38.5話 私たちにできる事
理人さんの遺品の整理がまだ途中の状態である中しかしこのまま行動を止める事も出来ない。作業をいったん中止して私と新田はある人物と合流し情報と意見交換をする事にした。
その人物の名は「ミィル・バソーカ」現在は軍の管轄の元で様々な部門の研究者として動いている。若干12才で幼いわりにはかなりのやり手の研究者である。軍内部では少尉の階級についている。いわゆる典型的な天才である。
今回の問題には彼女の協力無くしては話しが進まないのだ。
というのもなんだがミィルの母はかつてアイランド計画に関わっていた。彼女がまだ物心つかない頃、車同士の衝突。玉突き事故にあい亡くなってしまった。
その死には様々な憶測がちりばめられ黒いうわさが絶えなかったらしい。
その噂の中で一番有力な物が何者かによる暗殺である。当時アイランド計画は相当な資金が回っては流れ流れては消え相当な資金が流出消滅していたらしい。ミィールの母親は研究者として当然その黒い資金に関わっていたかのうせいがある。
私と新田はミィルを理人さんの自宅の住所をスマホのアドレスに教えその近辺で合流し彼の自宅の中で意見交換を交わす事とした。
「そろそろ予定の時間だ」
新田は腕時計の針をみながら周囲を警戒する。
二人の目の前に少女が無言で現れ突き指を立ててこっちだと誘導すると二人は無言のまま少女についていく。
誘導された場所は小さな何の変哲もない喫茶店。
「なぜこの喫茶店へ?理人さんの自宅で話しあうばずだっただろ?」
新田は呆れた顔でミィルに問いだす
「あのね?誰が聞いているのかわからないのよ?あの建物の中に盗聴器が仕込まれている可能性だってあるのよ?」
何だか大事になって来た。いたって普通な一般人だった理人さんにそのような恐ろしい事になっているなど考えられない。
「なぜ理人さんの家に盗聴器が?」
「なぜって?彼があの人の孫だからよ」
「今後の俺たちの行動やら活動するために必要な情報は彼の自宅にあるはずだこの場で話し合うだけではダメだ。それにちゃんと......その...ちゃんと片づけてあげないと...」
新田は言葉を詰まらせながらこまりながらミィールに説得しようとするが...
「新田くん君は彼の家で何をみたの? あまり他人の事情に突っ込まないほうが良いと思うけど。しかも彼は既に亡くなっている。.....と言っていいのかしら?実際はどうあれこの世界では彼はもう死んだ人間なのよ?」
ミィルのいう事はもっともだ。しかし新田も甘夏目も彼の理人の芯の底からの理人の想いを見てしまった。
もう二人は止まる事は出来ないのだ彼のために動かないといけないと。すでに決心していたのだ二人は
「嫌だと言うのら日を改めるお前には迷惑かけない」
新田のその言葉には迷いというものは微塵もなかった
「.........はぁ.....」
呆れた顔でミィルはため息を一息かける
「いいわ付き合ってあげるでも最初に盗聴器が無いか一通り調べる事が条件よ?いいわね?」
「ありがとよミィル、おまえは幼いながらそのしっかりした性格は何度も俺たちを助けてくれたお前は間違ってねぇよ。........それでいいぜおまえ」
三人は理人の自宅に入るとある機材を出して盗聴器が無いか調べる事にする。
丸い球体ののような機会の電源を付け建物ないの全ての部屋を歩いていく。盗聴器ががあればこの丸い球体の機械が反応を示すはずである
「どうやら盗聴器はないようね」
そういうとミィルは球体上の機械の電源を切りバックにしまう
「ごめんなさい......私のおもい過ごしのようだったわね...」
「仕方がないさお前のいう事は間違いは無かった万が一の事も考えていなかった俺たちにも問題があった気にすることは無いぞ」
盗聴されている可能性がないことがわかっり安全だという事がはっきりさせた3人はその後何か有力な情報が無いか調べていく。
「この部屋は?」
「理人さんの妹さんの美香ちゃんの部屋だね」
甘夏目とミィルは美香の部屋を調べる事にする
ミィルは部屋の真ん中に座りひざまつきお祈りをする
「ごめんなさい....あなたの尊厳を汚すつもりはないわ...どうか許して」
ミィルは心が凄く傷突くような感覚がした。そしてこの部屋を見て彼の理人の気持ちが痛いぐらい伝わって来た。
「妹さんがいなくなった後も部屋をそのままにしていたのね......」
「..........」
