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Never Island  作者: 阿久津ゆう
4章 偽りの時間とホムンクルス
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38話 記憶

 ミディールが施した処置によりミナの容態はひとまず安定した。

しかし、楽観できる状態とは程遠く。回復処置を行うこの装置から出す事は出来ない状態である。

彼女を装置から出せばまた容態が急変してしまう。


 彼女の身体は的確な処置を施さなければすぐに死んでしまう状態なのである。

そして彼女、ミナの兄、ユウキは自身を素体として自らを捧げミナをホムンクルスとして[蘇生]させた結果、ミナとユウキの寿命は一心同体となってしまった。


 「そこまでして....妹の事を思っていたのね....」

ユウキから事の発端と今までの経緯を一通り聞いたミディールは漠然とした心境で何とも言えない状況であった。


 「でもねこの子は姿かたちはあなたの妹でも全くの別人なの..わかる?」


「ちがう、別人なんかじゃない断片的だけどあの頃の記憶が今ここにいるミナにはちゃんとある今ここにいるミナは間違いなく僕の妹だ」


 ユウキはミディールの問いかけに反論する


 「それは彼女を作ったあなた自身が自分自身を素体とすることであなたの中のミナちゃんの記憶を元に実体化させた...それはただの作り物...」


 ミディールは装置の中で眠り続けるミナを見つめるとその目にはジワッと微かだが涙を浮かべる。


 ああ...自分は何というものに...開発に関わってしまったのだろうか?ホムンクルスつくりだす装置。生命たるその理論を覆すためにとんでもない過ちをおかしてしまった。

この装置の開発には私も関わっていた。私にも責任がある....


 この装置は元々は死んだ人間を蘇生させるために作られる「はずであった」装置だ

装置の完成には難航した。


 死んだ人間を蘇生する事には成功したがその「人」には自我が無く廃人の状態に陥っておりもはや人とは言えない状態となってしまった。

蘇生させた人間か発狂欄に陥りその場にいたスタッフが襲われ死亡する事件までもが起きてしまった。

これを解決するべく進められたのが蘇生させる人にとって「最も近しい人がもつ記憶」をもった人からその記憶をコピーして蘇生させる人間に入れるという前代未聞の実験が行われた。


 そうして試行錯誤を繰り返しながらできたのがホムンクルス生体装置なのである。

 

 「あなたの話によれば装置は完成したと言う風に聞こえるが?」


 「話を聞いていれば気づいていると思うけどあなたが『蘇生』させたミナちゃんは遺体そのものを蘇生させたのかしら?」


 「!?」


 ユウキの顔は一気に青ざめた


 「私たちが開発していた装置は確かに遺体そのものを蘇生させる装置だったわ。だけど実験は失敗し続け問題になった結果、完成に至った装置は遺体を蘇生させる装置ではなくまったく違う物になってしまった。」

「装置が素体となる人間の記憶を元にコピーし記憶と自我と身体を作成させる物となってしまった...」


 「バカな!!!どう見てもこの顔は体は俺の妹のミナだ!!!!信じられるか」


 「それはあなたの記憶を元に今のミナちゃんを作り出したからであって、今ここにいるミナちゃんはあなたが求めたミナちゃんではけして無い...」


 げほげほと咳込みながらユウキは反論する

「僕はミナを蘇生させるために独学ながらこの装置を使用する際に様々な改良を加えた...今ここにいるのは確実にミナだ...」


 「違うあなたがしたことはあなたの求めたミナちゃんに、より近い存在にするために手を加えただけでありあくまでこの子は本物のミナちゃんに「極めて近くより遠い存在」なの」


 ミディールは涙しながらユウキを睨め付け言い放つ

 

 「死者の復活に失敗した人間の定めの運命はけして変える事は出来ない。あなたたち二人は近いうちに確実に死ぬ」


 「あと...どれくらいの猶予がある?可能性は無いのか?助かる方法は?せめてミナだけでも」


 「ホムンクルスを作成し完成した時点でホムンクルスと作成者の寿命は一心同体となりどちらかが死ねばもう片方も死亡する。装置をつくりだした私たちはそれを「同一性近親障害」と名付けたわ、これを発症した者は運命からは逃げられない」


 「あとどれくらいの猶予がある?僕たちに残された時間は?」


 











 「何があっても一週間、これがあなた達の残りの寿命」



....................



 「なあ?残るよな?僕たちの記憶。僕とミナの記憶」


「.......残らないのよ.....記憶しか」

長らく時間がかかりましたが38話投稿となりました。何分仕事をしながらなので更新が遅くなってしまったことに大変申し訳ないと思います

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現実世界〔恋愛〕
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