11話 託された想い
「兄ちゃんよぉ、いきなりは無理だと思うけどよちゃんと現実受け止めようぜ」
そういうと隆太は理人の背中を手にする
「さっきも言ったが美香は生きてる、皆そう信じてるからさ」
「兄ちゃんがそれじゃ駄目だぜ」
隆太は理人に手を差し出し立たせようとする。
理人はその手を手にして立とうとする
「理人ッちー私も力になるから何でも言ってよね」
理緒はそういいながら笑顔を見せる。
今ここにいる面子では多分一番幼い、ほんとうにしっかりした子である。
「すまない...もう大丈夫だ」
理人は彼らのその一言一言がすごく心強くて仕方が無かった。
思えば前の世界では友達という存在は一人もいなかった。
本当に孤独であった
美亜は理人の手を握り静かに目をつぶり祈るような理人に仕草を見せる
なぜか理人は心が癒されるようなそんな感触がした
「ところでよ兄ちゃんよこのちっこいやつの事で聞きたいんだけどさ」
「奏花から話聞いたんだけどよこいつ本当に2年間もコールドスリープ装置とやらに眠っていたのか?」
「本当だよ私も理人君もその装置の中で美亜ちゃんが眠っていたのを見つけて、理人君が起こしたんだよ」
無理もないこんな非現実な事、信じられるはずがない。しかし事実なのである。
「美香の奴がこの島に来たのは今から2年前。で、話の推測からして美亜がコールドスリープ処理されたのがちょうど二年前」
隆太が推理をするかの如く説明し始める。見た目とはうらはらにかなりこういった話には頭が回るようだ。
「つまりだ~美亜と入れ替わるような感じで美香が島に来たようにも見えるんだが何か気にならないか?」
「たしかにあまりにも偶然にしては奇妙な感じがする。」
「それに美亜は美香がこの島に来る前から何年も前からこの島で婆さんと暮らしていたはずだ。なのにだれもこの島の人たちは美亜の事を知らない」
「そういう事よ、そこのところちょ~とばかし調べてみたら何かわかることがあるんではないかと思うんだけどよ」
調べると言われてもどこをどう調べればいいのかどうすればいいのかわからなかった理人だが不意に美亜がコールドスリープ処理されていたあの装置がおいてある屋敷の地下室が脳裏に浮かんだ。
間違いない今調べなければいけないのはあの場所だ。
理人は美亜がコールドスリープされていたあの地下室の話を隆太に詳しく話す。
そして話しているうちにあの部屋にあった謎の非常電源の装置のようなものがあったことを思い出した。
よくよく考えてみれば今の段階ではあの部屋が一番怪しい、というか怪しすぎる
調べてみる価値はある。
5人は屋敷の地下室に向かい。部屋の隅々まで捜索する。
「おい、ほんとにこれなんだよな間違いないんだな」
5人は美亜がコールドスリープ処理されていた装置の前に佇んでいる
「この中に美亜っちが数年間も眠ってた?本当に?」
理緒は物珍しそうに装置の周りをじろじろと見る
「おいこれまだ普通に使えんのか?」
物騒だが装置はどこも故障していないので絶賛現役でまだまだ使える。
誰かがこの装置に入り問題なく外側から誰かが操作すればコールドスリープ状態に入る
「普通に使える、が、普通何もないのに使うはずがない、ていうかコールドスリープされた人間はいろいろと負担がかかるそんな簡単に済む問題ではない」
それもそのはずもともと体が弱い美亜は負担がかかっていた状態で医療用回復システムの処置が必要だったのにもかかわらずされなかったことで一大事になるところであった
「おい兄ちゃんよ画面操作してたらちょっと履歴みたいなもん見つけたんだがどうなってんだこれ?」
2008/1/25/-2010/3/27
「ちょ!理人ッち!!こ!!!これって!」
理緒がけたたましく悲鳴のような大声を張り上げる
無理もないこれは美亜がコールドスリーブされていた期間を示すものだ
美香が転移されてきた時期と美亜がコールドスリープされた時期がほぼ同時期に被っていた
2年もズレこんでしまったが俺は、美香が転移した場所の座標と時期に合わせる事でこの世界に転移してきた。だから絶対に見間違えるはずがない。
時期から合算すると美亜とほぼ入れ替わるような形で美香がこの島にアイランドに転移してきた事はもはやほぼ確実である。しかしそうなるとやはり色々おかしいところがある。そもそも美香が来る前は婆ちゃんと美亜は間違いなく一緒に暮らしていた。しかし先ほども話した通り、隆太達は美亜の事は何も知らないどころか島の住民の人たちは美亜のことをしる人は一人もいない。これはどういうことか?謎が深まった。
そもそもなぜ美亜をコールドスリープさせたのだろうか?
「おい、コールドスリープ装置の中に入っていたぞ」
隆太が見つけたものは一つの封筒である。
封筒には「理人へ」と書いてある。
そして手紙が入っていた。
「------つっ--。」
この子を起こしてくれたのならどうかその子を守ってほしい。
そして何があっても悲観しないでほしい。
明けない夜明けなど存在するはずがないのだから。
大切なのは心、そして退かぬ(ひかぬ)想いだ。
お前は途方もない年月をかけて美香のためにこの地にやってきた。
だからその意味はわかるはずだ。
顔をあわしこの事態を話せればどれだけ楽だったのだろうか?
本当に申し訳ないと思っている。
このカードは好きに使っても構わない。彼女の身分証明書も一緒に入れておく。
どうか後の事をよろしく頼む。
「......っ...。」
封筒の中には祖母、那智の名義のクレジットと美亜の身分証明書が入っていた。
「ああ...守ってやるよ」
美亜は守る、俺が守るそして必ず美香を見つけ出す。
そして三人でこの屋敷で新しい人生を歩むんだ。
世界の色それは人それぞれ色合いは違い意味合いも違う。
いま理人はここから第2の人生が始まりそして人生の色を形成していく事となる。
妹、美香を心の底から愛する理人、病魔に侵された美香をグロウダイバーとして最初の人生を捨てさせることで新たな地に転移させそしてその地で再び再会を約束する。
自身は長い年月を生き末期ガンに侵されグロウダイバーとしての権利を得ることでようやくその地に辿りつぐ事に成功するが妹の姿はなく行方不明に、その世界ではなぜか前の世界で老衰により亡くなったはずの祖母がその世界で存在しており、自身が転移する数週間前に病気で亡くなっていた。
自身が予定通りの時期に転移していれば美香は行方不明にもならず祖母の2度目の死に目にもまにあったはず悲観するそんな彼に救いの手を差し伸べる者たちの姿が。そして祖母と共に時を同じくした少女、美亜、彼女の存在は理人にとってかけがえのない存在として彼と同じ時を共に歩んでいく事となる。
彼にとっての世界の色を形成する第二の人生はまだ始まったばかりである。
第一章はここまで次回からは2章に突入です