甘夏目は彼女のその言葉にものすごい重みを感じた。彼女も母親を失っている。大切な人を無くす辛さは誰よりも理解できるはずだ。
「夏目君この部屋は私が調べるから新君を手伝ってあげて?」
「大丈夫か?」
「この女の子の私が一人で調べたほうが彼女のためにも良いはずよ。お願い」
ミィルは机の中をくまなく調べていく。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい
ミィルはなんども心の中でそう言いながら調べていく。
彼女は一つ一つ丁寧に調べていく。机の中央部の引き出しを開けると日記帳が出て来た。
これは当たりだ
彼女は直観でそう思った。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
彼女はなんども頭の中でそう言い続けた。
許してください。許してください。許してください。許してください。私はあなたの尊厳は決して汚しません。
彼女は何度も謝り続けた。
ミィルは美香の日記帳を一人で観る勇気が出来なかった。これは遺品だこれを開くことは決して許されない
ミィルは甘夏目と新田を呼び出し三人でこの日記帳を見る事にした
「もしこの日記帳が「白」だったらこの罪はわたしが一生引き継ぐわあなたたちは忘れて頂戴」
「それは無理な話だ俺たちは彼らがいる世界に行く。彼らに会ったらすべてを白状し謝罪する。その罪は俺たちが持っていく」
新田はそういうと日記帳を開く
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始まりは、お婆ちゃんが私に渡した紙切れだ。
お婆ちゃんは無言で私にその紙をわたした。
紙にはA-20H0e8iSe-i-1-15 g:yq@bbfgwfq@/q@と書いてあった。
何かの暗号なのだろうか?
私が何を聞いてもお婆ちゃんは何も話さなかった。
その後しばらくしてお婆ちゃんは老衰で亡くなった。
この暗号のようなものは幼かった私にはまだ理解することができなかった。
その後私はお兄ちゃんと二人で暮らす事となった。
両親のいない私にとってお兄ちゃんはたった一人の家族であり信頼できる人であった。
友達や友人がいなかった私をいつも支えてくれた。
私が15歳の頃に白血病を発症し入退院を繰り返すようになった。
主治医になった人はなんとお婆ちゃんの主治医だった人だ。
まさか私の主治医にもなってくれるなんて..
お兄ちゃんは私のために夢を捨てて別の仕事に就いた。
私はなにも出来なかった。
私はある日、お婆ちゃんから渡された紙切れの事を思い出した。
先生にこの紙切れをわたし書いてあった内容を見て驚愕し一瞬にして顔色を変えた。
そして先生から思いもよらない言葉が....
「彼女は那智さんは生きている...」
何を言っているのかわからなかった。
誰でも知っている夢のようなシステム...人生をやり直すことができる「グロウベルグシステム」お婆ちゃんは秘密裏にそのシステムを使って死に際に別の世界に転移している可能性があった。
紙切れに書いてあった暗号は転移する世界の言わば座標のようなものらしい。
しかし、後の方に書いてあったものは何かのモールス信号のようなものだったらしく先生は解読を進めたらしいが結局これが何を意味するのかは結局わからなかった。
私には時間が無かった....でもお兄ちゃんを一人にはできなかった...したくなかった。
お婆ちゃんの居場所...座標だけはわかっている
そして私は決断した。
グロウダイバーとしてグロウベルグシステムを使いお婆ちゃんが転移した世界に私も転移する事を。
そしてお兄ちゃんも今いる世界で寿命を全うしたあとに私が転移した直後に転移してもらいあちらの世界で再会する...。
そしてもう一度一緒に人生をやりなおす。
お婆ちゃんの事は話さなかった。
これはサプライズにするつもりだった。
頑張って生きて来たお兄ちゃんへのご褒美
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「ごめんなさい.......」
ミィルは涙を流しながら決心した。
「私もあなた達とついていくわ」
「いいのか?もうこの世界には戻れないぞ?」
「美香ちゃんに会って謝りたいから....それに」
「私美香ちゃんの友達になりたいから」
ミィルは心の底からそう思った。




