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Never Island  作者: 阿久津ゆう
4章 偽りの時間とホムンクルス
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31話 偽りでも愛情は本物

 ユウキは左手を見てみるとまるで火傷の跡のようなものが出来ていた。

凍傷だ。


 「私たちがあなたたちを見つけるのが遅かったらこんな傷ではすまなかったかもしれませんよ....何でこんな危険な日に妹さんと....」


 ユウキは美亜のその言葉に何も言い返すことが出来なかった。

本当のことを言えば大変なことになる。

島中に噂は流れ島にはいられなくなる。


 そもそもこの子は僕の言うことなど信じるはずがない。


 「食糧調達だ......それに薪も切らしてしまっていた。食料はまだどうにかもっていたであろうが薪はどうにもならなかった妹を連れて行ったのは.....この子を一人にさせるのは危険だと思ったからだ。側にいてくれた方がよっぽど安心だと思ったからだ。」

「だが僕の考え方が甘かった。危うく。この子をミナを死なすとこだった。」


 「せめてこの吹雪が落ち着くまではここで休んで行ってください妹さんのためにも...」


 「ああ...そうだな」

ユウキはうつむきながら思いつめた顔をのぞかせる


 「んん...?」

どうやらミナが目が覚ましたようである。


 「よかった....。」

ユウキは優しくミナの手を触る。冷たくてひんやりする。


 「兄さん......」

その一言にユウキの心が一瞬にして凍り付いた


 違う....ミナじゃない.....ここにいる少女は...ミナとは違う意識と自我か芽生えてしまった...。

見た目はミナとそっくりだが違う...ミナは僕の事を「お兄ちゃん」といつも呼んでいた。


 例えこの子の肉体がミナのものとまったく同じように作られたとしても芽生えた自我は別人。

それでもユウキは今ここにいる「ミナ」をけして離さないと誓った。

これがやってしまった行為の責任だと思ったからだ。


 「もう.....大丈夫だから....」


 ユウキは優しくミナを抱き寄せる


 そんな二人を微笑ましく見守る美亜。


 「そろそろ暖炉の薪を追加しないと、私、薪をもってきますね。」

「覚める前にそのスープ飲んでくださいね。おかわりもありますよ遠慮なくいってくださいね。」

そういうと美亜は2階の部屋に薪を取りに行く。


 ユウキは今自分たちがいる部屋を見回す。


 それにしても....

随分と立派な家.....というより屋敷かな?

壁には見るからに立派な装飾がされており綺麗な画が飾られている。

 

 「兄さん....せっかくだしスープごちそうになろ?」

お腹も減っているミナの言うとおりここはありがたくごちそうになる事にした。


 スープを飲みながらユウキはミナと自分たちの境遇にかんして話し合う事にする。

「いいかミナ?美亜ちゃんにはあの装置で眠っていたことは絶対に内緒だ。僕たちはあくまで買い物から帰る途中に吹雪に巻き込まれたことにするんだ、いいね?」


 ミナはうつむきながら険しい表情を見せる


 「私の病気を治したあの装置がばれたらまずいの?.....」


 「そうだ....ばれたらこの島にはいられなくるそれがどういう事かわかるよね?」


 「わかった....でも」

「私のために無茶だけはしないでね?..」


 「無茶ってなんで?」

ユウキは冗談交じりでクスッと笑う

「だって兄さんは私のために私の病気を治すために何年も無茶をしたんでしょ?」

「まったく記憶がない私でも兄さんが今まで無茶してきたことは私でもわかるよ...だからもう無茶はしないでね?」


 この子には真実を伝えるのは酷な事で残酷な事だと思った。

この子は自分が「ミナ」だと思っており僕の事を兄として見てくれており本気で僕の事を心配してくれている。


 痛い心が痛い。

 

 ---------。


 「もう.....。」

「--------。」

「無茶なんてすることはないよ」

「ミナがこうしてちゃんと立って歩いて喋れているのだから」


 ユウキはミナを優しく抱きしめるとミナはそれを受け止める


 この偽りは僕が責任をもって守る。

彼は誓う。

彼は守る。

偽りの時間を守るために。

時が二人を分かつまで。

その愛情はけして偽りではないのだから。



--------------------------------------------------------------------


 「おい!!兄ちゃんよやばいぜ氷点下15℃を下回ったぜ」


 「もう少しの辛抱だ。この先にミディールさんの研究所がある。そこでこの吹雪が止むまでしばらくは待機だ」


 「なななな....何でコンナ事に!!」


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現実世界〔恋愛〕
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