アリバイつくります8
常磐さんとの件が終わったあと、亮が別の顧客と会うからと、違うカフェに一緒に行った。
その顧客は相良という男性だった。
スーツを着てスーツケースを持ち、サラリーマンだろう男性だった。
まあ、わりとイケメンな男性だった。
亮と何枚か写真を撮り、そのあと封筒を亮に渡した。
それだけ済ませると、相良という男性とはすぐ別れた。
「なんか、人の浮気の手伝いするのも寂しく感じるね。」
空音は、つい思った事を口にしてしまった。
「まあね。でも、それが僕の仕事だからね。そういう人が居ないと僕も困る。」
空音は、苦笑いした。
「アリバイ作るほど浮気したいなら、離婚しようかと思わないのかな?」
「さあね、でも離婚したくない理由があるんじゃない?奥さんには愛情はなくなったけど、子供は好きだから離婚したくないとか、浮気が、単に好きとか。別れられない理由が何かあるとか。人それぞれね。」
空音は、亮が冷静な大人の男性みたいな意見を言うので、本当は空音の知らない経験を重ねてきたんじゃないかと口には出さなかったが、空音はずっとそう思っていた。
帰りに二人で、サンドイッチを買って家に帰った。
家で空音は卵スープを作った。
スープを作っている間に亮はソファーで寝てしまっていた。
空音は亮を起こさないように、横に座った。
亮の寝顔を見て、なんて綺麗な顔だろうと改めて見つめていた。
すらっとした鼻、長い睫毛、綺麗な赤い唇。
あっ、左耳の後ろの髪の毛の生え際にほくろがあるんだ。
そんな観察をしながら空音は亮を眺めた。
二人で居るなら、何もしなくても幸せ。
寝ている亮の手をそっと握った。
そして、机の上にバレンタインのチョコを置いて、空音はベッドで寝た。
ハッピーバレンタイン。
お休み亮。