34話 親近感
A級ブリザードそれは時として多くの人の命を落とす恐ろしい災害。
人工物を凍らせ破壊しそして人の命を脅かす。
ユウキとミナが屋敷に滞在してからすでに3日が過ぎたが一向に収まる気配がしない
理人と隆太は無事なのか?美亜と奏花は心配でたまらなかった。
「ざーーーざーー!!」
奏花はラジオを付けたがノイズの音しか聞こえない。
この様な状態ならば電波が届くはずがない。
美亜は暖炉の薪を追加していく。
とにかく暖炉の火が消えないようにしないといけない。
ミナの体調の事も問題もあるため暖の問題には特に油断が出来ない状況である。
「すまない僕たちのためにいろいろと迷惑をかける」
「気にしないでください困ったときはお互い様ですよ」
美亜はユウキとミナの境遇に何故か親近感がわいていた。
なぜか二人を放っておくことが出来なかった。
「理人君だっけ?君の大切な人なんだよね?こんな時に何だけど本当に無事だといいんだけど...」
「あの人ならきっと無事ですよ!建物の中に避難しているはずですから。きっとユウキさんともいい友達になってくれると思いますよ。」
二人は何気ない会話をしながらこう思った『ああ、やはり自分たちと何か似ているな』と
「この吹雪がやんだらとりあえず実家に戻るつもりだ。」
「その話何ですけど。あのですね、もしよければあの人が帰って来るまでここにいると言うのはダメですか?」
「でもこれ以上迷惑かけるわけには...」
ユウキはこれ以上迷惑をかけるわけにはいけないと思ったがせめてこの吹雪がやむまでは致し方ないと思っていた。
しかし彼女のその優しさは凄くありがたかった。両親を早く無くしずっと妹のためだけに生きて来た。ここまで人から優しくされたのは生まれて初めてとさえ思えてしまえるほどであった。
「くーくー..」
「すうーすぅー..」
奏花とミナは寝息をたてながら寝ている。
「こいつ...友達が欲しかったんだろうなきっと...」
「もう友達ですよ...私たちは...」
「ありがとう、本当にありがとう」
ユウキはホロっと目から涙が流れ始めた
自分がしてしまった行為は人として一線を越えてはならない事だ。
どんなに尊い存在で大切な存在であったとしても一度死を迎えた命を簡単に蘇生させるなどという行為は許されない道徳では無いのか?彼の心を重く締め付けた。
「飲んでください温まりますよ」
美亜は暖炉で温めたミルクをユウキに渡す
ユウキはミルクを口にすると口の中が甘くて暖かい感触がした。
「妹はある病気を患っていて最近治療のかいあってようやく回復してきたんだ。だけどまだ完全じゃなくて...それでも一人にできなかったからどうする事も出来なくて.....」
この時ユウキは思わず嘘を口にしてしまったことに心が痛んだ。
「私も身体が生まれつき弱くて....でもあの人がいつも私の側にいてくれるから...ちゃんと生きていられます。」
この時ユウキは美亜の瞳を見てある事に気づいた。
この子はまさか.....。
瞳の色がホムンクルスと何となく似ている...でも何かが違う。
美亜はユウキに笑顔を見せる
ユウキはこう思ったこの子がどんな存在でも何も変わらない。
この子の笑顔を見ればわかる。理人という人に心から愛されている。
自分も理人という人と同じくらいミナを大切にしていこうと心から誓ったのであった。
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「美香がこの島に引っ越した後の兄ちゃんの話を、今じゃなくてもいいからさ。話せばきっと楽になると思うぜ?な?」
「ありがとう気持ちは嬉しいよ。でも多分信じられない話をすると思うよ。」
自分や美香さらには美亜、そして祖母がこの世界の歴史とは別の道をたどった未来の並行世界から転移してきたことなど彼らに話してもけして信じてはもらえないだろう。この時理人はそう思った。
「んな事話してみないとわからないぜ?話す気になったらちゃんと話してくれよ」
.......
座り込みうつむきながら理人はしばらく黙り込んでしまった。
「わかった。いつか必ず話すよ」
「兄ちゃん約束だぜ!」
「わかったよ。だけど美亜の事は今ちゃんと話すよ。彼女の事は何よりも大切に思っているよ。だけどあいつの代わりにしてしまっていることも自覚している。」
「辛いだろうけどよやはりそれは良くないと思うぜ?美香にも美亜にもよ..」
「....会いたいよあいつにさ....」
もう何十年も会ってないんだよ俺は...




