4話 こんにちは
ここから本格的に物語は動き始めます
今私は祖母が所有していたという一軒家に向かって歩いている。
女性職員の話によると妹は美香は2年前から祖母の下で一緒に暮らしていたが一か月前に病気で亡くなりその数日後に美香は行方知らずとなったらしい。
どういうことだ?そもそもなんでこの世界に婆ちゃんがいたんだ?。
元の世界での婆ちゃんは私が15歳の時に老衰で亡くなったはずだ。
私はこの時期は祖母と暮らしていたがそんな話すらされなかった。
私の両親は、私がまだ物心が無い頃に事故で亡くなっており祖母が代わりに私と美香を両親代わりとなって面倒を見てくれていた。
祖母の死に目に会えなかった。あの日私は祖母が入院する病院にいた。
「もういい今日は帰りなさい」
祖母は笑いながら私にそう言うとわしを見つめながらため息をつく。
「そんなこと言ったって心配で帰れるはずないでしょ?」
私はあの時、非常に嫌な予感がしていた。
「年寄りを、私を馬鹿にするんじゃないよ」
祖母はそう言うと強い口調で語りだした。
「私はまだ死ねないまだまだやりたいことがやり残したことがある。あんたの夢は私が求めるものと同じなのだから」
「あんたを一人前にして私の後を引き継がさせるまでは死ねないのだよ」
婆ちゃんは頑固だ絶対に我を曲げない。
私は婆ちゃんに言い負かされ帰宅した。
あれだけ普通に話せるんだから大丈夫だと思った。
数時間後に病院から電話が....。息を引き取ったと連絡が来た。
ショックだった。まさか...亡くなるなんて....。
帰らなければよかった。
婆ちゃんの死に目に会えなかった。
誰にも知られないように密かに終末医療プログラムを受けていたのか?
まさかこっちの世界に来ていたなんて。
出来る事なら会って話がしたかった
また私は祖母の死に目に会うことができなかった。
それにしても美香はどこに行ってしまったのだろうか?
なぜ美香は行方不明になってしまったのだろうか?
それだけはどうしても気がかりだ
地図を頼りにしばらく歩き続け、地図に印がつけられた座標についた。
大きな屋敷が私の目の前に建っている。
結構な大きさというか普通の人が住むような大きさではない。
驚きというかマジでびっくりだ。
ぼーと突っ立てしばらく見とれていた。
とりあえず門を開けて入ると広い庭が広がっていた。
見覚えのある花が花壇に咲いている。
美香が好きだった花だ。
そして結構高そうな盆栽がたくさん置いてある。
これはまぎれもなく婆ちゃんのものだ。
前の世界でもまったく同じものを持っていた
庭の真ん中には立派な噴水がある。
二人は確かにここにいた。二人の息吹を感じる。懐かしいその雰囲気を。
噴水の近くに水道の蛇口がありそこからチューブで繋げ花壇に水をやる女の子がいた。
見たところ今の私と同い年くらいの女の子か?
「あの、君は?....」
私は彼女に声をかけた。
髪の色はピンク。割とながめの髪で背中の真ん中位まで伸びすごく綺麗な髪質だ。身長の見た目は150センチ台。体格は細く見た目は華奢そうな雰囲気だ。
「あ、こんにちは」
女の子は私に話しかけ軽くお辞儀する
「もしかして理人さんですか?」
「え、そ、そうだけど君は?」
「私は、七生 奏花といいいます」
そういうと彼女は理人にいろいろと説明し始めた。
彼女、奏花は美香とは同じ学校に通っていて近所に住んでいるらしい二人の仲は何年も前から親しくしてきた間柄で家族ぐるみでの付き合いだったらしい。理人がいずれこの島に来ることは美香から説明されていた。祖母が亡くなった数日後、美香は行方不明となり島中の人々が捜索にあたったが結局見つからなかった。奏花はその後屋敷の中の掃除や庭や花や盆栽の手入れをしてくれていたと言う。
「これだけでかい屋敷を一人で掃除したり手入れしたりしていたのかい?」
「他にも数人いるんだけど今日は私だけ、みんな美香ちゃんと同じ学校に通っているよ」
美香や奏花を含む子供たちは島には一つしかない学校に小中高共学で通っているらしい。
そもそもこの島は本土からはすでに見放されており公的な行政はまったく機能していないらしく真っ当な教師はすでに本土に逃げてしまった後で美香と奏花が代わり下級生の面倒を見ていたらしい。
おい!!!マジかよ、島どころかこの世界世紀末じゃん
「俺の事は好きに呼んでくれ」
「なら!理人君で!」
「ずいぶんとなれなれしいな、まあ別に構わないけど(笑)」
一通りの説明と会話を終えた二人は屋敷に入る。
中はそとの外形通り広い空間が広がっている。
理人は人通り屋敷の中を見て回ることにした。
奏花が案内をしてくれている。
食堂には見慣れた食器がこれは元の世界で美香が使っていたものに似ている。
図書室のような場所がある。祖母が元の世界で所持していたものと似ているものが沢山あった。
美香の部屋に奏花が案内してくれた。本当は入ってはいけないのだろうが今は彼女は行方不明だ。何か手掛かりが得られるかもしれない。この場合は不可抗力だ。
美香が使っていた机には祖母と二人で映っている写真が飾ってある
祖母は元の世界で亡くなるときの姿より若い姿となっていた。
窓際に服が衣紋掛けにつけられた状態で掛けられている。間違いないこれは美香のものだ。
二人は確かにこの世界にいた。
何もかもが懐かしい。
二人に会いたい......
