73話 償いの時へ
どれだけの時間がたっただろうか。
私は彼女の魔法で長い時間を睡眠状態にさせられていた。
私の手元には一つの封筒が置いてありその中には手紙と思われる便箋が何枚か入っていた
目を覚ましたときには既に二人の姿は無かった。
とにかく私は二人を探した。シェルター中を探し回った。
何処を探しても二人はいなかった。
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「建物内の警備はおもったより手薄のようだな?」
「好都合なのじゃこのまま地下通路から宮殿に入るのじゃ」
目指すはヒュポレボレアス宮廷にある封魔陣衛を展開させるための施設
そこにある装置に直接俺たちのアニマを流し込み無理やり防壁陣を展開させる足りないアニマの量は俺たちの寿命で補う。これで2週間の時間は猶予が出来る。
俺の命をもって償う。
2人にあったであろう人生と時間を壊してしまった償いを
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俺は........自分が間違っていることは自覚しているそれでも美亜に側にいてほしいと思っている。
彼女とちゃんと話し合い向き合わなければならない。
彼女のぬくもりを感じる。その中に確かに感じるあいつの、懐かしい面影を。何故この子に美香の面影を感じるのだろうか?俺にはどうしてもわからなかった。
ずごごご!!!!!!!!!
急にいきなり建物が揺れだした。
いやこれは島そのものが揺れている。
いったい何が起きている。
「若!!ここにいたのですか!!!」
「この事態は一体なんだ?何が起きている?」
「わかりません!!しかしヒュポレボレアス宮廷の上空を中心に封魔陣衛と思われるものが展開しているのが確認できました」
どういうことだあのPCは完全にロックをかけシステムそのものもシャットアウトさせていたはずそもそも陣を展開できるほどのアニマの量はないはずだ。
理人たちは地下通路をとおりシェルターの施設に出た。その直後に隆太とラピズを探している理緒の姿を目にする。
「理緒!!無事だったのか!!」
「理人ッち大変だよ!!隆太ッちとラピズッちが!!!」
「何があった?とにかく落ち着いて話せ」
理緒から話された話の内容は騒然とたるものであった。
そして隆太が残した手紙がこれだ
兄ちゃんがこの手紙を読んでいる頃は俺とラピズは人柱となる形ですでにこの命は無いものだと思います。俺の事が憎いと思うならどうかこの手紙を読まずに燃やして捨ててしまっても構わない。
(なんだこれはまるで遺書じゃないか)
俺はあいつがこの島に来てから常に側にいたあいつの友達として。なのに俺はあの時行方不明になる直前に側にいることが出来なかった。俺が油断をしたことでこのような事態を起こしてしまった。
俺は美香から兄ちゃんが来ると聞いて初めて同性の同年代の友達が出来るとほのかな想いを抱いていた。なのにこのような事態を招いてしまった。
(なんで?どうして?あいつがそこまで思い詰める?あいつだけの責任ではないのに?自分の命の引き換えに時間を稼ぐ?何を言ってるんだ?)
俺は兄ちゃんが手にするはずだった者を手にしてしまいました。本来ならこの幸福で幸せな時間は兄ちゃんが手に入れるべきでした。
俺はどうやってもラピズを手放せない失えない離せない。
俺たちは二人で話し合った結果俺たち二人の命をもって罪を償います。
俺は歩むべき道とは違う道を歩んでしまいました。手にしてはいけないもの感情。心。
ハッキリ言って怖いです。このような気持ちを兄ちゃんは35年も抱え苦しんできた。俺には到底こんな事は無理です。
ドクン!!!
理人の心臓は一気に膨れ上がるように鳴り響く
(何故バレた?)
怖いんだ苦しいんだ失うのが。
胸が痛いんだ心が痛いんだ泣きたいのに涙が出ないんだ。目が熱くてカラカラして充血する
せめてラピズだけでも助けたかったがどうにもなりそうにもありません。
結局俺は最後まで手放せずに持っていく事になります。
だから俺たちは地獄に行きます。
俺たちが犠牲になる事で少なくとも2週間の時間は猶予できます。
恨みの対象は俺一人だけにし島の人たちはどうか恨まないでください。
俺たちの犠牲だけで許されるなら俺たちの命で稼いだ猶予を使いどうか島の人たちを助けてあげてください。
(確かに。あいつがいなかった時間は苦しくて辛かったけどみんながいたから乗り越えられた。議員たちの話を聞いて確かに怒りの感情がこみ上げて来たけどそれでも...それでも俺は....」
.......
ちゃぷん!
「全く釣れないな」
釣り竿をかざしながらため息をつく理人
理人 理緒 隆太の三人は食糧調達のために魚を釣りに港まで来ていた。
「つれないな~」
理緒はむす!!とした顔で釣り竿をかざしている。
「しかたねぇなー場所変えようぜ」
「他にもポイントがあるんだ案内するぜ」
隆太はそういうと立ち上がり二人を次の釣りのポイントに案内する
食糧不足を少しでも解消するため彼らは魚を釣って何とかしようとしていたのである。
しかし、全く釣れず苦戦中である。
早朝の事である隆太が昼食に関して話し出したのである。
「兄ちゃんのシチューも好きだけどよやはりそれだけでは栄養バランスも偏るからよ」
隆太の言うことは間違いわない。
理人が学校に転校してきてからはほとんど昼食は野菜と果物と理人が作ったシチューである。
理人が来る前は、那智が食事を提供していたが彼女が亡くなってしまったため今現在は自給自足で飢えをしのいでいる状態である。
3人は場所を変えて再び釣り竿をがさす
「ち...まったく釣れないな...」
隆太は完全にふてくされて釣りに集中できないでいる
「...ぴくん!あ逃げられた」
理緒は隆太とは違い真面目に釣りをしているようだが餌ごと持っていかれているようだ。
「...........」
理人は完全に無表情で釣り竿をかざしている。たったいま餌を取り換えるようであるこれで本日10回目の餌の交換
「ダメだ釣れない」
「兄ちゃん眼が死んだ魚の目みたいになってるぜ」
「理人ッちいろいろ物知りでコンピューターには強いけどこういうことは苦手だよね」
「すまない....俺は力仕事とかこういうたぐいなものは本当に苦手なのだ」
頭を抱えて悩みだす理人
「なあ?兄ちゃん俺思うんだけどさとそれぞれ人間には得意不得意の分野があるんだ。兄ちゃんには兄ちゃんの役割がちゃんとあるんだから気にすることは無いと思うぞ」
..........
俺にとって守りたいものは.........
誰も恨むことなんてできないことは理解できている
俺の本音は....本心は.....
「若!!これは一大事ですぞ......彼らは人柱になるつもりです。一刻も早く止めなければ」
ずしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!!!!!!!
島全体が揺れている
「理人ッち!!!お願い!二人を止めて!!!!二人が犠牲になるんておかしいよ!!!」
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警備をしていた人たちはラピズの魔法で睡眠状態にしてばれない様に俺たちは宮殿の中を進んで行った。
そして一つのPCが置いてある部屋にたどり着いた。
「これでいいんだな?」
「うむ、これからシステムそのものにわらわたちのアニマと足りない量のアニマを保全するためにわらわたちの寿命そのものを消費して無理やり陣を展開させるのじゃ」
次回で5章は完結となります