アリバイつくります 21
全身の気怠さがあり、身体が重く感じる中、ゆっくり目が覚めていくのがわかる。
見慣れない感じだが、病院だろうとわかった。
聞き取れないくらいの小さなため息とともに、隣に、亮が居るのが見えた。
いや、颯人だろうか…。
少し猫背になって、椅子に座ってスマホを見ている。
空音は点滴をされ、ベッドに寝ていた。
首を、そっちに向けると、かすかな音に気がついたのか、彼は顔を上げてこちらを見た。
「目が覚めたか?大丈夫か?」
瞬きをし、無言で彼を見つめた。
話し方で彼が亮ではないとわかり、ショックで気分の悪さがさらに増した。
一言ぽつんと発した。
「……亮は?」
亮の名前を口にした時、もう会えないかもしれないと瞬間的に不安が押し寄せ、亮を好きでたまらない、こんなにも会いたくて大切な人だったのかと、どうにもならない亮への大きなき持ちが湧き出してきた。
少し震え、唇を噛み締めると目から涙が溢れて頬を伝って枕に落ちた。
それを見た颯人は、少し表情を曇らせた。
沈黙が二人の間に居座る。
空音に、思いもよらない事が起きていて、心の整理ができていないことは、颯人にもわかっていた。
10分くらい、空音が静かに涙を流しているのを、颯人は床を見つめたまま待っていた。
その後、颯人は、床を見つめたまま小さく落ち着いた話し方で、空音に話しかけた。
「…低栄養、脱水…。お前看護師だろ。自分の管理もできねぇのに…。」
「……。」
空音は、わかっていたが、そうなったことについて何も話す気にならなかった。
「…その、お腹の子供は亮の子供なんだろ。産むのか知らねぇけど、身体大切にしろよ。」
「…うん…。」




