15.5話 残された想い
私は理人さんの主治医として、彼をグロウダイバーとしてその旅たちを見送ったあの日から3か月が過ぎた
私は彼だけでなく、祖母の那智さん、妹の美香さんの旅たちを見送った。
那智さんは私にとってのあこがれの人だった。
余生の短い人たち、そして病気で余命の宣告を告げられた人たちを救済するためのプログラム。終末医療プログラム「グロウベルグシステム」の開発者の一人。
人の意識をバーチャル世界に送り込んだ後、仮想プログラムで設定した後に新たな肉体をプラグラム設計した後に意識と魂をほかの世界に転移させる。
その先端の技術を作り出した。
人類にとって目覚ましい進化である。
彼女はその能力と技術を発揮し目覚ましい成果を上げた。
そんな彼女は人生を全うしその寿命を芯まで使い切り老衰で亡くなった。
私はこの3人の阿久津家の人間を支えてきた。
那智さんは私のあこがれの人でもあったが理人さんにはまた違った想いがあった。
いわゆる友情だ。
妹の美香さんを見送った彼は本当に辛かったと思うしその時も彼は気丈に振舞っていた。
私はそんな彼を見てこの人には心の底から支えられることができる友人が必要だと思った。
だから私は美香さんが行った後も彼と交流を続けた。
しかし、結局私は彼の知り合い以上の友人にはなれなかった。
彼の冷たい氷のような心には私では到底太刀打ちできなかった。
彼がガンに侵されていることが発覚した時私は真っ先に彼のもとに駆け付けた。
彼自身私の事をどう思っているかはわからないが。少なくとも私は彼の友であり続けたいと思っていたからだ。
彼の体は既に施しようのない状態の末期ガン、ステージ5の状態であった。
私は彼に終末医療プログラム「グロウベルグシステム」が適用可能だということを告げた
「ああ....やっと妹に会える......」
彼は涙しながら心底安堵するような表情をしていた。
妹さんが亡くなって35年間本当に辛く苦しい人生だったのであろうか?
私は彼の病気を治し救いたかった。しかし私の力ではどうすることもできなかった。
末期ガン、それもステージ5。この状態を直すことは至難な業である。
「あなたは兄として最後まで責任を果たした...僕はあなたを心から尊敬します。」
私はこの時、彼に本当の気持ちを打ち明けるべきであったと後悔した
「責任なんてとんでもない...私は逃げ続けた。妹のいないこの世界から」
そんなことはないあなたは逃げてなどいない。あなたはちゃんと現実を直視し生きていた。
「それでもあなたは美香さんとの約束を守っています。今もこれからも」
「あなたたち兄妹の主治医としてあえたことを心から感謝します。」
これはまぎれもなく私の心の本心だ。しかし....私はここまでしか言えなかった
年老いた理人は軽くふっ!と笑い「ありがとうと答えた」
「妹だけでなく私の主治医にまでなってくれて本当に感謝する先生」
私は彼のこの言葉を聞いて救われた気持ちと共に悔しい気持ちと共に後悔だけか残った
私は彼の友達になりたかった。
腹の底から笑い合い悩みを打ち明ける事の出来る本当の友に
.............
多分、これをやらなかったら一生後悔することになるだから私は....
私の名は、甘夏目総士
彼の友である事を望んだ男である。