アリバイつくります10
3月に入ると亮から常磐さんと連絡を取って、また写真を取ってほしいと言われた。
空音は常磐さんに電話した。
「もしもし、峰山ですが、そろそろまた写真をとる為にお会いしませんか?」
そう電話すると、常磐さんは快く返事をしてくれた、しかも一緒に食事をして何気なく話をしないかと言われた。
3月2日。
空音は休みだったので、常磐さんと新宿ルミネのレストランで待ち合わせをしていた。
「峰山さん!お待たせ。お久しぶり。」
「お久しぶりです。」
ランチのパスタコースを注文して、話を始めた。
「私、専業主婦で子供も居ないし、結構自由なの。だから、空音ちゃんと普通にランチしたくて、誘ってゴメンね。」
「いえいえ。」
「常磐さんは、旦那さん以外に好きな人がいるんですか?」
「特にいないわよ。」
無言だが、とても意外そうな顔を空音がした。
「なのに、なぜ浮気アリバイを頼んでるのか?って思った?」
「その通りです。」
空音の疑問に常磐さんは、少し笑顔を浮かべながら答えた。
「私旦那の事は好きなんだけどね、旦那EDなんだ。」
「EDって・・・。あの、いわゆる・・・」
「そうそう、インポテンツでね。なのに、私は性欲が強くて、自分の性欲を満たすための相手としてるだけだから。だから、旦那を好きな事はかわりないのよ。」
「そうなんですか。」
浮気と言っても色々理由があるんだなと空音は改めて思った。
「浮気相手の事は好きになっちゃったりしないんですか?」
「うーん。体はその人に調教されて、その人じゃないと満足出来なくなってくるんだけどね。でもそういう人は、調教するのが好きだから、何人も調教相手がいるのよ。だから、お互い割りきった体の付き合いをしているだけ。」
調教かー。
どんな付き合い?
空音には想像がつかない世界だ。
「空音ちゃんはさ、亮くんと恋人なんでしょ?」
「はい。」
「いいな〜。若いって。恋愛も初々しくてね。あと、亮くんイケメンじゃない。うらやましいな。」
「そんな事ないですよ。」
恥ずかしそうに、空音は答えた。
「そういえば、この前偶然亮くん見かけたの。蒲田の病院で。」
「蒲田の病院?」
「あら、聞いてない?整形外科だから、どこか痛いのかしら?」
「いえ、聞いてません。」
不可解な顔を空音がするので、常磐さんは心配そうな顔をした。
「空音ちゃんと亮くんってどうやって知り合ったの?」
「えっと・・、本屋でぶつかって、それからよく会うようになって・・・。」
「本屋で・・・。そう・・・。亮くんと共通な趣味とかは?」
「趣味・・・。特に・・、ないです。」
二人で無言になってしまった・・・・。
微妙な時間が経過する。
確かに、亮の事を深く聞くことは無かったが、知らない事が多かった。
出身はどこなのか、家族はいるのか、空音と同居する前はどこに住んでいたのか。




