アリバイつくります 4
クリスマスイブ以来、一度だけやはり酔った亮に抱かれる事はあったが、普段の亮はやっぱり友達と居るようなさっぱりした態度の事の方が多かった。
年末年始も、空音は独り身なので、シフトが目一杯入れられていた。
ただ、亮も年末年始なのに、仕事が忙しいというので、しばらくはデートは買い物位だねなんて話を亮としていた。
夜中から明け方に亮には電話がかかってくることがあり、アパートの廊下で亮が話している。
寝ぼけながらもその会話がたまに空音の耳に入って来ることがあった。
「・・・ええ、今日は一緒にいました。ずっと・・・・、ええ。いつも鈴木さんにお世話になってます。はい・・・。ええ、気になさらず。はい・・・では。」
そういい電話を切ったようだが、そのあとに大きなため息が聞こえた。
そして、部屋に戻ってきた亮はまたソファーで寝たようだ。
別の日にも度々かかってくることがあり、同じような対応だが、水上・野呂瀬・山下・川上など別の名字が出てきては、「一緒にいました。」と受け答えをしているようだった。
さすがに何度もその光景を見るようになったので、空音も亮にどんな仕事をしているのかと聞いてみることにした。
「アリバイ業者をしてるんだ。」
「アリバイ?業者?」
?が空音の頭の中をかけめぐった。
「業者っていうのもおかしいかな。一人で地道にやってるだけだから。闇営業なんだけどね。」
空音には、まだわからず、
「えっ?どんな仕事か全然わかんないんだけど・・・。」
と聞き返した。
「世の中、不倫をしたり、浮気をしたりしたい人は沢山いるからね。その人達が、アリバイが必要になったら、僕に電話してくるんだ。で、僕はそのクライアントと一緒にいましたよって答えたりするんだ。まあ、他にも色々偽物のアリバイ証拠を作ってクライアントが切り抜けれるように見せかけるんだ。」
「ふーん。面白いね。そんな事毎日亮はしていたんだね。」
「まあね、でも結構きついよ。アリバイ作るのもね。電話だけで納得してくれる人だけならいいけどね、もう一手必要な時のために、実際にクライアントと会った写真や会話を用意したりね。」
そうなんだ。と、空音はうなずいてみたが、いまいち実感がないので、もっと聞いてみたかったが、深く説明を聞くのも、亮に迷惑になるだろうかとそこでアリバイ業者の話題は終わりにした。