80話 「旅立ちの日へ」
エアーダーガルの修理は急ピッチですすめられた。6日で修理を完了させるところを3日で終わらせるスケジュールだ。
食料は例の研究施設にあったレーション系の物が大量に残されていたためそれを利用する形になる。
A級ブリザードがあの一件以降も何度も島を直撃し避難施設に食料を供給するのでやっとなためこちらに手が回せない状態にある。幸いにも研究施設にあった食料は相当な在庫があっため日本への片道分は賄える。
まさに片道切符のノアの箱舟状態にあり縁起でもない状況であるがひくこともできない状態である。
何としてでもwindowsのバージョンアップの権限を入手しこの島に戻ってこなければならない。
でないとこの島は、いや、この国は滅びを待つのみとなってしまう。
彼らは今避難施設のシェルター内で日々過ごしている。
エアーダーガルの修理もシェルターの中で行われている。天候は日に日に悪化していく一方だ。
「なあ?俺たちこの島から脱出する形になるなんて事にはならないよな?」
「縁起でもないこと言わないでよ」
「とにかくミディールさんたちがエアーダーガルの修理を一分でも早く終わらせることを祈るしかいまの僕たちに出来ることは無いよ....」
「みんなちょっと地図を見てほしいのじゃ」
ラピズがアイランド島と日本が描かれている地図を持ってきてある位置を指でさす。
「日本に行く途中にこの付近に日本が作ったと思われる何かしらの研究施設があるのじゃ。この場所で食料やら飲み水やらの物資を補給できるはずじゃ」
「おまえ...何でそんなこと知ってんだよ....」
「かつてこの場所にわらわたちは行ったことがあるのじゃ」
「言った事があるって....おまえ」
「詳しい事は今話すより道中に話したほうが良いと思うのじゃ」
「ラピズちゃん、あなた最近何か無理してない?内緒事を抱え込んでいてもロクな目にあわないよ?」
「........。大丈夫じゃて!みんなを裏切るようなことは一つもしていないからそこんとこは安心してほしいのじゃ」
ラピズが何かを隠していても彼女が隆太や理緒を悲しませるような事はぜったいにしない。何か重大な事を話せずに悩んでいるのではないのだろうか?
もしかして二人のお母さんは?......生きているのか?
エアーダーガルの修理が始まり二日が経った。いったん各自自宅に戻り出発の準備をするために持ち物を運ぶ事となった。
理人 美亜 ユウキ ミナは屋敷に戻り手探りでもっていく荷物をかき集めていた
「僕とミナの荷物はこんなところかな?」
「俺と美亜の荷物も準備が出来たよ」
荷物を車の中に運び込む。
「また吹雪いてきたな。車の中に荷物を入れ終わったらさっさとシェルターに戻ろう」
車を運転しながら周りの風景を見回す理人。彼はある光景を見て一度車を停車する
「理人さん?どうしたの?」
港だ俺がこの世界に転移され降り立ち始めて地に足をついた場所。
まだ数か月しかたっていないのになぜ懐かしく感じるのだろうか?
「もう一か所行きたい場所があるんだけどいいかな?」
理人はあの場所に車で移動した。
公園だ。美香の居場所を探すために公的な施設を探している時に偶然見つけた場所だ。
そういえばあの時は沢山の子供たちが遊びまわっていて端っこの椅子に老人が座っていたっけな?あの老人から役場の場所を教えてもらって。それが全ての始まりだった。
あの時は子供たちが遊んでいて活気があったが今は誰もいなく寂れた状態にある。
あの活気を取り戻すためにも失敗は許されない。
その後4人はシェルターに戻りもってきた荷物を確認する。
「すまない忘れ物をしたので屋敷に戻りたい。すこし一人にさせてくれないか?」
理人は美亜 ユウキ ミナを残し一人車を運転して屋敷に戻る
天候は珍しく風もなく曇りの状態だ
理人は思い出に浸るように一人屋敷の門を開けて入る
美香が好きだった花は今は枯れて萎れている。
婆ちゃんが好きだった盆栽はいまだに力ずよく健在である
庭の真ん中にある噴水は全体的に凍っている
俺は本当は日本にはいきたくなかったこんな事をしている暇があったら美香を探す事を優先したかった。
理人は美香の部屋に入りなんとなく机の中にあるものをみたりアルバムを見たりする。
まるで遺品を見ているような感じがして嫌悪感を感じた。
ひょっとしたらもう帰ってこれないかもしれない。
そんな事が彼の脳裏によぎった
これは?.....
理人は机の引き出しの奥に置いてあった封筒を手にする。
封筒には「お兄ちゃんへ」と書いてあった。
中には一通の手紙と指輪が入っている。
お兄ちゃんへ無事にこの世界に来られて本当に良かったです。
私が行方不明になって本当に困っていると思います。本当にごめんなさい。
でも私は多分無事だと思います。
私と瓜二つの女の子美亜ちゃん。どうか何があってもこの子を恨んだりしないで上げてください。
どういうことだ二人は俺がいない間にあったことがあるのか?
今でも私はお兄ちゃんと再会することを楽しみにしています。
ちゃんと再開できたら3人で仲良く暮らせたらいいと思ってます。
だってこのこお婆ちゃんの義理の娘さんだから私たちの家族でしょ(笑)
皆とは仲良くなれましたか?多分お兄ちゃんなら大丈夫だよね?
私は大丈夫だから安心してね。それじゃまたね。
..............。
なぜ転移される時期がずれたのだ。
予定通りの時期に転移されれば.....きっと。
..............。
理人は机の片隅に放置されていたネックレスを見つけそれを手にし指輪をネックレスにつけあと首に付けた。
そして出発の日が来た。
「皆覚悟は良いな?もう後戻りはできない」
「覚悟は出来ているのじゃ」
「心残りはないよ」
「さっさと行こうぜ日本へ」
一行はエアーダーガルに乗り込む
運転の仕方は車の運転とまったく同じだ。おれとミディールさんで交代しながら進むことになる。
いよいよ凍てついた海を渡るときが来た。もう後戻りはできない。
彼らは凍てついた海を進む。滅びに抗う戦いが今はじまったのだ。
遂に日本への旅路が始まります