第83話【旅立ちの珍道中編その5】
セリエにとって不幸中の幸いと呼べる、通行する観光客や協会のお偉いさん達には当たらなかった――――だが、見た目だけなら幼い少女であるアイナが、協会でも一目置かれている存在であり、一流魔法使いのセリエをか弱き拳のみで、数Mは離れている支柱に叩きつけたのは、図らずしも目立つ原因となった。
辺りからは警戒しているのか、一行を中心に人々は一定の距離を保ちながら、様々な話し声が聞こえてくる。
『おいおい……今の見たかよ!?《《あのセリエさん》》が女子相手に殴り飛ばされたぞ!!』
『バカいえ、あれはリメイシャンさん所の一番弟子で元部隊長の娘だろ。それに無機質なマスクを着けた方はノーメンさんじゃないか?ほら……《《例の事件》》の――――』
『と言うことは、横のやたらガタイの良い兄ちゃんは誰だ?見るからに強そうで噛みつかれそうだ』
『あんな凄まじい面子が揃っているんだ……。きっと腕っぷしでスカウトされた魔法使いさ。実力が解らない分、関わらないようにしよう』
噂が一人歩きし事実と異なる話や、錚々たる面子のため、警戒し誰一人として近付く者はいないと思われた――――だが、群衆からゆっくりだが四人に近付く老年の男と杖を手に持つ老婆が現れたのだ。
『アイナちゃん――――皆、怖がるからその辺にしときなさいな』
怒り心頭のアイナは老婆の顔を、鬼の形相で見ると、こう言った。
『リメイシャン師匠……居らしたのね。解ったわ。今は、晦冥の奈落が先よね。あんた達!?先に行きなさい!!』
アイナは、支柱の足下で寝ているセリエをノーメンに担いでもらい、先に進むように促し、群衆は道を開け平然と男三人は、老年の男とリメイシャンの後を追った。
アイナは足を止め小さな体を存分に使い、周囲にこう告げた。
『チビッ子とか散々悪口言った奴、帰って来たら覚えてなさいね?』笑顔でそう告げると握り拳の親指だけ立てながら地面に向け、【幼子の悪戯】を一部の人間に使用した。
『何がしたかったんだ?』と周りの有象無象は、アイナのした行動の意味が分からず、数秒の沈黙後、途端に気づかされたのは先程まで陰口を叩いてた大人達が、下半身辺りを必死に握る姿だった。
『何故だか知らないがチャックが下がるんだっ!!』と同じ事を呟く男達が大勢いるため、群衆は軽い混乱状態に陥っており、中にはズボンまで脱げ出し、下着姿になる者や、変態扱いされ周囲から逃げられる者が多発した。
冷めた目でそれを見るアイナは捨て台詞を吐いた。
『女性を舐めるなよ三下共がっ!!』と吠えたアイナは、お転婆の様に舌を出しながら先へ進んだ。




