち明けようと思う。
僕の勝手な気持ちで思い通りの人形のようにしてはダメなのだから。
.......................
ユウキは装置の中で自分の胸の中で眠っているミナの顔を見て一人ぼっちだった....5年間を思い返していた。
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あの本を見つけたのはいつ頃だろうか?ミナが亡くなった後だったか?あの本を手にした時、僕の人生に再び光が差した。
とにかく必要な知識を得るために何だってした。
様々な施設に足を運びいろんな人から学びながら働いて稼いだりもしてきたな。
そういえば施設に残って職員になってくれともいわれたことがあったかな
「それは禁句だ。決してやってはダメだ」
そうだ....僕はあの施設の人にはなしたんだっけ?
「たとえ蘇生に成功したとしてもそれで妹さんが喜ぶのかよく考えろ!!」
あの人の言ってたことの意味が今では理解できるよ。
「お前は一人じゃないぞ。お前はもうわたしの家族だろ?」
ああそうだあの時あの人の言葉が嬉しかったから......余計にミナに会いたくなった....
「そこまでして....妹を...ならわたしにも....手伝わせてくれ...わたしにも..背負わせてくれ。いいだろ?家族なんだから」
ああ...だから僕はあの場所から出たんだ。この人に罪を背負わせたら駄目だと思ったから
「何を言ってるんだ?間違いか正解かは?これからの私たちしだいだろ?」
なぜあなたはそこまで.....
「いいか?決して一人でやり遂げようとするなよ?」
貴方に背負わせたくない....
「どこにも行かないでくれ......いいな?約束だ」
黙って出て来た。あの場所から
必要な全ての段取りがすでにあの時出来ていた。自分一人でやり遂げようと思った。
ミナを蘇生させた後僕たちが住んでいたあの家を二人で観た後あの場所に必ず帰りあの人にミナを会わせる。それが自分が出来る最高の恩返しだと思った。
島のはずれにあった無人の研究施設。
本にはホムンクルスを作る場所であったことが書き示されてあった。
あの場所をようやくたどり着いた
そして僕は必要な全ての材料を研究施設に持ち込みその場所を拠点に行動を始めた。
全てはこの時のために。もう後には戻れない。無関係な人を背負わせてしまった。
必ずやり遂げて二人であの人の元に戻る。
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そして
「ミナ.....ミナ....今度はきっと...」
機体の中にはユウキの年齢から一つか二つほど年齢が年下ぐらいの少女が横になっている。
「やった.....成功だ...」
少女は目を覚ますと周りを見回しユウキに顔を向け彼に問いかける。
「ここは何処?....私何も覚えてないの....あなたは誰?なんで泣いてるの?」
「僕の名前はユウキ。君の名前は「ミナ」僕は君のお兄ちゃんだ。この涙は......うれし涙だ。君が無事に目を覚ましてくれたからだよ。」
全てはこの時のために------。




