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Never Island  作者: 阿久津ゆう
2章 めぐる日々
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17話 将来

理人と美亜は、もどかしい気持ちを胸に抱きながら学校に通い続けた。

奏花 隆太 理緒の三人は今まで通り二人の良き友として接し続け、美香の捜索にも積極的にかかわり続けた。


理人はいろいろとノイローゼとなっていた。

美亜への気持ちと美香への想いに板挟みとなり悩みを抱えていた。

そして先日の隆太たちへの自分勝手な想いをぶちまけてしまった事。


彼は何も悪いことはしていないし悪いことを言ったわけではない。


そう誰も悪くはないのである。

理人はこの一連の出来事を忘れようとした。

これからもみんなと一緒にいたかったからだ。

そうしなければならなかった。

それが「彼ら」にとって一番良い選択なのだ。

一連の騒ぎは時間が経つにつれて糸がほどくように周囲の記憶から別れ去られていった。

しかし、それでも理人自身の優しさをけして彼らは忘れることはなかった。


そして数日がたった.......。


理人 隆太 理緒の三人は、暇な時間は釣りをして食糧調達をするのがここ最近の日課となっている。

だいぶ慣れたのか、一日で数匹釣れることもあるほど上達した。


「お!!今日の中では一番、大物でレアものだぜ」

スズキ キダイ アジ 鯛。さきほど隆太が言っていた大物でレアものとは鯛の事である。

結構な量が釣れた。学校に存在する3つの噴水のうち一個は海と繋がっているため海水が出てきているそこに放流すれば生きたまま保管できる。

これで数日分の食糧となる。


こんばんは大量に釣れたため晩食は学校でみんなで食べる事となった。


「ふふ...この鯛を美味しく料理しさばいて見せよう」


理人は得意な料理のテクニックを披露するときが来た(あくまで趣味で家庭的に身に着けていた模様)

まずは豪快に鯛をさばきお刺身にそして、残った部分は出汁と野菜で煮込み特性鯛汁の完成である。

とくに鯛汁はなんの調味料も一切使用していない文字通り鯛そのもののダシと野菜だけで作ったのである。


「す...すげぇ...理人ッち...まるでプロの料理人みたい」

理緒がびっくりするのも無理はないだろうこの限られた食材でここまでやってのけたのだから


「兄ちゃん、コンピューターの操作しか取り柄が無いと思っていたぜ」


「あとピアノも弾けるよ」


「兄ちゃんマジか?」

これも趣味で始めたものである、ちなみにこれも趣味で始めたもの。

彼が得意とする曲は「戦場のクリスマス」。

「すげーなー兄ちゃん...天才かよ」


その日の晩食は大いに盛り上がった。


「私ねいつかこの島でレストランを開くのが夢なんだ」

食事をしながら理緒は自分の将来の夢を語りだした。


理人 美亜 奏花 隆太 理緒の5人は同じテーブルで食事を共にしていた。


「私のパパとママはパスタ専門の料理人だったんだ」

「私がまだ物心ついたばかりの頃にこの島に移住してきたんだけど。この島でパパとママはレストランを開いて頑張ってたんだ...でも...」

「3年前に二人とも事故で無くなっちゃったんだ」

理緒の両親は車の衝突による事故死だったという。

しかし運転していた人間は無免許運転であった。

これが原因で理緒の心は一生癒える事のない傷を負い続ける事となった


理人は理緒の話を聞いていくうちに脳裏に自身の両親が浮かび上がってきた。


「俺の両親も車の衝突による事故で亡くなったんだ」

理人の両親の場合は犯人は事故直後に二人を見捨ててそのまま逃走し結局そのまま見つからなかったという。


「理不尽だよなほんと..」

「何も悪いことしてないのにさ」


理人の両親は彼が幼い頃に亡くなっているため理人自身は両親の事をほとんど覚えていない。

両親死後、理人と美亜は那智の下で暮らしていた。

実のところ、料理の技術やテクニックは両親のいない家庭の中で自然と身に着いたものであった。


「なるほど、それで兄ちゃんはいろいろと器用なんだな」

「俺何もとりえなくてさ、兄ちゃんがよければ、PCやそういった技術を教えてほしいんだけどさ」

隆太は照れながら理人に言いながら鯛汁をずず~と吸い込む


「いいよ、俺でよければ教えるよ」


「ほ!!ほんとか!!」

隆太はこぶしを握りしめ「よし!!」といって大はしゃぎする


その後夜も更けた頃に現地解散となった。


隆太マジで本気だったみたいだな。

俺が教える側の人間になるのか。

何か不思議な感じがするな。

とりえがないか....俺なんて単に運がよかっただけだもんな。


その後屋敷に戻った理人と美亜はシャワーを浴びた後に就寝に着こうとする


言っておくが二人は「あの日」からずっと同じベットで寝ている。


(暖かい柔らかい......落ち着く.....)

美亜とこうして眠るようになってから理人は普通に眠れるようになりつつあった。


美亜は何も言わずに理人のことを受け入れていた。

彼女は理人の気持ちに気づいているのだろうか?


美亜は彼の胸の中ですぅーすぅーと小さく息をしながら寝ている


(大丈夫、私がいる)

(私がこの人を守る)

(だって私の居場所はこの人だから)

(だって生まれて初めてできた私の帰る場所だから)


二人の眠りと共に夜は更けていく


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現実世界〔恋愛〕
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