第80話【旅立ちの珍道中編その2】
その事実を知っていたのか、ノーメン達は無言で頷くと、少しだけ笑みが溢れるセリエと、それを大口を開けながら聞いたバルクスは再び驚愕していた。
『噂には聞いていましたが、天災級のlevel-Ⅳを倒さないと行けないんですか?しかも――――《《二体》》も……』
『あれ、言わなかったかしら?私達は今、とんでもない事に挑もうとしているのよ?だから、《《覚悟しなさい》》って言ったじゃない?』
『level-Ⅳ何て、《《俺達でも》》――――いや、ノーメンの旦那でもこの前level-Ⅲでさえほぼ互角だったんだぜ?』
セリエがそう言いながらバルクスに微笑みかけると、余計に青白くなる顔を見て、腹を抱えて笑っていた。
『そんなことはいいから先に行くわよ』とアイナが言って先に進む三人に対し、少しだけ覚悟が揺らいだバルクスだったが、頬を両手で叩き気合いを入れ直すと、石に躓きそうになりながら追いかけた。
【屋敷前】
アイナ一行を送ったミフィレンと弟子達は、その姿が見えなくなるまで立ち尽くし、四人の背中をしっかりと目に焼き付けていた。
『本当に行ってしまいましたね……』
『しばらくは俺達がこの子達の面倒を見ないとな……』
男達がそう言ったのも束の間、ミフィレンはいつもニッシャにやってもらっていた、髪結いを自分で行うとこう言った。
『ミフィレンが朝食を作るので、お弟子さん達は朝の稽古をしてください!!練習は、道場に貼っているので各自それを見て下さい!!』
自分の背丈を優に越え、百人は入る屈強な弟子達に向かってそう叫んだ。
男達は相思相愛の如く同じ感情が芽生えていた。そう――――アイナさんそっくり……と。
小さな体に圧倒された男達は急いで道場へと急ぎ、平常の稽古同様に鍛練と汗をかきに行った。
『後は、ラッシーのミルクとオムツ交換に朝食作りと各所の掃除ね!!皆ヨロシクね!!』
ミフィレンは腰に手を当て、そう言って地面に座る4匹を眺め、それに呼応する様に早朝から響く様々な生き物達の鳴き声と、ニッシャから譲り受け首元で輝く1輪花のネックレスは、確かにミフィレンの勇気になっていた。




