アリバイつくります 6
「空音が嫌でなければ、僕の仕事を手伝ってくれないか?」
そう言って来たのは2月に入って間もない頃。
「女性の人でアリバイ作りをお願いしたいって言うひとが居るんだ。」
そう言われて、とまどった。
あまり気は進まなかった。
でも、亮が困ってるなら手伝ってもいいかと思った。
「やってもいいけど・・・・。バイト代はもらえないし。うちの病院は副業禁止だから。」
「うーん。わかった。どうにかするよ。空音の休みの日にその人と会ってもらってもいいかな?その時にその人と打ち合わせをして、そして空音の仕事内容を伝えるよ。」
「わかった。」
2月14日、水曜日だったが、空音は仕事が休みだった。
空音と亮は品川のカフェに来ていた。
コーヒーを飲んでいると30代後半の女性が来た。
タイトスカートを履き、ブランド物のバックをもったお金持ちそうな美人な女性だった。
「こんにちは。常磐と申します。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
お互い座って挨拶をかわした。
亮が話はじめる。
「こちら、峰山空音さん。まず、アリバイは峰山さんと一緒にいることになりますので、携帯電話番号、メールアドレスの交換をしてもらってもいいですか?」
そう言われ、常磐さんという女性とお互いの番号、アドレスを交換した。
「峰山さんが、電話を峰山にかけたら峰山が電話に出るか都合が悪くても10分以内に折り返し電話します。ただ、峰山は仕事があるときにはそれができません。勤務表を毎月常磐様にお知らせしますので、ご注意お願いします。」
「わかりました。」
「次に、アリバイを作る際にはどこかのカフェで、飲まなくてもいいので毎回常磐様と峰山の分の飲み物を頼んで下さい。しかも毎回同じ物です。常磐様は何をよくのみますか?」
「カフェラテかな。」
「わかりました。峰山さんは?」
「ホットコーヒーです。」
「わかりました。では常磐さんは毎回カフェラテとホットコーヒーを頼んだレシートを手に入れ、捨てずにとっといて下さい。」
「わかりました。」
「一緒にいる事を怪しまれた場合、もう1手出すためにカフェであなたにごちそうになったと言いますので、レシートを旦那様に見せて下さい。時間に余裕があるならば、メールでそのレシートを峰山に画像送信していただければ、どこのカフェに何時ごろ居たかまでアリバイを話す事ができるので、確実性があがります。」