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Never Island  作者: 阿久津ゆう
2章 めぐる日々
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15話 分岐点

 ちゃぷん!


 「全く釣れないな」

釣り竿をかざしながらため息をつく理人

 理人 理緒 隆太の三人は食糧調達のために魚を釣りに港まで来ていた。 


「つれないな~」

理緒はむす!!とした顔で釣り竿をかざしている。


 「しかたねぇなー場所変えようぜ」

「他にもポイントがあるんだ案内するぜ」

 隆太はそういうと立ち上がり二人を次の釣りのポイントに案内する


 食糧不足を少しでも解消するため彼らは魚を釣って何とかしようとしていたのである。

しかし、全く釣れず苦戦中である。


 早朝の事である隆太が昼食に関して話し出したのである。

「兄ちゃんのシチューも好きだけどよやはりそれだけでは栄養バランスも偏るからよ」


 隆太の言うことは間違いわない。

理人が学校に転校してきてからはほとんど昼食は野菜と果物と理人が作ったシチューである。

 理人が来る前は、那智が食事を提供していたが彼女が亡くなってしまったため今現在は自給自足で飢えをしのいでいる状態である。


 3人は場所を変えて再び釣り竿をがさす


 「ち...まったく釣れないな...」

隆太は完全にふてくされて釣りに集中できないでいる


 「...ぴくん!あ逃げられた」

理緒は隆太とは違い真面目に釣りをしているようだが餌ごと持っていかれているようだ。


 「...........」

理人は完全に無表情で釣り竿をかざしている。たったいま餌を取り換えるようであるこれで本日10回目の餌の交換


 「ダメだ釣れない」

 

「兄ちゃん眼が死んだ魚の目みたいになってるぜ」


 「理人ッちいろいろ物知りでコンピューターには強いけどこういうことは苦手だよね」


「すまない....俺は力仕事とかこういうたぐいなものは本当に苦手なのだ」

頭を抱えて悩みだす理人


 二人の言うとおりである理人は非常に頭もよく物知りで料理なども得意ではあるが、力仕事は苦手で非力なのである。

 このところは前回の人生でも同じであった。


 前回の世界での彼の人生の小中高生時代の彼の成績は学年およびクラスでもトップクラス。特に高校時代ではコンピューター関連の成績は3年間を通し学年トップであった。キーボウト早打ち検定を最上級の物を会得したほどである。

 しかしそんな彼も完ぺきでは無かった。


 「......今回も体育の成績は、耳(3)か......(ちなみに成績表は5段階)」


しかもそれだけではなく.......


 「お兄ちゃんて成績もテストの点数もめちゃくちゃいいんだけど100点取ったことないんだよねwww」


 「ぐ..ぐぅぅぅぅぅう」


やばい変な事を思い出してしまった。


 彼にとって非力なところ小中高生時代をとおして成績はトップクラスだったのにもかかわらず100点を取ったことがないのは痛い思い出でもあったのである。


 「ああ!!理人ッち!!!竿が!!ひいてるよ!!」

理緒が慌てて理人の釣り竿に指をさす


 「ぬぬ....(ぐぎぎ..)隆太!!網を早く!!」


 「あいよ!!兄ちゃん!!」

理人が釣り上げた魚を隆太があわてて網でキャッチする

 しかしその瞬間彼らの表情は絶望へと変わる

釣り上げたのは何と....

 フグであった...


 「...毒があるのは肝の部分だそこの部分を切り取れば」


 「やめんか!!!兄ちゃん流石にそれは無理があるぜ!!」


 フグはちゃんと逃がしてあげました。


 結局その日の戦利品は0、フグをキャッチアンドリリースしただけである。

「学校戻ろうぜ...もうくたくただぜ」


 その日の晩食は学校で生徒一同そろって食べる事となった。

今後の食糧問題に関しての話し合いもいやねて作戦会議を開きながらの晩食となった。


 「みんな聞いてくれ食糧危機の問題に関してだが、資金的な問題で解決させるなら何とかなりそうだ」

生徒一同いきなり静まり返る。


 「いいか?このカードは俺の婆ちゃんが俺と美亜に託したものだ。このカードの中の金額を見たら爆大の金額が入っていた。しかし....」


 美亜を含む生徒一同が真剣なまなざしで理人の話を聞いている。


 理人は美亜が眠っていたコールドスリープ装置の中に手紙と一緒にクレジットカードが置かれていたことを皆に説明した。


 ちなみにこのクレジットカードは預金通帳と一体型の物でいわゆるデビットカードであった



 この子を起こしてくれたのならどうかその子を守ってほしい。

そして何があっても悲観しないでほしい。

 明けない夜明けなど存在するはずがないのだから。

大切なのは心、そして退かぬ(ひかぬ)想いだ。


 「婆ちゃんはこう言っていた。「大切なのは心、そして退かぬ(ひかぬ)想いだ。」と」

「俺は美亜だけでなくここにいるみんなの事も婆ちゃんは俺に託したんではないかとそう思っている」


 理人が言うこともあながち妄想では無かったようである。


 カードに入っていた預金は爆大な金額。どうやらこれ、あの婆さんの遺産そのものであったようだ。


 島の民から賢者と呼ばれていた彼女は理人の性格を的確に読んで自身の遺産を彼に託していたようである。


 「でもその遺産は間違いなくお婆さんが理人君に相続させたもの。そんな事、理人君が思ってるだけで証拠なんてないよ」

 「そのお金は理人君や美亜ちゃんや美香ちゃんのために残したんだと思うな。でないと理人君宛てに残したのはつじつま合わないし。」


 奏花の言うことは間違いはない。この遺産は間違いなく祖母、那智が理人に相続させたもの。那智がどう思って理人に遺産を託したのかはもはや知るすべがない。真相は闇の中である。


 「そのお金は理人さんの物だし、それに理人さんは美亜ちゃんと暮らしているんだから今後の事も考えたらそのお金は自分たちのために使った方がいいと思うよ」


 クラスメイトの女の子の一人が理人に意見を言うと周りの生徒もいろいろと意見を言い出す。


 「僕たち、お婆さんに頼ってばかりだったし、自立の時だと思う。自分の力で生きていくべきだと思うんだ」


 「私たちお婆さんにずっと頼り切っていた。その重荷を理人さんにまで継がせるのはちょっと違うと思う」


 わいわいがやがや!!!


 教室じゅうが慌ただしくなっていく。


パンパンパン!!


 隆太が両手をパンパンと叩くと教室がいっきに静まり返る。


 「兄ちゃんのその優しさは俺たちはすっげぇー嬉しいよ。でもよはき違えんじゃねぇーよ、その金は兄ちゃんだけのもんじゃーねよ」

 「兄ちゃんと美亜、それに美香のもんだそれにだ」


 .........。


 「それにだ俺たちゃ美香を助けに行けなかった。あの時ここにいる全員がシェルターに集まってたんだぜ」


 ..........。

 





 「俺たちには助けてもらう資格なんて無いんだぜ」




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現実世界〔恋愛〕
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