アリバイつくります 23
警察に行き、事情聴取をされた。
空音は、必死に亮と颯人が入れ違っている事を話したが、聞き入れてはもらえなかった。
「空音さん、亮さんのアリバイは沢山あるんです。」
そう言って出した領収書や、病院の診療記録。
「アリバイを作る仕事っていうのをしていた事も、それ自体を取り締まっている訳ではないからまた別にしても、取引してた皆さん、鈴木亮さんとは一緒に居たと話すんです。 でも、颯人のアリバイはないんですよ。」
細かく記録していたアリバイ作りの仕事が、亮の行動記録になっていた。 颯人の記録はない。
何度話しても、堂々巡りになるばかりで、話は通じない。
「亮に会わさせてください!」
どうしても取り戻したい、亮を! 必死になればなるほど、警察官になだめられて、状況を押し戻されるだけだった。
警察署から出て、周りの目も気にせずに号泣しながら、家に帰った。
颯人が当たり前のように家にいる事が嫌だったし、颯人の事が信じられずに、一言も颯人と会話することなく、ベッドに横になり、涙を流した。
颯人は、ソファーに座ったままテレビを見ていたが、小さな音で、テレビの目の前に座っただけのように動かず、ずっと無言で夜まで座っていた。
暗闇が少し、ほんの少し明るくなってきた。 時計を見ると4時を少し回っていた。
颯人はまだ、ソファーに座っていた。
空音は起き上がりトイレに行った。 戻ってまた布団に入ったが、寝れずに何度も寝返りをした。
薄暗い部屋に空音の動く音が静かに聞こえる。
それをわかっていた颯人は、テレビに視線を向けたまま閉ざしていた口を開いた。
「空音が、俺のこと受け入れられないのかなっていうのはわかるよ。でも、亮はしばらく帰って来られない。俺が亮の変わりにお前を守るから、お腹の子供も亮が帰ってくるまで面倒みるから、亮の変わりに少しでもなれるように。」
「…。」
「だから、ここで力にならさせてくれ。」




