33話 遭難(そうなん)です
吹雪のため、破棄された施設の中に避難した理人と隆太はそのまま足止めを食らう形となってしまった。
「どうだ?何とかなりそうか?」
「いまこの施設内の電力系統にアクセスしているうまくいけば施設内のシステムを回復できるはずだ」
理人は施設内のPC端末を操作してシステムを回復できないか試しているようである。
「電力操作....システム系統...供給維持...アクセス系統異常なし...後はオンラインモードに移行..電圧固定異常なしこれで行けるはず」
「マジで頼む死にたくない」
すると施設内部が明るい光が灯されていく。
「た、助かったのか?」
「うん、上手くいったよこれで凍死だけは免れるよ」
「縁起の悪いことは言わないでくれよ兄ちゃん」
隆太は不意に苦笑いをしてその場をごまかそうとする
「何か食えるもん無いか探しに行かないか?さっき食堂みたいなところがあったのを見たぜ」
二人は食堂らしい部屋に入ると複数のテーブルと奥においてある大きな冷蔵庫を複数個目にする。
確かにここは食堂だったようだ。しかし空腹を満たせなければまったく意味がない。
二人は手分けして食べられそうなものを探す事にする。
理人は冷蔵庫の中から封が明かされていない完全に密封された食料を見つけた。
「これ..レーションかしかも結構な数があるぞ」
一方隆太はレトルトのような食料を見つけた。
「レトルトのスープか...でも火が使えなきゃ意味ないぞ」
さらに.....
「1分でキープ。ウォーターゼリー。飲み水にもなりそうだな」
とりあえず二人は飢えだけは凌げそうである。
二人はとりあえずレーションを食べる事にする。
「これお菓子みたいだな」
「災害などが起きた時の非常食として作られたんだよこれは。まぁ今の状況にはぴったりじゃないか?」
「食えるだけマシってわけだ」
ムシゃ!!ムシャ!!
.....
ごくり!!
........
「お菓子だなこれは....まあ不味くはないぜ」
「んじゃ俺はこっちのほうを.....」
理人はウォーターゼリーを口にして飲みだす
ごく..ごく....
「昔これと似たよなもの飲んだことがある...朝にのむやつ...とりあえずこれで喉はうるおせるかな?」
何とか空腹を満たすことができた二人だが。吹雪が落ち着くまではこの建物から出る事は出来ない。
二人はもうしばらくこの建物の中で凌ぐことにする。とりあえず飲むものも食料もある数日はなんとかなるはずだ。
「ところで兄ちゃんこんな時になんだがちょっと聞きたいことがあるんだが」
重苦しい顔立ちで隆太は理人を見つめる
「兄ちゃんにはどうしても聞きたかったんだ。もしかしたら兄ちゃんにとっては良くない選択をしているかもしれないと思ったからよぉ」
「いったい何の話だい?」
「なら聞くぜ?美亜の事だ」
「美亜がどうしたんだい?」
「付き合い始めたんだろ?お前たち」
「...ああ、そうだよ」
「本当にあいつの事が好きで付き合う事にしたのか?」
「......」
理人は隆太その一言で黙り込んでしまった。
「なあ兄ちゃん皆言葉には絶対にしなかったけど美亜は美香に似ている。というか瓜二つだ髪の色さえ違わなかったら多分俺も含めみんな美香と間違えていた。」
「奏花や理緒、ミディールさんだけじゃない学校の他の連中も皆同じように思っている。」
「.......」
理人は俯きながら黙り込んでいる
「兄ちゃんは美亜を美香の代わりにしているんじゃないのか?」
「何言ってんだい?俺と美香は兄と妹の関係だよ?んなわけないだろ?」
「兄ちゃん、俺は別に兄と妹の関係でも互いに納得した関係なら周りがとやかく言うことは無いと思っている。」
その言葉を聞いた瞬間、理人の目は精気が消え虚ろな状態へと変わってしまった。
「そんなこと言ったってどうしろと?あいつは何処を探しても見つからなかったあいつはいない。おれにどうしろと...」
あの日、美亜と同じ夢を見た彼だがすぐにあの塔らしきたてものを探したが結局その手掛かりは見つける事が出来なかった。その過程が原因か理人は完全に諦めかけている。
結果的に美亜という存在が彼の心の支えになっている状態と言えようか?誰も彼を責めることなど出来るはずもない。
「だからと言って美亜の気持ちも考えずにあいつにすがるなよ。それじゃ美香も美亜も.....可哀そうだ。それに...兄ちゃんもよ...」
その言葉に隆太なりの優しさを理人は感じた。
「会いたいよ俺もあいつにさ.....」
その一言に隆太はずっしりと重みを感じた。
「なあ教えてくれよ、兄ちゃんと美香がこの島に来る前はどんな暮らしをしていたのかを。今じゃなくてもいいからさ。」
「.....」
「なんで二人が離ればなれにならなければならなかったのか俺たちは何も知らない」
「....」
「美香がこの島に引っ越した後の兄ちゃんの話を、今じゃなくてもいいからさ。話せばきっと楽になると思うぜ?な?」
理人は隆太のその問いかけに少しだが心の温かさを感じた。