アリバイつくります 22
病院に一泊し、自宅に戻った。
仕事はしばらく休ませてもらうことにした。
颯人は、口数が少ないが、空音の家に居て、ご飯を作ってくれたり、家事をしてくれていた。
空音は無気力のまま、ソファーに寄りかかるように座り、今までの事を思い返していた。
同じ顔をした彼が家の中に居るのは、寂しくて悲しい思いが蘇るばかりで、もどかしさと怒りがだんだんこみ上げて来るのだ。
昼間多く会っていたのは亮だった。
いつも優しいのは亮だった。
夜、何度か酔って空音を抱いたのは、颯人だった。
颯人に会ったのは夜が多く、それ以外でほとんど会うことは今までなかった。
亮に違和感を抱いていたのに気が付かなかったのは何故だろうか。
見た目が余りにも似ていすぎていたからか。
ホクロが颯人にあって、亮には無いことに気が付きながら、真実に気が付きたくない気持ちがあったのだろうか。
毎日空音と居たのに、亮は空音を抱かなかった。
それを、知りたくなかった。いや、亮は純粋に空音を大切にしてくれていたのかもしれないと今は思う。
亮が好きな気持ちから、空音を抱いているのは亮だと思い込んで亮に抱かれる欲望を颯人で満たしている自分の想いに知って知らぬふりをしていたのか。
しかし、亮は、それまで空音を抱かなかったのに、茨城の旅行で空音を抱いたのは、確かに亮だった。
颯人の抱き方とは違う事気がついていた。
優しい…、何か遠慮しているような、でも欲してるような、空音も恥ずかしくなるような、淡い恋を感じさせる抱き方だった。
今までの出来事を振り返っても、空音のお腹の子供は、亮の子供だった。
亮のくれた愛の印を私は大切にしていく。
颯人が、今ここにいる事、どうしても納得がいかなかった。
警察に、事情聴取で呼ばるている明日、はっきりと、颯人と亮が間違えて捕まっている事を話そう。
颯人が逃げないように、警察に行くことは、黙っていよう。




