アリバイつくります24
子供を育てるのに、この部屋は狭すぎるから、引っ越す事になった。
その前に、亮と入籍して、峰山姓に変えたほうが、闇の社会から、追われないだろうと、颯人と話して決めた。
颯人は、亮のために亮のためにとよく言って、それを口実に空音のためになることをしてくれるようだった。
颯人は、峰山亮として、ビルの鳶職に就職した。
その頃から、毎日大学ノートに日記を書いているようだった。
空音のお腹がだんだん大きくなり、6ヶ月目。
12月だった。
大きなお腹で思うように動けなくなった空音を見て、颯人は、掃除や洗濯、できるときには食事を作ってくれた。
空音の颯人に対する態度が冷たくても、颯人は気にしないように接してきた。
「大変だろ。俺がしておくからそこで休んでろよ。」
「…ありがとう。」
「お腹の子供も愛情を与えないと、幸せになれないからな。叔父さんが、沢山愛情あげるからな。」
にこにこして嬉しそうに、空音のお腹を優しくなでる時もあった。
そして、何より、とても真面目だった。
空音はずっと話し方がぎこちない颯人に良い印象を持ってなかったが、毎日一緒に居ると意外に優しくて真面目な人なんだとわかってきた。
毎日書いている日記を、こっそり読んだが、亮に向け書いているのだが、朝あったことから、仕事の内容、空音の様子が細く書いてあり、こんなにも記憶している事と、まめに記録している事が、意外だった。
そして、読み取れる文章から、とても空音を良く書いている事と、お腹の子供が産まれてくるのが楽しみだと度々書かれていた。
空音は、お腹の子供の父親である亮を思い出していた。
亮は、実刑が決まり、服役している。
元気にしているだろうか。
どんな生活を送っているのだろうか。
亮に会いたい。
亮の優しい話し方が好きだ。
亮と一緒に幸せな時間を送っているはずなのに。
空音の気持ちは、いつも晴れない。




