28話 偽りの時間を求め
島の市内にとある兄と妹がいた。
二人は貧しいながらも協力して二人で生きて来た。
二人が幼い頃、両親は二人を捨てどこかに去ってしまった。
二人はとにかく力を合わせて協力して生きてきた。
真冬は二人で寄せ合いながら。
お腹が減ったときは少ない食料を二人で分け合いながら協力し合った。
ある日の事だ妹がいきなり血を吐き倒れてしまった。
唐突に起きたこの事態に兄は妹の姿を見て忘れていた記憶を取り戻した。
両親は二人を捨てたわけでは無かった。
あの日父は病魔に伏せた母を助けるために市内の病院に行くために母を抱きかかえて吹雪の中に消えた。
そうだーーー。妹もまた母と同じ病気にかかってしまったのだ。
兄はとにかく妹を助けるためになんでもした。
妹を市内の病院に入院させた。
妹のために働いてお金を稼いだ。
しかし兄の想いは届くことなく妹は天に召されてしまった。
「.......」
兄は妹のお墓の前でただ立ちすくんでいた。
それから数か月がたったある日。彼は図書館である一冊の大きな本を見つけた。
人の手で人工的に人の姿の生命体を作る方法。「ホムンクルス生体作成」が書かれた書物である。
兄は本に書かれていたホムンクルスの作成に想いを持ち始めた。
ホムンクルスの作成には人の髪の毛が必要であった
髪の毛は男性の物か女性の物かでホムンクルスの見た目の性別が決まると書かれていた。
その後に書かれている文章は黒く塗りつぶされ読めなくなっている。
兄は妹の髪の毛を使う事にした。
既に心は決まっていた。
たとえそれが形見であってもだ。
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島のはずれにあった無人の研究施設。
本にはホムンクルスを作る場所であったことが書き示されてあった。
兄はその場所を探し出し、ホムンクルス生体の作成に必要な全ての材料を研究施設に持ち込みその場所を拠点に行動を始めた。
ホムンクルス生体の作成に必要な材料、「素材」という。
必要な素材は全部で3つ。1つ目は作りたいホムンクルスの人格を形成するために必要な記憶を持った人。これは兄そのものが受け持つことになる。兄は自分の中にある妹の「思い出の記憶」を素体にするつもりだ。二つ目は人の骨。つまり人骨である。兄は妹の遺骨を素体に選んだ。そして最後は人の髪の毛。これも妹の形見の髪の毛を素体に選んだ。
兄は3つの素体をカプセル型の機体に入れpc端末機を操作しホムンクルスの制作を開始する。
「やっとこの時が来た.....やっと...やっと...」
カプセル型の機械の中は青白く光りだし人の形が形成されていく。
兄はカプセル型の機械に同線で繋がれたヘットフォンのようなものを付けて妹の「記憶」思い浮かべるとその「記憶」が人に形成されていく存在に流れていく。
しばらくすると顔が形成され身体も完全な人の形に形成され普通な人間と大差ない見た目となっとなった。
「ミナ.....ミナ....今度はきっと...」
兄はカプセル型の機械にガラス越しに手をやり妹の名前を呼び出すと泣き崩れる。
しばらくすると青白い光が眩い白い光に代わると端末機のメッセージ欄に「生体作成率100パーセント」とうつしだされるとカプセル型の装置が「しゅぅーーー!!」と音を出し蒸気が勢いよく噴き出してくる。そしてプシュン!!と音を立ててカプセルが開く。
機体の中には兄の年齢から一つか二つほど年齢が年下ぐらいの少女が横になっている。
「やった.....成功だ...」
兄の顔は涙でぐしゃくじゃになっている。
少女は目を覚ましすと周りを見回し兄に顔を向け彼に問いかける。
「ここは何処?....私何も覚えてないの....あなたは誰?なんで泣いてるの?」
すると兄は少女にこう答えた
「僕の名前はユウキ。君の名前は「ミナ」僕は君のお兄ちゃんだ。この涙は......うれし涙だ。君が無事に目を覚ましてくれたからだよ。
これは偽りの時間を正す物語。
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ザー。ザザサーーービビーーガガーー(ノイズ)
「アーーテステス!!聞こえるーか~兄ちゃん!!」
「あー聞こえるぞ~それでどうだ?」
「ミディールさんから教えてもらった研究施設の一つ何だがやはり何者かが起動した痕跡があったぞ」
ここから四章突入となります。
26話からずいぶんと更新に期間の差が出ていますが前回話している通りある程度原稿を改稿しながらの更新となっているのが原因となっています。そこのところご理解いただけると幸いです