その想いは次第に大きくなっていくばかりだ。
「あの気になる場所があるんだけど、一緒に行かないかな?」
「気になる場所とは?」
奏花の話によればこの屋敷には地下室があるらしい。
その場所も掃除や整理をしようと思ったらしいが何やら近寄りがたい雰囲気で結局その場所は後回しにされたらしい
地下室に続く階段を下りた先に重苦しい扉が......確かにこれは不気味な感じだ。
地下に降りたら空気そのものも重く感じる。それになんとなく薄暗い。
扉は完全にガタが来ていてドアノブはさび付いており開けるのは非常に困難だ。
「仕方がないドアを壊すこれでは二進も三進もいかない」
理人は無理やり扉に体当たりする。すると勢いよくバキバキ!!と音を立てながら縦方向に倒れて壊れた。
扉そのものは木材で出来ていたためそれほど頑丈では無かった。
部屋の中はたくさんの機械とコンピューターが設置されている。
「間違いないこれらのすべてが婆ちゃんが使っていたものだ」
「す!!すっごーい!!!あのお婆さん本当にとんでもない研究者だったんだ」
婆ちゃんはこの世界でも研究を続けていたみたいだ。コンピューター、システムエンジニアとしての。ーーーーー。
「ん?なんだこれは?」
理人は部屋の片隅に置いてある巨大なカプセルのような物体を見つけ中をのぞいて見る。
「え?なにこれ?」
カプセル型の機械の中にはちっちゃな女の子が横たわっている。身長は見た目では135センチ台痩せ型で髪は金髪でやや長めの髪型。
「こ...これは...ガーボンヒューマン?なんでこんな場所に?」
ガーボンヒューマン。それは理人が元いた世界で人の手で人工的に作られた人型人口生命体いわゆるホムンクルスのような存在である。人の手で作られたこと以外、肉体的な特徴は普通な人間と同じである。
「なんでガーボンヒューマンが?なんで婆ちゃんがガーボンヒューマンを?」
「がーぼんひゅーまん?」
どうやら奏花はガーボンヒューマンの事を知らないらしい。理人は人通り彼女にガーボンヒューマンのことを説明した。自分が元いた世界の話は抜きにして。
「それじゃこの子はロボットなの?」
「いやロボットではない。人の手で作られた存在ではあるが俺たちとほとんど大差はない」
女の子が寝かせられたカプセル型の装置は一つの電源コードのようなものがパソコンに繋げられている。
理人はそのパソコンを操作すると。
コールドスリープ状態を解除しますいいですか?→ (はい)・(いいえ)
「起こせられるの?」
「コールドスリープの状態だからね。多分問題が無ければおきるよ」
理人は「はい」を選択するとカプセル型の装置が「しゅぅーーー!!」と音を出し蒸気が勢いよく噴き出してくる。そしてプシュン!!と音を立ててカプセルが開く。
女の子はゆっくりと目を開ける。
奏花は女の子の頭から腰にかけて手をかけてあげ起こしてあげると「大丈夫?」と語り掛けると首を縦に動かしうなずく。
そして女の子は理人を見つめ微笑みながら語り掛ける
「こんにちは」